プロモーターに出入りするようになって、色々なバイトを体験しました。駅前でたった一人でビラ配りをしたり、夜中に一人で「捨て看」(ポスターのこと)を貼って回ったりもしました。なぜ夜中に貼るのかはいずれ書きます。
いくつかやったコンサートのバイトで忘れられないのはGirl(ガール)というバンドの公演です。Girlというのは今で言うビジュアル系というか、アイドル系のハードロックバンドで、ミュージックライフやプレイヤーによくアルバムの広告が出ていたのを目にはしましたが、特に興味はありませんでした。
このときのバイトがどうして忘れられないかというと、
とってもしんどかったからであります。
その前にコンサートのバイトというのは何をするのか、簡単にご説明します。
まず朝一番から午前中はトラックから機材をすべて降ろし、セッティングの手伝いをします。
そうこうしているうちにお昼になりますのでお弁当を食べ、2時くらいからリハーサルが始まります。その間はバイトの出番はないのでリハーサルを見物したり、ロビーのイスで昼寝をしたりします。
4時くらいになるとお客さんに配るチラシ(他のライブの告知やレコードの広告)を準備し、開場するとチケットのもぎりと場内の誘導をやります。
んでもって開演になりますと場内警備をやり、終演後ただちに撤収、となって一日が終わります。
ちなみにこういったイベントのバイトは日当制で、一日いくら、という賃金体系です。基本的にヒマな現場も忙しい現場も同じです。
まず何が大変だったかというと、搬入する機材の量です。
アイドル系ですから照明機材が多い。他の現場の倍ぐらいライトを運びました。それからケーブルの数も当然多くなりますが、照明用の電源ケーブルというのは直径数センチあるぶっといもので、10メートル以上の長さがありますから重さもかなりあります。「たかがコードだろ」とたかをくくっているとビックリします。「よーし」と気合を入れなければ運べません。
また、ステージの両脇に巨大なスピーカーが置いてあるのをご覧になったことがあると思いますが、こういうPAスピーカーはかなりの電力でもって駆動しますから、エンクロージャーもスピーカーも頑丈なのでやっぱり重い。当然みんな「せーの」で運びますが、何段も積み上げるので重いだけでなくコワイ。
しかしもっと恐ろしいのは観客でした。
開場する段になってバイト全員ロビーに集合したとき、開場を待つ観客の列を見てビックリ。
全員が中・高生とかの若い女の子で、オトコが一人もいません。
「オンナばっかりや、ちょろいもんだぜ」と思ったのは世の中を甘く見ていたのでした。数時間後、我々はそれを思い知らされることになります。
今のライブのお客さんはその場で立ったりはしますが、あまり移動はしませんよね。この頃はほっとくとみんなステージの前に殺到して大変なことになるので、場内警備というのは前に来る観客を力ずくででも止めるのが役目なのです。
この時の会場は名古屋市中心部の鶴舞公園にある名古屋市公会堂でしたが、最もステージに近い何列かを隔離する目的で、ステージに通じる通路に鉄の柵を置きました。非常時の避難の妨げになりますから柵を固定するわけにいきませんので、我々バイトが柵の前で陣取る格好になります。
こうして4つの通路すべてに柵を置き、それぞれにバイトが待機をしました。(続く)