広島県の転出超過人数が多い(外国人の転入を含むと転入超過になりますが…)ことについての議論が盛んになっています。

 

よく言われていそうな「広島(市)は福岡、大阪に比べてここが、あそこが足りない」というのは、僕は関係ないと思います。

 

「広島県」は言うまでもなく、「広島市」だけでなく、その周辺の海田町、廿日市市等を含めたエリアを指しているだけでなく、尾三地区や福山エリア、芸北、備北地区など多くの地域を含みます。

 

「広島市は福岡や大阪よりも田舎だから人口が流出する」とお考えの人は多いと思いますが、僕は逆だと思います。

 

広島駅前にビッグフロントとエキシティという極めて高いタワマンがそびえ立ち、来年には25階建て広島駅ビルが開業します。紙屋町や八丁堀は政令によって都市再生緊急整備地域に指定されており、今後ビルの建て替え・高層化が進む見込みです。

 

これが逆に、転出超過を招いているのではないか、と思います。

 

…僕は自分が、例え金持ちであっても、広島駅前や紙屋町のような喧騒の激しい地区に住みたいとは思いません。もちろん仕事やショッピングは楽しめますが、家で食事して寝る時は落ち着いた所で過ごしたいです。そして、同じように考える人は多いでしょう。

 

問題はここからです。広島市の周辺自治体から市中心部へのアクセスが悪いことです。郊外に住みづらいことで、「広島は住みにくい」というイメージが広まっていると思います。

 

僕はよく早朝に東広島市西条地区の自宅から車を走らせ広島市中心部に行きますが、とにかく運転中の渋滞が酷いです。ストレスが溜まります。

その解決策は西条バイパス・東広島バイパスの全線4車線化ということになりますが、それは早くても20年以上先でしょう。

 

JR山陽本線の西条駅行き列車の本数を増やしてほしいという指摘がフェイスブック上で上がっていましたが、難しいと思います。JR西条駅の線路本数を考えると、頻繁な折り返しは無理でしょう。山陽本線の広島駅以西の列車が多く折り返す岩国駅、呉線の列車が多く折り返す広駅の構内はいずれも線路を多く有しています。山陽本線の広島駅以東で同じく線路の多い駅は糸崎駅ですが、では広島~糸崎間列車を増発したいとなっても、白市~三原間の利用客が少ない現状では、JR西日本は「採算が合わない」と渋るでしょう。

 

ではその現状をどうしたらいいのかということになりますが、僕は以下のことを提案します。

 

①入野・河内地区で宅地開発を進めて居住者を増やし、広島市や西条、三原への通勤客を増やす。

 

②入野・河内からの移動時間が広島駅より短くて済む海田町の事業所を増やし、この区間のJR利用客を増やす。

 

その結果、JR西日本に広島~糸崎間列車の増発を決断していただけると、大きな効果をもたらすと思います。車利用からJR利用に切り替える人が増え、東広島市~広島市の道路渋滞が緩和されると思います。

 

そして、広島市以東エリアから目線を移して、2つ目の提案をしたいと思います。

 

広島市北部エリアの交通網充実、田園と都市の二拠点生活の推進を提案します。

 

広島市から北部の中国山地の芸北地域(安芸太田、北広島など)、備北地域(安芸高田、三次、庄原など)は豊かな自然と豊富な食文化を有していまして、田舎暮らしに憧れる人にフィットします。

 

また、中国山地は懐深い山々の中に多くの盆地があり、市街地が衛星状に広がっていることが特徴です。三次市中心部、庄原市中心部、北広島町千代田、世羅町甲山周辺は商業施設が充実していて、日常生活にあまり困らないと思います。

 

「広島は瀬戸内海の景色が綺麗」とは広く知られています(小柳ルミ子「瀬戸の花嫁」等で広まりました)。しかし、まだ中国山地のことは全国的にはあまり知られていません。広島県庁にはもっと中国山地のPRをして頂きたく思います。

 

交通網で言えばJR芸備線がある他に高速道路網も充実していて、高速バスが多い便数で運行されています。高速道路は4車線である上に渋滞のリスクも少ないです。

 

ただし、移動時間が長い上に高速道路料金の負担がありますので、広島市中心部(紙屋町など)への毎日の通勤は少し難しいと思います。

 

それではどうすればいいかと言うと、僕は以下のことを考えます。

 

①北部地域から見て、広島市中心部への移動ほど遠くなく、高速道路のインターチェンジが位置する西風新都、久地、中筋周辺の事業所を増やし、雇用を拡大させる。

 

②北部地域での医療・農業関係の雇用を拡大させるだけでなく飲食店出店を促し、この地域で働きながら休日は広島市中心部でショッピングを楽しむ二拠点居住を推進する。

 

…そして急を要する課題は、安芸太田町の活性化です。同町は広島市中心部から1時間程度で行ける程に利便性が良く、定期運行バスがあるにも関わらず、急速に人口が減少しています。国勢調査による人口推移は、平成22年から令和2年の10年間にかけて20.9%減少しました(減少人数÷22年人口です。小数点2位四捨五入です)。これは広島・島根両県の中国山地の他15市町(※)の同様データよりも高くなっています。

 

JR可部線あき亀山~三段峡間の廃止によって「衰退」イメージが広まった影響なのかどうかは慎重な検証が必要ですのでどうとも言えないですが、とにかく、このまま人口減少が進むと、商業施設の撤退や社会保障負担の増大を招きかねません。そして、広島市北西部のこの町への定住を促進することは広島県全体の公益だと思います。

 

町内加計地区の中心部の賑わい再生、農林水産分野での特産物考案による新興産業創出など、考えられるアイデアは多いと思います。広島市から島根県益田市への車移動が、浜田自動車道経由よりも時間が短くて高速代も安上がりになる利点も生かし、交通の要衝としての町おこしをすることも考えられます。

 

町内戸河内地区で食べられる美味しい山菜そばです。

 

 

…つい最近に町役場の職員さんから聞いて初めて知りましたが、可部線の廃線跡の構造物(鉄橋、トンネル等)の撤去に要する予算が大きくて、重たい財政負担になっているそうです(廃止の際にJRから受け取った手切れ金ではとても足りないそうです)。この負担によって、町おこしの予算が足りなくなってはいけません。構造物撤去のための、県や国の財政支援が必要です。

 

 

 

※その15市町は安芸高田、三次、庄原、(備後)府中、世羅、北広島、神石高原、雲南、邑南、川本、美郷、飯南、奥出雲、津和野、吉賀です。市域に海岸沿いエリアを含んでいる広島市、廿日市、大竹、浜田、益田等の市と、人口の非常に多い東広島は除いています。