原点(チキン)
重なり合う幾層の輪郭で構成された特別なカレーだった。スープに潜む大葉だけが離れていた。
丸みのある塩、揺るぎないエッジのある塩、塩と一体化する鶏のスープ。近い位置取りで、いくつかの塩や鶏、豆の発酵したようなコクがまとまる。米の上に乗ったえのきを揚げたものでさえ、また別種の塩をまとう。
収斂されは方向性は、米とほんとうによく合う。米は、おいしくふっくらと炊かれている。ぎゅっと固められて盛り付けられていて、スープに浸してもほどけていかない。思いやりだ。
唐辛子の油漬けは、砂浜の健康な水着のようにはじけていて、実際ほどには辛さを感じさせない。干しエビでも入れれば、そのままパスタソースになりそうだった。
きゅうりの漬物は、考えうる限り最も米に合うきゅうりの漬物だった。唐辛子の少しの辛みと、味の中心に寄ったコクと塩。漬物もカレーと同じ方向を持っていた。
鶏肉はほろりと骨から落ちるけど、肉の弾力は残る。これもまた特別においしく調理されていた。