南部かしわチキンカリー極 (雄)

至極のおいしさだった。おいしいカレーのために、あらゆることをしているようだった。コンセプトや、たのしさが中心にはなくて、おいしいカレーを作るのだという意志が中心にあった。カレーサイボーグだ。
はじめには、牡蠣のような香りと醤油のようなコクがある。その後にクミン、パウダーとまではいかないけど、細かく砕かれたそのほかのスパイスたち。この砕き具合、スープへの溶け込み方がとてもすばらしかった。
スープは鶏が中心なのかもしれないけど、とにかく複雑。甘さ、酸っぱさ、豚もあるのだろうか。ヨーグルト的なものと、クリーム的なものが同じような場所に収まっているようだった。動物の脂もそこに加わっていて、とてもおいしい。スープの質感とか味や香りの全体感は、日本の古い南インドカリーに近いのかもしれない。新宿のけららのような。

鶏肉がまた特別だった。骨がとても太い。スーパーマーケットの鶏肉の2倍は太かった。スープで煮込まれて、カレーによく馴染む。噛むと固さのなかに弾力がある。味わいは深い。肉の中には下味があって、いつ何をどうしたのかは分からないけど、とにかく丁寧なのだということが分かる。
米もまた特別で、麦めしとスパイス炊き。写真はないけど、浅漬けの福神漬けのようなものも、酸味があってとてもさわやかでおいしかった。

このようなカレーが世界にはあるのだから、それも家の近くに、人生は生きる意味があるだろう。