第1章 ~ ファーストコンタクト ~
渇いていた・・・。
そう、渇いていたという表現がいい。
僕は通称「マイケル」30歳。
意味はナイけれど、本名よりも咄嗟に出たこの名前が
何故か有名になってしまったのだ。
決して「女日照り」というワケではない。
僕には結婚して2年目の嫁もいる。
ただ・・・「退屈な」毎日から逃げ出したかったんだ。
「仕事」と偽り、その日もツレと夜の街へと繰り出していた。
最近よく通っている「Jupiter」というクラブがある。
ここはツレの知り合いが在籍している店で
言ってしまえばツレが「義理」で指名などをしていたものだ。
でも今日は少し様子が違った。
ツレの指名の嬢が「体調不良」で店を休んでいた。
彼は少し嬉しそうに「じゃあ、今日はフリーで」と黒服に伝える。
もっとも僕はいつもフリーなんだが・・・。
BOX席に通され、間もなく2人の隣に女の子が来た。
「ど~も~、はじめまして~」僕の隣に座った女の子は
かなり高めのテンションで「奈保で~~っす」と名乗った。
結構通っていたから、大概のコは顔を知っていたのだが
確かに初めて会うコだった。
・・・でもどこかで見たコトのある顔なんだ。
知り合いじゃないのはハッキリしているけど、思い出せない。
年齢は21歳、スタイルも良くギャル系の可愛いコだ。
しばらく話しながら飲んでいると、女の子達が酔っ払ってきた。
それもそのハズだ。僕達の飲み方がおかしいから。
最初からほぼ一気なのだ。何か喋ったり、冗談を言う度に飲む。
僕達はいつもこうだから慣れているけれど、女の子達はそうはいかない。
奈保はいつの間にか酔っ払って、話をする度に自分の本名を連呼している。
彼女の本名は「アオイ」というらしい。そっちの方がよっぽど「源氏名」らしいじゃん・・・
と心の中でつっこみを入れてしまう。
コイツ面白いなと思った僕は「アオイ」を場内指名する事にした。
散々酔っ払ってきた所でカラオケ付きの「ビップルーム」が空いたので入る。
それから閉店までの3時間は「歌って、飲んで、歌って、飲んで」の繰り返し。
その間にしっかりと携帯番号とメルアドは交換してある。
その辺りはぬかりはないのだ。何だかんだ「アオイ」と話しをしているウチに
いつの間にか「楽しい」から今度はプライベートで遊ぼうって話になっていた。
僕はどうせ話しだけだろうと、あまり相手にはしていなかったのだが・・・。
そうこうしているウチに閉店の時間となり、会計を済ませる。
冗談半分で2人ともアフター行くか?って聞いてみたら・・・
「アオイ」は来るという。ツレの隣に座っていたコは行けないというのに。
店を出て10分もしないで「アオイ」が来た。格好はギャルそのもの。
3人揃ってもうそんなに酒は要らないという話しになり、カラオケに行く事になった。
かなり酔っ払っている「アオイ」はスキだらけである。今日しようと思えばデキルな・・・
一瞬そういう考えもよぎったが、今日はあえて楽しもうと何とか理性を保つ。
でも軽いキスくらいはしたい・・・。
ツレがトイレに行った隙をついたり、一緒にトイレに出てみたり。
・・・僕達は何度もキスをした。何度も。
結局朝5時過ぎまでカラオケボックスで過ごして外に出ると、
やけに明るい空が僕らに脱力感を与える。
急にぐったりした僕は彼女にタクシー代を渡し、今日はその場で別れる事にした。
また会う約束はしたものの「でもこれっきりかな・・・」と半ば諦めながらツレと家路につく。
乱暴に揺れる車の中で彼女の事を色々な事を考えながら。
「あ、アオイの事ちょっと好きになりかけてる・・・」
たった数時間しか会ってないけれども・・・確かに、確かに
僕はそう思った。
第1章 終わり