3種
チキン、ヤサイ、ブタバラ

カレーを食べて外に出ると、雨は上がって、晴れていた。なんて素晴らしい人生だろうと思った。

ノン・ジャンルな人形が見下ろす店内は、控えめに言ってもサイケデリックで、店の人はマスクをしているものだから、さらに異形さは増す。

カレーは全然サイケデリックではない。
むしろ、できうるかぎりおいしくしようとしていると思った。

チキンはどこまでも正しいすっきりとしたチキン。チキンの火の通り具合もとてもちょうど良く、肉の汁が少し残る。
ヤサイは、南的インドカレーの見本のよう。甘さが出すぎているような嫌味が全然無い。

ブタバラは他の2つのカレーと比べると、脂があるのは当然。その当然のことを当然のように出して、たしかに脂があっておいしい。
そして、それにぴったりと見合うように苦味のスパイスが置かれる。

玉ねぎのアチャールは、他のものより酸っぱさが一段引き上げられていて、空間が広がる。
紫キャベツは、何かの旨味と油で、足りないピースを埋める。

ココナッツのものにはゴマが混ざっている。
ブタバラには、キウイか何か甘いフルーツのものが載せられている。
どちらも変わっているのだけど、ゴマはまわりのチキンにコクを出して、フルーツのものはブタバラに見事に爽やかさを加えているから、まったく当然の存在で、破綻するところは一つもない。

最後に全部が混ざる頃には、汁の一滴がとても大切なものになる。

そういう高度にコンサーバティーブなカレー。
この街に住む人のためのカレー。