『エロ本』
この場合は得ろ本ということになるだろうか。
男である彼は、紛れもなくスケベェである。
小学生の頃は、秘密基地と称して、その掘っ立て小屋の中で同じ年頃の仲間達とこぞって、そうした本を眺めていた。
その中に閉ざされた大人の世界を、あろう事か小さな興味と危険な刺激だけのために覗いていた。
何をどうしていたのかははっきりとは覚えていない。
ただ、裸体がやたらに綺麗に映し出されていた事と、自分たちにはない不可解な部位に大きな墨がかかれていた点だけが思い出に残っていた。
また、よく野原を歩くと、草むらの中にそうした本が無造作に投げ捨てられている場面に出くわす。
大概、雨でしわくちゃになったり、破れていたりといった具合である。
おそらく、先客がまだ健全であった体裁の時に、失敬して眺めた後、満足して再び放置したのであろう。だからか、そうした物に遭遇する時は決まって見開いた状態であるのだ。
開いた部分が一体どんなシーンなのかは、流石にえぐいので説明は出来ない。ただいえるのは、あの時の思い出が甦ってくるということである。
男はとにかく好きである。大好きである。
願わくは、否、許されるなら、一日中そうした中で戯れていたいとさえ思う。飽きもせず肉林の渦の中を彷徨い、探険家としての異名を持ち得たいとさえ思う。
ただ、それだけではない。彼は男である。それゆえにそうした部分もあるだけで、それだけでしかないのではない。ALLではなくSOMETIMESである。
飽きないのは元気な大人であの頃の刺激が忘れられないからである。
ゆっくりと歩く男の前にまた、よからぬ本が落ちていた。
だが、今日はほとんど見向きもせず、ちらりと視線を下に落としただけで素通りしてしまった。
夏を過ごす、自分の今を進む。彼なりの思考が風景の一部として電車や車で移動するがごとく足取りを速めさせたのである。
楽しみは、今は物語りの中にあるといわんばかりの目をしていた。
