きゅーさん’ず☆わーるど -9ページ目
我らが一族は
女人のすがたのものばかり
生命の繁栄は
明日の夜にかかるものなり
つまりは
生殖を行いし器官を持たない
我らが一族は
長寿なれど
八百の年月
天空の果て
星々の輝きが
地上に届く時間に比ぶれば
ただ
束の間の夢の如き
明日の夜
凪いだる海原に
映る月の輪を
寸分違わず潜れし者だけが
この身体を分かち
女人の生殖器を
得ることができる
かようにして
我らが一族の繁栄は保たれてきた
果たして
女人になりしものは
子を孕み
産み落としたるは
人魚の子
されど人は
あざとい者ばかり
生まれし子を見て如何にとやせん
めづらしきものなれば
如何にとやせん
売り飛ばして金品を得るか
我らが肉を喰らえば
不老長寿の身体を得るという
総じて
生まれし子が
我ら一族の元に還りしもの
僅からなり
また
月の輪を潜りし
女人となって還りしもの
未だかつてなし
女人から人魚に
還りしもの
未だかつて
なし
荒ぶる海原に
年にただ一度
波が凪ぐときあり
それは
満月
凪いだ海原より
月のあかりが水底まで届く夜
我らの蒼き鱗が
金色に輝き
紅き血が身体に通う
水底から天空を眺むれば
金環の
エンゲージリングが如き
我らが一族のいい伝えに
水底から
一息に
その金環をめがけ
みんごと
その金環の真ん中を寸分違わず潜れば
人の半身と
魚の半身が
ふたつに分かれ
ひとつは金の魚に
ひとつは
人に
人間の姿に
なれるという
さては
数え重ねた月日より
明日が
満月の夜となり
何ものをも寄せつけぬ
荒れた海原が凪ぐときなり
さては
我らが一族は
如何にとやせん
さては
私は
如何にとやせん
荒れた海原に訪れる者はなく
荒れた海原に飛ぶ鳥もない
我らが棲家としたのは
異なる者を拒む為
我らが棲家を侵す者を拒む為
深く
暗い
水底には
醜き魚達が集う
かの者達は
皆
陸地に棲む者達に
拒まれた
醜き魚達
我らが一族は
かの魚達と戯れ
かの魚を喰らう
我らが一族は
魚に非ず
我らが一族は
人に非ず
全ては
摂理によって生かされている
全ては
不合理によって死にゆくものなり
私の眼の前に
稚魚が戯れ
私もかの魚達と戯れ
私の美しさに惑い
侮れしところを狙い
喰らう
美味なり
美味なり
美味なり
美味なり

