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しんぐるぽんぐる

心の琴線に触れたこと、面白いな~と思ったことについて
書いていこうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【遺言】

 

 

 

 

 

私が死んだ後、南側へ行くことができたら

私の幼い友人たちを探して

その老いた手を一度、握ってほしい

もしも生きていたら

 

私が死んだ後、南側へ行くことができたら

私の少年時代を探して

青々しい私と少しだけ会ってきてほしい

まだ残っていれば

 

この本を持っていくといい

私の若き日の小さな記念品

一枚の絵を渡してくれたらいい

私の若き日の素朴な証拠品

言葉は伝えなくていい

気まずくなったら窓の外を見なさい

私が死んだことは言わなくていい

あの空を一度見上げたらいい

 

私が生きて、友を訪ねることができたら

何の話を、どこからすればいいだろう

私は君のデミアンではなかったけれど

君は私のシンクレアだったと

 

ただ一日を選べるのなら

私はあの日に帰りたい

私がカバンからデミアンを取り出した瞬間

あの瞬間、あんなに輝いた

君の目をもう一度見たい

(あんな風に現れて、突然私を揺さぶり)

全てが完璧だったあの日

(こんな風に記憶に蘇り、永遠に私を揺さぶる)

春だ。風が吹く

もう一度帰りたい。

たった一度でいいから、帰りたい

今も風が吹いている

 

 

 

 

 

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ある日、年老いた主人公の元に「リヨンスク」という女性が訪ねてきます。

それは、作戦中行方不明となった、イヘイルの娘でした。

(韓国ではイという名字が、北朝鮮ではリになります)

 

イヘイルは人民軍の捕虜となり、北朝鮮で結婚していたのです。

娘は、父親が苦労の末に亡くなったことを、主人公に告げます。

 

その時、エンくんが上の写真の恰好で登場し、

年老いた友人の前で歌うのが、「遺言」という歌でした。

 

 

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観劇をする前は、身体の弱かったイヘイルがどうして戦争に行ったのか

不思議でした。なんのことはない、彼は志願して行ったのです。

 

1950年6月25日に戦争が始まると、

イヘイルは、小説の中のデミアンと同じように

「戦争が始まった。僕は入隊する」

と言って、躊躇することなく入隊します。

 

イヘイルの愛する小説「デミアン」の中でも戦争(第一次世界大戦)が起こり、

デミアンも、主人公のシンクレール(シンクレア)も入隊しますが、

小説の中で描かれる戦争は、過酷ではあってもどこかロマンティックで、

且つ哲学的に描かれているので、

デミアンに傾倒していたイヘイルは、戦争について、その小説に書かれているままに…

「冒険と激しい運命が私たちを呼び、いまかあるいはまもなく、世界が変化し

私たちを必要とする瞬間」であり

「「運命」というきわめて孤立的な事柄を、こんなに多くの人々と、

全世界とともに体験しなければならないというのは、いちじるしいこと」

であり

「わるくはないこと」

と思って入隊したのかもしれないと思いました。

(現代の大学生チェウジュが、遺骨発掘調査に「インディジョーンズ」のような

ロマンを感じていたように)

 

 

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ミュージカルの中で、戦争に行くのは、

病弱なイヘイルだけではありません。

どう見ても子供のような学徒兵たち

そして、イヘイルの双子の妹であるイヘソンもいました。

 

特に、女の子が戦地に行くというのは私にはあまりにも突拍子ない話のように

思えたのですが、調べてみると朝鮮戦争には14歳~17歳の少年兵が参加し

そして少女兵も467名いたということでした。

 

そして、イヘイルが「戦死」するのではなく「捕虜」となって

北に連れていかれてそれっきり、という設定なのも、

実際にそういう兵士がたくさんいたからです。

 

戦争に行ったのは、18歳以上の青年だけではない。

年端もいかない少年や少女もいて彼らの多くも戦死した。

戦死した者だけではない、捕虜になった者もいた、

本当に色々な悲劇があった、という事実を

余すことなく描くために、彼らを登場させた(そういう設定にした)のだと思います。

 

 

 

 

 

 

劇場ロビーには、今まで発掘された兵士の遺品などが飾られていました。

 

まだ中身の入っている乳液や化粧水の瓶などと共に薬瓶もあったので、

イヘイルのように、薬を飲みながら戦っていた兵士は本当にいたのだなと思いました。

 

 

 

 

 

 

喘息持ちなのに、いつも薬を忘れて

薬瓶を持った妹が「イヘーイル」と言って追いかけてきます。

妹が投げた瓶を片手で受け取って

「ダンケ」

と、クールに言うイヘイルが、キザで痺れました。