先日（8/17）の情熱大陸は、放送作家の小山薫堂さんの特集でした。

http://www.mbs.jp/jounetsu/2014/08_17.shtml

＞50歳を迎え、１か月の夏休みをとることを決意した。目的は「人生の後半をどう生きるか、じっくり考えること」。30年間仕事に追われ走り続けた企画の達人は、人生で初めて自分と向き合う夏休みをどうプランニングするのか？

小山さんは様々なジャンルで活躍されているのでみなさんご存知と思いますが、そんな小山さんがどんな「休み」をとるのか、とても興味がありました。

歯の治療から始まり、熊野古道の巡礼、ヨーロッパを回る贅沢な旅行の1か月間。

休みなので、取材は1か月の内の2日だけで、あとは小山さんのとった写真や回想でした。

印象的だったシーンや言葉。

●バックパックを背負い、両手に杖をつきながら熊野古道を歩いているシーン

「今一番欲しいもの何かわかりますか？休みです。休んでいるのに、休みが欲しい」

●昼食に宿で作ってもらったおにぎり３個とたくあんを食べているシーン

「今年食べたものの中で一番うまい」

●ヨーロッパ旅行中の電話取材に答えたときの言葉

「何か義務みたいな気分で休んでいる感じがしますね。早く休みが終わらないかと思います」

●1か月の休暇を終えての言葉（小山さんの日記から）

結局この１か月間は何だったのだろう？自分にとってどんな時間だったのだろう？正直まだこの時点では分からない。けれどもきっとこの先で、「あの時、人生のハ－フタイムを取ってよかった」と思う日は必ず訪れるのである。投資とはそういうものだ。簡単に１か月で何かが劇的に変わるものじゃない。

転職をする間の切り替えの期間や、人によっては自分で休むと決めた期間、人はときに「ロングバケーション」をとることがあると思います。

そういった休みは、結構な覚悟や準備をしないと中々とれないのも事実です。

特に忙しい人にとって。

また、フリーで仕事をしたりしている人にとって、休むというのは、自分で自由に決められるようでいて、そうもいかない事情もいろいろあり、実は中々難しいことなのではないかと思います。

私自身も、今年は独立して6年目で、5月以降は大分ゆったりとしたスケジュールで来ていますが、じゃあ休んでいるかというと、そういうわけでもなく、仕事はしていますし、それ以外の様々な予定もあります（自分で選んで入れているわけですが）。

長期間「休む」っていうのは、だから中々覚悟がいることだと思います。その間、会社に行かないことだけではなく、仕事をしないことだけでもない。自分を取り巻いている様々な文脈や関係をいったん停止する覚悟がないと、中々とれない。その覚悟をするって、中々難しい。

でもいったん休みに入ると、山に登っているときに休憩するときのように、大きな荷物をいったん脇において、深く呼吸をする。周りの景色を見まわす。日常の様々な文脈の中で、好むと好まざるとに関わらず背負ったり抱えたりしているものを、いったん脇に置くことができる。

そうすることによって、自分は今何してるんだろう？自分は本当は何をしたいんだろう？というものがあがってくるスペースができるんじゃないでしょうか。

小山さんの休みでいうと、自分の足で山道をたくさんあるいた後のおにぎりがおいしいという感覚は、生きることの原点のような感覚だと思います。

そして、「義務で休みをこなしている感覚」という感覚も、そういう自分に気づくことが、その後の仕事に必要な示唆を与えるのだと思います。

休みが数時間であれ、数日であれ、数週間、数か月であれ、きっと必要なのは、大きな循環の中に身を置いてみること。それは自然という循環だったり、歴史という循環だったり、生と死という人の命の循環だったりするかもしれません。

そして、本来持っている感覚を呼び戻すこと。身体や魂の持っている生命力、大きな全体の生命の波長を取り戻すこと。それが、本当の自分に戻ること、大いなる生命のリズムにチューニングする、ということではないかと。

「休む」ことによってそんな経験ができれば、日常を感じる自分の感覚が変わっている（本来の感覚を取り戻している）のだから、見え方、聞こえ方、感じ方の質が変わってくる。そのインプットの質が変わることによって、アウトプットの質にも変化が生まれる。自分が本当にやりたいことを自然に行っていくようになる。

「休む」ということの本質は、そんなところにあるのではないかと思うのです。

30歳、40歳、50歳と、なんだか大きな節目のような感じがするものですよね。私も人生の午後を迎えて、後半、特に残りの仕事人生をどう生きていくか考えるようになったのは、実は今年からです。

長い休みを取る覚悟はまだまだできませんが、毎日の中で、「休む」という時間を意識してとりたいと、あらためて思うのでした。

※熊野古道の石畳

【休む】人生のハーフタイム