巡るカレー
薬飯
紅白大豆そのやま玄米納豆
かくら茶 赤茶

8月になって日は少し短くなった。18時をすぎると雲は夕暮れの陰影を持ち始めて、すずしい風が吹く。太陽は秩父の方角へ沈む。空気は湿っていて、沈む輝きは穏やかに。
それなりに仕事を終えて、ゆっくり時間をかけて無印良品まで歩く。それを幸せに感じる。ぼくはどうやって死ぬのだろうかと思う。苦しむのだろうか。

ぼくは日曜日にアビヤンガ施術をしてもらい、ヨガで体を広げて、エネルギーを入れてもらい、わずかに心と体が巡り始めている。そういうときにこそ、巡るカレーを食べてみようと思った。

店に入るにはインターホンを鳴らす。

この前に店に来たときは、四つ打ちのダンスミュージックが流れていた。今回はオールドファンク/ジャズが流れている。音量は大きくて、体を揺らす。

カレーはとてもおいしかった。巡らせたいということに気持ちが向いていて、おいしいことにびっくりしてしまった。
スパイスを乾煎りしたような泡立ちと、大きな玉ねぎとトマトの滑らかな味。圧倒的なうまみは、貝汁さえ思わせる。気は巡って、汗をかきながら食べた。

食べているとき、食べ終わったとき、幸せになるカレーだった。

店を出ると、額に何かが触れている。手でそれに触れると、ひらひらとしていて蛾ではないかと思った。蛾は刺したりするのだろうかと思いながら、でも気持ちを落ち着けて、ウェットティッシュでそれをぬぐって見ると、ナプキンの切れ端だった。店で汗を拭いたナプキンだった。

通りには、夏まつりの提灯が並んでいる。
ぼくが分かっているのは、大海の浅瀬にある一つの砂粒ほどだということだった。それをいつも覚えていなくてはいけない。