10月は、私にとって大事な人々の誕生日という、記念すべき日が実に多い。
滅多に会うことがない人ばっかりで、
しかも連絡すら付かなくなった人も居るのだが、この場を借りて遅ればせながら祝福のメッセージを送ろう。
それぞれ、11日・13日・18日・25日に誕生日を迎える同い年の敬愛すべき盟友たちに乾杯!
話は変わって、
デアゴスティーニ 刑事コロンボ新シリーズ 13「影なき殺人者」
<あらすじ>
犯人は刑事弁護士 ヒュー・クライトン
クライトンは、お抱えの私立探偵マーロウからの報告を受け取った。
それは、歳の離れた内縁の妻、元ロックスターのマーシーが浮気を重ねているという証拠を示す逢瀬のカメラ映像と、
マーシーが決まった曜日の決まった時間に相手の男を招いているという報告書だった。
その後、報告書と逢瀬の様子を盗撮したビデオを処分し、マーロウに口止めをしたクライトンは、マーシーに別れ話を切り出す。
しかし激昂したマーシーはそれを拒否。
無理に別れるというなら、
今までの裁判での勝利は判事や陪審員を買収したものだったという偽の告発を言いふらす。
それが嫌なら500万ドルの手切れ金を払うよう脅迫に打って出た。
無敗の刑事弁護士としてはこのゴシップは大きな痛手だった。
やむを得ず頷くクライトンだったが、この時既にマーシーの殺害を決意した。
クライトンはマーシーが浮気相手との密会に使うビーチハウスを訪れ、その冷蔵庫にあるシャンパンに注射器を使って睡眠薬を注入する。
その翌日、自宅でマーシーの紅茶に断酒薬を仕込んで飲ませた後、
マーシーが今日もビーチハウスに向かうことを確認した。
その後、マーシーは昔のバンド仲間であるドラマーのネディとビーチハウスで密会。
二人はシャンパンで乾杯するが、マーシーは今朝知らずに飲まされていた断酒薬のせいで酒を受け付けない。
その一方、シャンパンをガブ飲みしたネディは強烈な眠気に襲われ、意識を失った。
すると、そこに庭師に変装したクライトンが現れる。
突然のことに驚いたマーシーはネディを庇おうとするが、クライトンの狙いはネディではない。
手袋を嵌め直し、クライトンはマーシーを殺害した。
その後、睡眠薬入りのシャンパンのボトルとグラスを洗い、持ち込んだシャンパンの中身を移した。
注射器の痕のあるコルクも持ち込んだ別のコルクとすり替え、全ての痕跡を消した後でビーチハウスを去った。
目を覚ましたネディはマーシーが死んでいることに愕然とし、現場から逃走。
暴行の前科のある自分が真っ先に疑われることを恐れたのだった。
捜査に当たったコロンボ警部は、
現場に残ったコルク、被害者の体内から検出された断酒薬等からクライトンに目を付ける。
しかしクライトンは、マーシー殺害時刻には遠く離れた場所に居たという、
驚くべきアリバイを用意していた。
<関心どころ>
・コロンボに掛かる圧力
無敗の刑事弁護士として有名であり、警察にも顔の利くクライトン。
今回コロンボ警部は、いわゆる「警察に対して権力のある人間」を相手に捜査を進めるので、
その辺りの対決感の強さというのは魅力がある。
警察内に顔の利く人物が犯人というのはコロンボ作品でもかなり少ない。
<ツッコミどころ>
・どこが無敗の弁護士なのか?
犯人は無敗の刑事弁護士であるはずだが、それらしさは全くない。
裁判の様子も用意されているが、その弁論を聞く限りでは有能さは微塵も感じない。
殺人罪で起訴された被告を感情論だけでどうやって無罪に出来るというのだろうか?
別れ話を拒否し、でっちあげの醜聞で脅迫してくる稚拙な女をわざわざ殺しにかかる必要性もわからないし、
「私が買収工作を行った?
根も葉もない噂だ。浮気を重ねた挙句その不貞行為を咎められれば逆上するばかりか、根拠もない醜聞を言いふらす女の言うことがそんなに信じられますか?」
と突っぱねればいいだけだ。
買収工作が本当だったという設定もないし、クライトンが殺人というリスクを背負わなければならない背景がまるで見当たらないせいで、
クライトンがただの「バカ」にしか見えてこない。
・本当に「驚くべきアリバイ工作」
ネタバレ回避のため詳しくは書かないが、クライトンは
「マーシーの殺害時刻、自分は殺害現場から遠く離れた場所に居た」
というアリバイを作るため、あるものを利用した。
それは、自分の助手であるトリッシュを利用したものであるが、その方法があまりにもバカげたものである。
そのバカさ加減はおそらく、ミステリー作品史上トップクラスのバカさ加減だと言っていい。
そのバカ具合は、
クライトンがトリッシュに対し、あんなことを頼む時点でバカだし、
それを引き受けるトリッシュもバカとしかいいようがない。
現に物語序盤、トリッシュはマーシーが殺害されたと知らされた瞬間、
犯人はクライトンで、自分はアリバイ工作に利用されたということを、すぐに見破った。
(トリッシュは「黙っててあげるから共同経営者に昇格させて」とソフトな脅迫に打って出る)
当たり前である。
見終わってから、邦題「影なき殺人者」の言葉の意味に愕然とすること間違いなし、だ。
・コロンボ史上、最も駄作な脚本
前回も脚本を酷評したが、今作においては前作を遥かに下回る出来の悪さである。
あんなアリバイトリックをメインに持ってくること自体が正気の沙汰ではない。
何なら、今作はコメディ回と設定したというのならわかる。
犯人クライトンを演じたダブニー・コールマンは演技豊かであり、特にコメディ作品の評価が大きく評価されている名優である。
それを上手く駆使し、
『犯人は無敗の刑事弁護士であるが、
自分が殺人を行った際は杜撰なアリバイ工作から多くのボロが出てしまい、
しかもアリバイ工作に利用したはずの野心家な助手から脅迫されてしまい、止む無く共同責任者にまでさせる羽目になる』
そんなトホホ劇コメディとすればいい。
そして犯行を立証したコロンボ警部に、
『まさに驚くべきアリバイ工作でした。
あんな方法普通は思いつきませんよ、紐解いてみれば相当に無理がありすぎましたからね』
と言わせてみるとか。
ところが、あくまでもこれを本格倒叙ミステリーぶっているので、実に始末が悪い。
<セミプロ役者の余談>
・演技は全くもって素晴らしい
上記の通り、ダブニー・コールマンの演技は面白かった。
結果的に予期せぬ事態に翻弄されてゆくその間の抜けた様はとても良かったし、上手い。
吹き替えは小林清志さんが担当。
ご存知、「ルパン三世」の次元大介役で知られ、
アニメや洋画吹き替え、ナレーションでも存在感溢れる名優である。
知的であるはずが間抜けな面を含むというキャラを、小林さんならではの演技で吹き替えている。
ちなみにダブニー・コールマンは、
旧シリーズのエピソード17「二つの顔」では刑事役でピーター・フォークと競演している。
その約20年後、今度は犯人としての出演というのは実に興味深い。
野心家の助手トリッシュ役は、前にレビューした「殺意のキャンバス」以来の登場。
ピーター・フォーク夫人シェラ・デニス。
吹き替えは前回登場時と同じく塩田朋子さんである。
今回は悪女のエッセンスを含んだ演技を披露。
<総合評価>
評価すべきは演技のみ!まさに役不足!
脚本の出来の悪さはシリーズ史上ぶっちぎりのトップ!
2点