ウイグルの民間歌謡と音楽
新疆ウイグル自治地区は、中国の北西部に位置し、高原地帯とゴビ砂漠の大変厳しい自然環境のために人口過疎地帯となっている。
この地域は古代シルクロードの中心地とも言われ、中国に入る玄関口である。古代ウイグル人は、シャーマニズムを信仰し、佛教やマニ教も盛んであったようだ。
10世紀からはイスラム教が浸透して、この地にイスラーム教に基づく文化が築き上げられたのである。
この新疆ウイグル自治区の中央付近にあるタリム盆地のゴビ砂漠の北辺を回る北道と、南辺を通る南道とがあり、この交通路によって古代の中国と西方の文明圏との間の貿易、文化の交流が行われていた訳である。漢、唐、とくに唐代には新疆の舞踊や音楽が中原に流入し、中原諸民族にも影響を与えたのだ。
ウイグル族の芸能は、古代北方草原地帯の文化をもとに、中原文化やペルシャ・アラブ文化、さらにはインド文化の影響を受けて形成されたとも言われている。
特に面白いのが民間歌曲(Haliq nahsha)は、いわゆる民謡を意味し、各オアシスによりその音楽様式に固有の特徴がみられるのである。このウイグルの民間歌曲の場合、音楽の専門知識がないウイグル人であっても、聴けばどの地域の民間歌曲なのかがおおよそ分かるとされている。これは、日本の民謡にも言えることだが、その土地ならではの言葉、発音の違いから推測ができるのであろう。いわゆる方言である。そしてその土地を表すシンボル的なものや風習を歌えば、自然と思い浮かび上がって来るのである。そしてこの民間歌曲は「叙情性民歌」と「歌舞性民歌」に大別される。叙情性民歌は、歌い手の感情を吐露するものであり、歌舞性民歌とは感情表現以外に踊りを加えてリズムカルに歌ったものである。
なかでも「十二ムカーム」と呼ばれる古典音楽体系は非常に文化的価値の高いものとして知られているのである。
そもそもムカーム(muhammad)は、ウイグルの叙情的組曲であり、伝統音楽の中のひとつである。
この語はアラビア語のマカーム(madam)に由来されると言われている。現代ウイグル語だは、「整えられた音楽の集大成」を指す用語のようである。主にウイグル自治区の南部、主にカシュガルやホータンなどの地域に伝承されているのである。最近ではYouTubeを使い、色々な情報は簡単に手に入る。この十二ムカームも容易に観ることができるのである。初めて聴くそして初めての映像に、不思議と違和感を感じることはなく、なんだ沖縄民謡や東北の民謡を聴いているような、なんだか不思議な感覚になったのである。弦楽器と打楽器、それに踊り手が加わればメロディーこそ違いわあるが、さほど日本の民謡と変わりがないと感じるのである。
楽譜を見ることなく二十四時間、十二のムカームを歌い続けることのできるトルディ・アホンと言われるムカームの師匠の演奏を保存する動きも開始され、近い将来本物の十二ムカームを聴くことが日本でできるようになるかもしれないのである。