ミイちゃん3
おっさんは大学に行くことになった。
自宅からは電車を乗り継ぎ行けば、2時間くらいで通えない大学ではなかったが、部活動を続けていたので、下宿した。
大学に入り下宿して、何が一番心配だったかというと、「ミイちゃん」のことだった。
ずっと一緒に暮らしていたので、離れるのがつらかったが、「ミイちゃん」は我が家がお気に入りみたいだったし、連れては行けないので、おっさんが自宅に帰ったときだけ、会えることになった。
( このころは携帯もパソコンも無かったから、本当に帰ったときだけ、様子がわかる状態だった。)
おっさんが大学2年の秋。
「ミイちゃん」は生まれて8年目くらいだ。
インターネットで調べたら、猫の年齢では、50歳くらい。体の衰えが目立ち、寝てばかり。体が硬く、歯が抜け始めると書いてあった。また、太り始めると書いてあった。
「ミイちゃん」はメスだったので、我が家に来て半年くらい経ったときに、避妊の手術をした。午後に病院に連れて行き、手術。そのまま一晩を病院で過ごし、次の日の午後に連れに行った。おっさんを見つけた「ミイちゃん」は籠から出されてダッコすると爪をたてて、おっさんにギュっとつかまった。
「頑張ったね。いい子だね」
と褒めてあげ、自宅に帰った。
それでか、「ミイちゃん」はずっと、太ることは無かったし、猫のサカリの季節も全く関係なく、普段通りに過ごしていた。
おっさんはスポーツの部活だったが、もうすぐ試合が始まるという時に、下宿に実家の母から電話がきた。
母は涙声だった。
「ミイちゃん、死んじゃった」
ずっと頭にあった心配事だったことが、現実に起きた。
受話器を持ちながら、溢れる涙が止められず泣いた。母も一緒に泣いた。
現実を受け止めなくっちゃあと、死因を聞いたら、なんか悪いものでも食べて死んだそうで、見つけたときはもう死んでいたそう。猫は死ぬ姿を隠すといわれてるけど、階段の下にいたということっだった。
そして、母が「ミイちゃん」を裏庭に埋めて、お墓を作ってくれた。
おっさんは、下宿にいることは出来ず、試合が近かったので、キャプテンに家に帰ると伝えて、
すぐに、電車に乗って家に帰ったのだ。
電車の中でも、涙が止まらず、下を見たまま家路を急いだ。
母には帰ると言わなかったので、ビックリされたが、母の作ってくれたお墓に大好きだったニボシを持ってお供えしてあげた。
「ありがとう」と母に言った。
きっと、ずっと何処かで見てくれているんだ。と思っている。
大好きだったおじちゃん、おばあちゃんと一緒に、「ミイちゃん」もいつも、おっさんを守ってくれてると思っている。