金曜日

 

緊急入院が決まった金曜日、絶対安静の指示が出た。

服薬と24時間の点滴、頭を上げないように絶対安静の姿勢で週末を過ごし、脳梗塞のリスクを下げるのだそう。

 

いつ脳梗塞が起こるのかと、とても怖くなった。

 

ICU(集中治療室)と言われた気がしたけど、入ったのはHCU(高度治療室)だった。

ICUと一般病棟の間の施設らしい。

 

入院が決まると、外来のベッドから、点滴ごとストレッチャーで病棟に移動。

初めて入るHCU。

 

ストレッチャーからベッドに移り、入院着に着替え、心電図のモニターを付けられた。

 

ベッドから降りてはいけない。

食事以外頭を上げてもいけない。

排泄もベッド上でしなくてはいけないという指示。

 

看護師さんが数時間置きに、バイタル等と麻痺の有無を確認。

スタッフの皆さまに全員に感謝の気持ち。

 

縦長のスペースで、出入りはカーテン、左右はガラスのようなパーテーションで仕切られており、半個室のような感じ。

奥は壁で、後で分かったが細い窓がついている。

 

ベッドに寝ていると、出入りのカーテンと左右のパーテーションしか見えない。

カーテンの向こうは、ナースステーションが近いらしく、足音、話し声がひっきりなしに聞こえてくる。

左右の入院患者の話し声や咳払いなども聞こえてくる。

 

医師や婦長の悪口が多くて驚いた。

「○○ドクターは、いつも無茶振りしてくるよね、そんなに急に患者を取れない」

「ICUは、感染症でめっちゃスタッフ少なくて、患者取れないらしいよ」

 

そんな話声が聞こえてきて、なるほど、だから私もICUに入れなくて、HUCに入ることになったのかな?とうっすら思った。

 

ベッドで、入院等の書類にサイン。

治療計画書を渡されたが、手術とある。

まだ手術すると決めてない。

計画であって決定ではないことを確認し、サインをする。

 

夕ご飯が出た。お腹が空いていたけれど、トイレに行きたくなったら困るなと思い、少しにした。

食欲があるうちに食べておけばよかった。

 

土曜日

 

一日中、色んな患者さんの点滴のアラーム、心電図のアラーム等がひっきりなしにピーピーなる。

私のものもなる。

 

私の心電図のアラームも鳴る。

不整脈が時々出ているようなことも、廊下の話声で聞こえてきた。

え…、私不整脈なの?

なんていうか、看護師さんたち、全部聞こえてるんですが、それが普通なの?

 

トイレのみベッドから降りて車椅子で行ってよいと言う指示が出た。

本当にほっとした。

 

具合が悪い時が増えた。

めまいがしたり、心臓が苦しい気がした。

 

チームで担当するとのことで、主治医の先生以外の先生の回診があった。

言語療法士や理学療法士の人も来て、ベッド上で現在の機能の検査があった。

まだ麻痺は出ていない。

 

ベッド上で眼鏡をかけようとすると、皆、かけなくて良いと言う。

視力が両目とも0.06なので、かけないと人の顔もろくに見えない。

だから、誰が言っているのか等も、良くわからない。

 

後から考えると、お医者さんの指示を受けるときは、眼鏡をかけた方が良かったなと思う。

 

親切な昼間の看護師さんから、買い出しに行ってくれると言われた。

水と歯ブラシ等とイヤホンとスマホの充電器をお願いした。

 

無線のイヤホンを欲しいと誤解されたらしく、無かったと言われたけど、スマホにイヤホンを付けられるのでイヤホンが欲しいと再度お願いした。

 

ひっきりなしにカーテン越しに看護師さん、患者さんたちの声や物音等が聞こえてきて頭がおかしくなりそうだったので、スマホで音楽を聴きたかったのでどうしてもイヤホンが欲しかった。

 

物音の聞こえ方もおかしかった。

時折、無音になったり、サラウンドのように聞こえたりする。

ストレッチャーで運ばれてきたから外の様子が分からないけど、ナースステーションが遠いのかな?とか、二つあるのかな?と思っていた。後から分かった事だけれど、自分の耳の聞こえ方が、時折おかしかったことが原因らしい。

 

廊下から看護師さんたちの会話がすぐに聞こえてきた。

「え?もう一回買いに行くの? 何それいじめ?」

 

と、親切な看護師さんの同僚の看護師さんが話している。

 

全部聞こえてるけど…。

売店遠いのかな、悪いことしたな…、と思った。

 

日曜日

 

昨日の優しい看護師さんから、個室に移ることを提案された。

え・・・、そんなことが出来るの?

私は他のHUCの患者さんに比べると、状態が安定しているから、その方がゆっくり休めるとのこと。

 

カーテン越しに会話が聞こえる。

「え、脳卒中でしょ、尿も混濁してるじゃん。大丈夫なの」

「状態が安定してるし本人も希望してるので」

 

と、看護師さんが他の看護師さんの意見を押し切ってくれているのが聞こえた。

 

え…、私、脳卒中なの? 尿も混濁してるの?やばくない?

 

何だか情報がいっぱいで混乱する。

 

しばらくして、ストレッチャーですぐ近くの個室に移動した。

今度は部屋にトイレも付いていた。

 

個室なので、部屋で自由に通話できるし、部屋でテレビも付けられる。

まだ廊下の看護師さんたちの会話が聞こえるけど、それまでよりずっと静かなことに心底ほっとした。

 

ベッド上は自由に過ごして良い、トイレは歩いて行って良いと言われた。

排泄量を測るため、トイレに行く際にはナースコールで知らせることになった。

 

スマホの音楽をイヤホンなしで聞けてすごく嬉しかった。

 

看護師さんが、また買い出しに行ってくれると言う。

お水等をお願いした。

 

夕方ごろ、少し息苦しくなった。

 

夜勤の時間帯は誰が担当するかで廊下でもめる声が聞こえた。

婦長さんが「私がみる」と言ってくれたようだった。

本当に有難かった。

 

モニターに担当医とその日の担当の看護師さんの名前が表示される。

優しい看護師さんは、土曜日と日曜日の昼間を担当してくれたようだった。

何となく仕組みを理解した。

 

そういうことって、緊急入院だど誰も説明してくれない。

 

3週間以上の入院生活の中で、親切にしてくれたのは、このHUCの土曜日と日曜日の昼間に担当してくれた小柄な看護師さんだけだった。本当に心から感謝しています。

 

後から分かった事だけど、日曜日に一日だけ入った個室は、HCUの個室で、まだ一般病棟の個室ではなかったのでした。