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プレーンカリー3種盛り
ずっといると涙がでそうだったから、食べ終わったら急いで外に出た。
よいカウンセリングのようだった。
カレーに映る自分と向き合った。
東京に戻って一杯目のカレーがここでよかった。
いつもは、2種類のカレーが盛られたカレーは、どちらもよく覚えていられなくなるから、なるべく1種類だけにしようと思っている。(なるべく)
しかし、このカレーは3種類もあったのに、どれもはっきりと覚えていられた。
それは、それぞれのカレーに自己ともいうべき芯のようなものがあるからだと思った。
そして、その芯のようなものは偶然できたのではなくて、作り手の手が重ねられたものによっていた。
よいカウンセリングは、自己を減ずるのではなくて、自己を重ねて明確にすることによってもたらされるということをも表していた。
一番手前のチキンカレーは、鶏肉の味が出されていた。ちょっと出しただけではなくて、すり切れる少し手前まで出されていた。
結局は、こういうカレーにぼくは戻るだろうと思った。こういうカレーが好きだと思った。
左手にあるエビのカレーはエビヘッドという名前で、店にはちょうどレディオヘッドのマイアイアンラングの曲が流れていた。そのあとも、明るくないロックミュージックが流れていた。
ほんとうに甚だ僭越だけれど、もしかしたら、このお店は自分と近いのではないかと思った。
ぼくの音楽はレディオヘッドと共にあった。
そして、カレーについても、玉ねぎなりベースがあって、しっかりしたスープがあって、その上にスパイスがあるようだった。
あるいは、そのように自分を映した。
エビのヘッドは、エビの頭をちゃんと出しているけど、不釣り合いなように酸っぱい。どうしてもったりさせなかったのだろう。そこがまた素敵だった。
キーマは、そぼろとも言えるカレーで、生きているうちには、クローブを効かせてみたり色々と背伸びをするかもしれないけど、結局はこういうカレーが好きだと思った。
そういえば、ぼくが始めてライブをしたのは西荻窪だったし、ずいぶん前には、とても好きだった女性に、あてもなく好きだと言ったのも西荻窪だった。
西荻窪いい街だなあ。