辛口・並

有名店。確かにすごいカレーだった。
閉まりかかったシャッターの先の暗くて急な階段を上る。やる気がないからできれば他に行ってくださいとのメッセージボード。ドアの前で声がかかるのを待つ。店に入ると、早く帰りたいから秒で食べろと貼り紙。

疑問や反感を塗り替えるカレーだった。
豚の脂と魚のスープ。果実の甘さと、その皮のつるりとした感覚。油と水の分離したところに空間があった。固形と油が優勢。空間を出すのに、水ではないのだ。どちらかというとクミン。
3分づきの玄米が粒立ちしていて、カレーをとてもよくまとう。
米の上に乗ったキーマは、カレー以上の甘さを持っている。味噌ではある。魚も。

これまでに食べたことがない甘さ、辛さ、油、香り、食感のバランスだった。バランスだけ言うなら、きちっと作ったルーのカレーで豚バラを煮込んだら近くなるのかもしれない。

カレーが強烈鮮烈で、腐っていた心と身体が豚の脂と一緒に溶け落ちたようだった。