『母さんが倒れて、今病院なんだ』
早朝に電話が入る
脳梗塞で右半身麻痺
失語を伴う
寝ている時に起こったらしく
気付くのが遅れたようだ
地元の病院では診れず
離れた大きな病院に運ばれた
兄が亡くなってから
肉親とは常に「最後かも」と
接してきたつもりだった
あくまで『つもり』で
確信は持てていないが
頭は冷静で
「母さんがしてもらう側になったんだな」
と理解するのに
そんなに時間は掛からなかった
母は一生懸命に介護職に打ち込み
周囲からも信頼を得ていた
仕事を辞めると言っていた矢先
母が選んだ道と言えば
聞こえがいいが
僕自身、仕事の辞め時に
関わり合いが足りていなかった
幼い頃から見様見真似で
食事の手伝いをしていたため
実家に帰って
3日間の食事の準備と
冷蔵庫の掃除
今後、父が食べやすいように
小分けにした料理を冷凍する
止まらない父の話し相手と
病院への案内
その他諸々の決断に
父の不安の解消
子一人は
なかなか大変
兄弟が少なくなった現代で
同じ苦労を抱える人も
多いのではないだろうか
兄に任せて家を出たら
兄が死に
母を残して離れていたら
母が倒れ
僕は学習しないアホだろう
父は地域の人に喜ばれるのが好き
そのために我慢する部分も多いようだ
その我慢が家族にいく
父が地域のことを
一手に引き受けると
その負担が一家庭に
集中して降り注ぐことになる
地域を会社に置き換えれば
勤め人を父に持つ家庭も
変わりないのかも知れない
母が倒れ
流石に父も
思うところがあるようだ
もらったら返そう
有り難いことは
もちろん返す
大変なことも
出来ない部分は返す
僕は母に恩を返す
父と子揃ってアホですね。