今にもつぶれそうなレストランで働いている時の事だった。いっしょに働いていたレス友が、出勤するなり耳打ちしてきた。“このレストラン、来月あたりがあぶないらしいよ。”知ってる知ってる。一応、笑顔では返したものの、この先どうしたらいいものかと途方にくれているところだった。そんな時に人から聞いた、近所にある他のレストランの話。あまり良い噂は聞かないけど近所という事もあり、次の週に飛び込みで面接に行く事にした。
オーナーはチャイニーズ。店全体はオーナーの娘が仕切っている。40代半ば(たぶん)のかなりシッカリめの娘だった。話はトントンと進み、次の日からトレーニングを受ける事になった。指定された日にお店に行ってみると、つぶれかけたお店でいっしょに働いていたKが、何故かこのお店でも働いていた。知り合いを見つけた嬉しさでテンションも上がりK に声をかけたが、Kはいっこうに目を合わさない。“はて?”と思ったが、そのままトレーニングに突入した。うんうん。Kもバツが悪かったのだろう。
さて、働き始めてから1、2時間、何だか全体に奇妙な感じがした。働いているウエイトレス(K含め)全員がまるでロボットの様に動いているのだ。説明が旨く出来ないんだけど、彼ら全員が顔を真っ直ぐ前に向け、進行方向を見続け、ある一定のリズムで進んでいる。タン、タン、タン、タン。そのテンポはかなり速い。タン、タン、タン、タン。一人だけ自分流の動きをしていると、レストランの後ろの方で仁王立ちしていたオーナーの娘が手招きをして私を呼んだ。
片手指パッチン(古っ!)をしながら、このリズムに合わせて動けという。こ、こう?と、まるでダンスのステップを踏むように足早に動いてみせると、それに手の動きも加えろとの事。そして、冷蔵庫の前に連れて行かれビールのビンのつかみ方を教わる。右!(冷蔵庫を開ける)左!(ビールをつかむ)右!(冷蔵庫を閉める)ステップ!(足を1歩踏み出す)右、左、右、ステップ!右、左、右、ステップ!その練習は10分くらい続く。ようやくホールに戻れとの指示が出、みんなの仲間に加わる。後ろの方ではずーっと続いてるワン、ツー、ワン、ツー、の大きな掛け声。チータ(水前寺清子)顔負けの声量である。その、掛け声も次第にGo!Go!Go!Go!に変わり、その流れに必死について行こうとしている私の髪は乱れ、エプロンはずり下がり、靴の紐はほどけていったのである。それはお客さんの前で堂々と繰り広げられる。
息苦しいのでとりあえずステップを止め、乱れきった髪を耳に掛けると、すごい勢いでオーナーの娘が近づいて来て、むんずと腕を摑まれまたレストランの後ろのほうにまた追いやられてしまった。何事かと聞くと、“髪の毛や顔は絶対に触ってはいけない”という。はい、そうです、その通りなんです!がぁ...。そういう細かい事をちまちまチェックするために、一日中後ろのほうで仁王立ちを???しかも、パン、パン、パン、パンの手打ちリズムつき???と、もう少しで言いそうになった時、その彼女に背中をドンッと押され、ハイ、バック、バック、バック、と言う掛け声とともにまたホールに戻されてしまった。彼女の頭の中にはどうもメトロノームチップが埋め込まれているらしい。
ずーっと監視され続けた仕事もようやく終わり、帰り支度をし、ガクガクする膝を引きずりながら家へ向かう。後ろのほうから聞きなれた声がしたので振り返ってみると、仕事中に一度も目を合わさなかったKである。“ごめん、ごめん、ウエイトレス同士が話をするとクビになるんで。”...もう何も驚かなくなっていた。
そんなトレーニングも何週間か過ぎると終わりを向かえ、遂には通常のウエイトが出来る日が来た。
事務所に呼ばれ明日からのスケジュールをもらう。“えーっと、これはレストランの決まりなんですが、最初の数ヶ月はバスボーイとして働き、そのうち徐々にウエイトレスとしてやっていくようになっているんで...”
