ある日僕の隣の席でメカレンジャーの話をしているのが聞こえた。
話していたのは岡崎君たちだった。
岡崎君は野球部で勉強はあまりできなかったが体育が得意でいつも明るく楽しい話をしていたのでいつも岡崎君の周りに誰かがいた。
クラスのみんな岡崎君が好きだったのだ。
僕は「あの岡崎君やみんなも僕と同じ好きなものがある」と嬉しくなり、その会話に入って一緒に話したかった。
けれど急に会話に参加するきっかけが見つからずただただその会話を隣で教科書を整理するふりをして盗み聞きすることしかその時僕にはできなかった。
でも僕は何とかしてその会話に入って、僕もみんなと同じものが好きなこと、自分は特殊な人間ではなく同じ価値観を持っていて自分もみんなも一緒であることをみんなに知ってもらいたかった。
僕はどうすればいいか一人であれこれ考えたあげくランドセルにメカレンジャーのストラップをつけていたらそれに岡崎君たちが気づいて話しかけてくれるのではないかという作戦を思いついた。
僕は急いでメカレンジャーのストラップを色んな店に探しに行った。
小さいものだと気づいてもらえない可能性があるし、大きすぎるものをつけたらこんな大きいのをつけるなんて変な奴だと思われてしまうためちょうどいいサイズの物でなければならない。
僕は色んなおもちゃ屋やスーパーやデパートを回ったがなかなかちょうどいい僕の理想のサイズの物が見つからなかったが11件目に見に行ったゲームセンターで僕の最も理想とするサイズの物を見つけた。
僕はそのストラップをUFOキャッチャーで何回も挑戦して4200円かけてやっととることができた。
小学生のころの僕にとっての4200円はだいぶ大金ではあったが、僕はストラップをとれた達成感と満足とこれをランドセルに付けてみんなと仲良くなる計画への期待感にあふれながら、道に落としたりしないように大事にストラップを感じながら家に帰った。
次の日、そのストラップをランドセルの横に防犯ブザーと一緒につけて学校に行ったが誰も気づいてはくれなかった。
僕は気づいてもらおうと誰かの視界に入るようにわざとランドセルを机の上に置いてみたり、特に何も入っていないのにランドセルを出して何かを探しているように中身をあさるふりをしりした。
しかしそんなことをしながら3日もたったが誰も気づいてはくれなかった。
おかしいなと思いながらも1日が終わり、学校から家に帰宅するためランドセルを背負って教室を出ようとしたとき岡崎君がちょうど教室に入ってきてドアのところでぶつかりそうになった。
「ああ…ごめん。」と僕はぶつかりそうになった岡崎君に相変わらずの小さい声で言うと、岡崎君は「おう」とだけ言って教室に入り自分のランドセルを取りに行った。
そのとき、僕は岡崎君が僕のランドセルについているメカレンジャーのストラップに一瞬視線がいったのが確実にはっきりと見えた。
僕はその時の岡崎君の一瞬の目の動きですべてを察してしまった。
「あぁ、みんなは僕がメカレンジャーのストラップをつけているのを気づいているうえで別に僕に話しかけようとは思はないんだ。」
あれだけこれ見よがしにストラップをみんなに見えるようにふるまっていたのだから人数が30人ほどしかいないクラスで誰も気づいていないわけもなかったのだ。
皆はたとえ僕が同じものを好きであっても、別に僕に話しかけるほど大して僕というもの自体に興味がなかったことに気づいてしまった。
僕はこんなストラップ一つに自分の生活をどうにかしようと賭けていたことが情けなく恥ずかしくなった。
僕はそのストラップが目に入るたびに情けなく恥ずかしい気持ちになりそれに耐えられず家に帰ってランドセルからストラップを乱暴に外しゴミ箱に捨てた。
だがゴミ箱に捨ててもゴミ箱にそれが入っていると思うとそのたびによくないネガティブな気持ちを思い出してしまってしょうがない。
僕は僕の目につかないところにそのストラップと惨めな気持ちを隠して捨てようと思った。
僕の住んでいたところは田舎で家から自転車で少し行くと小さな山があり、僕は「あそこには誰も来ないだろうしあの山の少し奥のほうで捨てよう」と思った。
僕はゴミ箱からメカレンジャーのストラップを取り出し、家から自転車でその山へ行きそこから歩いて少し奥のほうまで入ってから、木々が生い茂っていてもう歩いてとりにはいけないようなほうにストラップを投げて捨てた。
その日から僕は誰かと話そうとも思はなくなったし過度に何かに期待しないようになった。
#3につづく♪♪