小説そのうちでます-NIARA


『韮』

どう見ても雑草だ。

これが野菜とは誰も思わない。

もうしばらくすると、そう入道雲が盛んに発生し、夕立やせみ時雨が多くなる8月。真夏の外気で体のエネルギーが奪われる時期に、白い麦の粒くらいの大きさのつぼみが膨らむ。

一塊の束の群の中に2つくらいに花が咲くのだ。

どうやらその塊は根に起因するようだ。

葱のように一本一本のびるこのニラも、じつは地中では複雑に根が絡み合ってしまい、もつれた根の間から親戚のように次々草をはやす。

だから、この雑草にも似た草を見る時は決まって群を構成している。


最初はその存在に全く気がつかなかった。

それから、何度も同じところを通るたびに、白い花が目立ち始めた。

気になりそのつぼみを抜き取った時、おどろいた。

臭いがまるで餃子なのだ。

男が知る餃子は、ニンニクの香り以上にニラが際立っている。

翌日は口臭より、体臭自体がニラの臭いを帯びた感じだ。

だから、決まって、土曜日に餃子をこしらえるのである。

健康で、エネルギーの源として男は夏によく食べた。


なるほど、自然では理に適った連鎖として育っていたのである。

野生の野菜は、原種としてあるものもあれば、肥沃ではない土壌で細々と生きながらえるものもある。

この韮はどちらかといえば後者なのであろう。


「あと少し大きくなるまで」と男は丁寧に眺めた。


そして、「今年の暑さは、花ごと細かくして油とニンニクを混ぜ合わせた特性ラー油が必要になる」とあごに垂れる汗をぬぐいながらつぶやいた。