s-神 夏川草介/著「神様のカルテ」を読み終えた。第143回直木賞を受賞しました。内容は、
 信州松本、本庄病院で内科医勤務5年目(新婚)を迎える栗原一止(いちと)医師の物語です。白い巨塔から離れ、地域医療、それも24時間365日対応を掲げる病床数400床を数える本庄病院の1日は、都内のERに勝るとも劣らない忙しさと緊急事態に満ち溢れています。
 当直時には、内科医の名札を救急医に差し替えて仕事に臨むその姿勢「私は内科医だと念じてみたところで、骨折が肺炎に変わるわけではない。」という病院です。
 さてそんな一止医師にも帰る家があり、かわいい細君(写真家)がいます。しかし彼らの愛の巣である築20年、トイレ、風呂、キッチン共用の幽霊屋敷「御嶽荘」には、「ようこそ社会の底辺へ」と呼ばれるような奇妙奇天烈な住人たちが顔を覗かせるのです。洋酒とパイプを愛する年齢不詳の絵描き「男爵」、大学院で?年間ニーチェ研究に勤しむ「学士殿」との友情は、古き良きめぞん一刻のようで、話をいっそう盛り上げてくれます。まさに泣きどころをおさえたこの配役によって、死と向き合う医療の現場とはまたひとあじ違った心温かな場面に、私たちは彼らと一緒に立ち会うことができます。
 「神様のカルテ」が心を打つのは、この社会で懸命に生きている人々の、そしてまた病をもった人々の孤独を、人の輪が、人間の繋がりががっちりと支えていけるんだと力強く示してくれていることです。そういう作品だから20万人をも超える人々に、ただ読まれたというよりも愛されていると思います。

高田郁/著 「銀二貫」を読み終えた。 内容は、
 仇討ちで父を亡くし、身寄りのなくなった10才の少年が、寒天問屋で奉公しながら暮らす日々を描きます。目の前で仇討ちを目撃した、寒天問屋の和助は、商人らしく「銀二貫」で仇討ちを買い取るという。大事な大金をこんなことに使ったと番頭の善次郎は不満で、松吉に辛くあたる。大火など不幸な出来事が何度もあり、人情と恋と、上方商人の心意気。時代小説によくある展開です。真帆と松吉のやきもきしてじれったい淡い恋。 銀二貫をためるのに年月がかかっても、それだけの価値のあるものだったと、実に22年。やっとつかんだ幸せに涙・・物に溢れた時代に生活していると、今では当たり前になっているどんな物も、初めに考え出した人の苦労があるのだと、改めて思いました。羊羹ひとつ、寒天ひとつ。寒天作って食べたくなりました。