急に引越しをすることになって
あれよあれよとめまぐるしい半月が過ぎ
なれない力仕事で体中をガタピシ言わせながら
それでもやっとこさダンボールの山を送り出しました。
新しいお家もふたりぐらし
ルームメイトには一足先に新居へ移ってもらって
私は一週間ほど居残りお掃除
ひさびさの一人ぼっちを満喫してました。
父に大きな病気が見つかって
いつでもお見舞いできるように
いつでも家族が泊まれるように
病院のすぐ横に借りた部屋
私の寝床は西日が差し込んで
夏には34℃くらいになるし
通路側だから室外機の音が周りに聞こえるんじゃないかと思って
あまりエアコンも点けられませんでした。
朝は7時にもならないうちから
恐ろしい大声で歌を歌いながら通り過ぎるオジサンがとても怖かった。
おかげ様で父はすっかり元気になったけど
なんとなく惰性で借りてた部屋
家族をなくしてしまうんじゃないかと
胸がつぶれそうな気持ちですごした部屋
だから私はあんましこの部屋の事を大切に思ってなかったでした。
冷蔵庫も洗濯機もソファもみんな運び出されて
モデムとパソコンとお風呂セットしか無くなった箱の中で
心は新しい暮らしに馳せるものだとばかり思っていたのですが
なぜかしら
引き戸の桟についた傷や壁紙のほころびや
お台所の天井についた油よごれや
それにまつわるできごとのいくつかが
今になってとても鮮明に思い出されます。
これは迷い猫がいたずらしてできた引っかき傷
これは炊飯器の蒸気のシミ
これは使わなくなったエアロバイクの下についた跡
なんだー
なーんだ
ここにもちゃんと私の大好きなものあったんだな
暑かったり怖かったり不安だったりイライラしたり
そんなことに塗りつぶされてちっとも思い出せなかった
まいにち熱いシャワーを浴びさせてくれて
まいにち煮炊きさせてくれて
いつかは家族を川の字に寝させてくれて
ありがとうね
ありがとうね
わたしはこのあとドアを閉めたらもう入ることはできないけれど
わたしにしてくれたように次の誰かさんをまた守ってあげてください
わたしもいつかまた川の字が書けるようにがんばってみます
もうわたしの場所ではなくなる402さまへ
反省をこめて!
