小さい頃から音楽にあまり興味はありませんでした。学校の音楽の成績も最悪。4分音符と8分音符の違いすらわからない。音楽の授業は苦痛でした。
中学2年になったとき、クラスメートに洋楽、特にビートルズの好きなやつが何人もいて、休み時間になるとみんなでエレキギターのカタログを見ながらわいわいやっている。話の輪に入りたくても入り込めない。
今では信じられない話ですが、真面目な両親のもとで育った私は、ロックなど不良の音楽だと思っていたのです。60年代初期の感覚ですね。しかし友達と話が合わないことがだんだん苦痛になってきて、少しずつですが洋楽を聴き始めました。当時の日本の音楽は歌謡曲やフォークが強かったので、ロックといえば洋楽でした。
洋楽を聞くようになる下地としてもう一つ大きかったのは、実は校内放送でした。
私の通った中学は、私たちが在籍する何年か前に荒れていた時期があり、今からは信じられないほど規則にうるさい学校でした。
まず男子は丸刈り。女子も毛先が肩と肩を結んだ線より長くてはダメ。靴下のラインは何本まで、ワンポイント刺繍は不可。そして片道4キロ以上を徒歩通学。自転車は不可。全校集会の折りには服装検査があり、生徒指導の先生は当然の如く融通が利かない。
実に厳しかった。何でもすぐ怒られました。北朝鮮のニュースを見てると、もちろんアレほど極端ではないものの「中学のときあんな感じだったよなー」と思い出すほど。
ところが、です。そんな中学ならば、校内放送は当然クラシック…と思いきや。
給食の時間や放課後になるとハードロックが流れてくる のです。
ビートルズやカーペンターズといったエバーグリーンなものはもちろん、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリン、グランド・ファンクなどといったレコードを放送部が次から次へとかけまくる。
考えてみてください。給食で「手を合わせてください。いただきまーす。」とやっている教室のスピーカーから
「ハイウェイ・スター」が流れてくるんですよ。
イアン・ギランが
のぉばりごな・てくぁま・かー (NOBODY GONNA TAKE MY CAR)
とシャウトしているのを聞きながら、落ち着いて給食なんか食べてられませんよ。
当然のことながら「こんな規則のうるさい学校で、どうしてこんな音楽を流すんだ?」と思いますわね。
その理由は、
英語で歌ってるから歌詞の意味がわからないだろう
というものでした。文法中心とはいえ英語の授業がある中学生をバカにしているとしか思えない。
まあ、その理由を聞いてウチの中学らしいなとは思いましたが。歌詞の意味さえわからなきゃ何でもOKって発想が。
時が経ち、自分自身の母校であるこの学校のPTA会長を務めることになるとは思いもよりませんでした。当時は大嫌いな学校でしたが、音楽に目覚めるきっかけを与えてくれたことに関しては本当に感謝しています。