えっ!まずはバスボーイからぁ?(聞いてないよぉー)
口には出さなかったが、顔には思いっきり出てたんだと思う。下を向いてもじもじしてると、私の気持ちを察したようで、“嫌ですか?嫌ならしょうがない” とその場を離れていってしまった。これがどうやら最後の日になってしまったようだ。ちなみに同じ経験をした私の友達は、はっきり“いえいえ、ウエイトレスとしてやって行きたいのですが”といった途端、“あっ、じゃぁ結構です”と言われ、終いには大きなあっかんべ風の舌を出されたという。タカトシのトシの様に“子供か!”と突っ込みをいれたくなる今日この頃である。
【ここでうまく働いていくには】
このお店に関してはあまり助言らしい助言が無い。ただ、ただ、バスボーイとして数ヶ月がんばってもらいたいだけである。

オーナーはチャイニーズ。店全体はオーナーの娘が仕切っている。40代半ば(たぶん)のかなりシッカリめの娘だった。話はトントンと進み、次の日からトレーニングを受ける事になった。指定された日にお店に行ってみると、つぶれかけたお店でいっしょに働いていたKが、何故かこのお店でも働いていた。知り合いを見つけた嬉しさでテンションも上がりK に声をかけたが、Kはいっこうに目を合わさない。“はて?”と思ったが、そのままトレーニングに突入した。うんうん。Kもバツが悪かったのだろう。
さて、働き始めてから1、2時間、何だか全体に奇妙な感じがした。働いているウエイトレス(K含め)全員がまるでロボットの様に動いているのだ。説明が旨く出来ないんだけど、彼ら全員が顔を真っ直ぐ前に向け、進行方向を見続け、ある一定のリズムで進んでいる。タン、タン、タン、タン。そのテンポはかなり速い。タン、タン、タン、タン。一人だけ自分流の動きをしていると、レストランの後ろの方で仁王立ちしていたオーナーの娘が手招きをして私を呼んだ。
片手指パッチン(古っ!)をしながら、このリズムに合わせて動けという。こ、こう?と、まるでダンスのステップを踏むように足早に動いてみせると、それに手の動きも加えろとの事。そして、冷蔵庫の前に連れて行かれビールのビンのつかみ方を教わる。右!(冷蔵庫を開ける)左!(ビールをつかむ)右!(冷蔵庫を閉める)ステップ!(足を1歩踏み出す)右、左、右、ステップ!右、左、右、ステップ!その練習は10分くらい続く。ようやくホールに戻れとの指示が出、みんなの仲間に加わる。後ろの方ではずーっと続いてるワン、ツー、ワン、ツー、の大きな掛け声。チータ(水前寺清子)顔負けの声量である。その、掛け声も次第にGo!Go!Go!Go!に変わり、その流れに必死について行こうとしている私の髪は乱れ、エプロンはずり下がり、靴の紐はほどけていったのである。それはお客さんの前で堂々と繰り広げられる。
息苦しいのでとりあえずステップを止め、乱れきった髪を耳に掛けると、すごい勢いでオーナーの娘が近づいて来て、むんずと腕を摑まれまたレストランの後ろのほうにまた追いやられてしまった。何事かと聞くと、“髪の毛や顔は絶対に触ってはいけない”という。はい、そうです、その通りなんです!がぁ...。そういう細かい事をちまちまチェックするために、一日中後ろのほうで仁王立ちを???しかも、パン、パン、パン、パンの手打ちリズムつき???と、もう少しで言いそうになった時、その彼女に背中をドンッと押され、ハイ、バック、バック、バック、と言う掛け声とともにまたホールに戻されてしまった。彼女の頭の中にはどうもメトロノームチップが埋め込まれているらしい。
ずーっと監視され続けた仕事もようやく終わり、帰り支度をし、ガクガクする膝を引きずりながら家へ向かう。後ろのほうから聞きなれた声がしたので振り返ってみると、仕事中に一度も目を合わさなかったKである。“ごめん、ごめん、ウエイトレス同士が話をするとクビになるんで。”...もう何も驚かなくなっていた。
そんなトレーニングも何週間か過ぎると終わりを向かえ、遂には通常のウエイトが出来る日が来た。
事務所に呼ばれ明日からのスケジュールをもらう。“えーっと、これはレストランの決まりなんですが、最初の数ヶ月はバスボーイとして働き、そのうち徐々にウエイトレスとしてやっていくようになっているんで...”
えっ!まずはバスボーイからぁ?(聞いてないよぉー)
口には出さなかったが、顔には思いっきり出てたんだと思う。下を向いてもじもじしてると、私の気持ちを察したようで、“嫌ですか?嫌ならしょうがない” とその場を離れていってしまった。これがどうやら最後の日になってしまったようだ。ちなみに同じ経験をした私の友達は、はっきり“いえいえ、ウエイトレスとしてやって行きたいのですが”といった途端、“あっ、じゃぁ結構です”と言われ、終いには大きなあっかんべ風の舌を出されたという。タカトシのトシの様に“子供か!”と突っ込みをいれたくなる今日この頃である。
【ここでうまく働いていくには】
このお店に関してはあまり助言らしい助言が無い。ただ、ただ、バスボーイとして数ヶ月がんばってもらいたいだけである。
