ネパール、その1
もう何年か前になるけど、「海外旅行は楽しい」とか「もっと、いろいろな国に行ってみたい」と思ったのが、ネパール旅行をしてからだった。
おっさんにしてみれば、バリ島に次ぐ2度目の海外が、ネパールだった。
テレビなんかで、山岳部のムスタンが紹介されたり、ヒマラヤ山脈の塩の道など、おっさんの興味を引くものが多く、行ってみたいと思っていた時に、バリ島に一緒に行った兄から
「どっかいくか?」
と誘われ、
「ネパールに行きたい」
と即決した。
兄は2度目のネパールだった。兄は大阪?から船で中国に渡り、中国を旅してチベットに行き、そのまま陸路でネパールに行ったバックパッカーな旅人だった。
旅は1月の終わりにした。航空チケットが学生の卒業旅行で値上がりする前に決めて、格安航空チケットのみを買っていくことにした。
旅行当日、
日本を出国し、飛行機はタイの国際空港ドン・ムアン空港に着いた。2度目の海外だったので緊張していたのか、またも調子が良くない。今回は飛行中、機内の気圧が変わるけど、到着したのに上手く耳の中の空気が抜けずに耳の中がキーンと痛くなってしまった。気圧の変化に体がビックリしてしまったのだ。
おっさん的には、またかとショックだった。
でも、機内からおり入管に行かないといけないので、連絡通路に出て、みんなについていった。
その時に、太陽の日差しが目に入った。眩しい。
と思ったとたんに、「ハックショーン」と大きなくしゃみが出た。
「あれ?」
今まで、苦しんでいた耳の空気がちょっと痛かったが、スッと抜けたのだ。
はぁー、良かった。やっと旅のスタートの気分になった。
タイ航空のチケットを買ったので、行きは乗り継ぎにタイに1泊することになっていた。 (帰りは乗り継ぎのみ)
入国審査を受け、ハンコを押してもらって、いざ、タイに。
自動ドアを抜け1歩タイに入ったとたんに、モワァーとした湿気を含んだ空気に包まれた。
これが、タイなんだ。
と体感したら、ジワーと汗が出てきた。
1泊の宿は兄のある意味オススメのバンコク、チャイナタウンにあるホテルに泊まることにした。
空港横の幹線道路からバスに乗り、バンコク中央駅ファランポーン駅でバスを降りた。当時はまだ、そこら中で高速道路の建設ラッシュで、日本の大手ゼネコンの看板があちらこちらにあった。
駅からは歩いて、チャイナタウンの7月22日ロータリーに来た。そこのロータリーに面したホテル「ジュライ」に泊まることにした。
ホテル「ジュライ」はバックパッカーには知れ渡った、知る人ぞ知る、日本のバックパッカーが情報交換に集まるホテルでもあったが、長期滞在者が「沈」するホテルでもあって、ドラッグ、金銭トラブルがあったりして、
大使館から、
「チャイナタウン周辺のホテルにはなるべく泊まらないように。何かトラブルがあっても責任持てません」
と言われていた、ホテルの1つであった。
ホテル「ジュライ」についた。
入り口のベンチに日本人らしき旅人が3人ほど座ってたが、みんなボーと座ってるだけと言う感じだった。
目があったので、軽く会釈した。
「どちらから」
と1人に言われたので、
「こんにちは。明日にはネパールに行くので、今日1泊だけです。」
といって、そそくさと案内された部屋に入った。
バリ島では見たことない感じの長期滞在者かあ、
初めて見た。
安宿に泊まるときの注意として、兄は3つのことを言った。
1、鍵はちゃんと閉まるか。入り口はもちろん、ビルの上階でも外からの侵入が考えられるから、鍵チェック。格子があればベスト。
2、当時、警察とホテルの従業員が手をくんで、薬などをベッドなどに隠しておいて、夜なんかにいきなり部屋に入ってきて、薬を見つけ「何だこれは」、とお客からお金を巻き上げる事件が起きていたので、部屋に入ったら、ゴミ箱、机の引き出し、ベッドなど、全部調べて、何か出てきたら、トイレに流すか、外に捨てること。
3、外出するときは、荷物はもちろん鍵をする。大きいバックなどは、持参したチェーンでベッドや机に固定する。
だった。日本のツアーなどなら問題はないが、バックパッカーや長期滞在者が集まる激安ホテルなどに泊まるときは十分に注意したい事柄だった。
気を抜くと、ここで旅が終わるかもと、兄からは言われていた。
ひとまずシャワーを浴び、夜、夕飯を食べに街に出た。
屋台で麺類を食べ、明日に備え早く寝ることにした。
暑苦しいのでエアコンを全開で寝たが、ぜんぜん涼しくならなかった。
朝方、外が涼しくなる頃、エアコンがガンガンにきいて、寒くて目が覚めた。まだ、6時くらいか。
今日は、早めに空港に行かなくてはいけない。
でも、腹ごしらえと、ホテルをチェックアウトして、近くの大衆食堂に入った。
大皿にいくつかのおかずが山になっていて、
「これと、これ。」
と欲しいおかずを指差してご飯の上に盛ってもらった。
庶民の味は、美味しい。
2人とも山盛りのご飯を食べ、満足で駅のほうへ歩いて行った。
ファランポーン中央駅の近くで、トゥクトゥクに乗り、朝のラッシュの幹線道路を空港に向かって行く。
道路は溢れるほどの車、バイク、トゥクトゥクだ。みんな、競争しているかのように見える。
活気あるアジアを感じる瞬間だ。
ドン・ムアン空港に着いて、トゥクトゥクのドライバーと何故か写真を撮ってしまった。
荷物を持って、「さあ、行くぞ」とタイを飛び立ち、ネパールに向かうのでした。
つづく。