児童虐待防止シンポジウムの講師、二人目である渡辺氏のお話。
 
 
日本では、99%以上の子が家庭で育てられているそうです。
本来、子育てはみんなで行われてきたのが、現代では家庭が孤立する傾向にあるとのこと。
昔は、祖父母も一緒に住んでいるところが多かったし、近所付き合いもあったのが、今は母子だけで孤立しがちだということです。
そんな中で、母子の一体感が高まって、親の感心は子供に集中、責任も集中、とにかくなにかあると家庭とくに母親が責められ、だから母親はひたすら子供を守ろうとする、という状態であるそうです。
 
興味深かったのが、道徳の授業。
駅で、白い杖を持った人が立ち止まっていた、それを見てどうするか、という質問に、みーんな「なにもしない」という答えだった、ということです。
「だって、知らない人と話しちゃいけないから」という理由。
先生が、白い杖を持った人を「目が見えなくて、どちらに行けばいいのかわからない状態」と説明して、もう一度みんなに聞いても「なにもしない」という答え。
「だって、本当に目が見えないかどうかなんて、わからないから」という理由。
私はその話を聞いてビックリしました。
それだけ家庭、とくに母親が自分の子供を守ろうとして、周囲を警戒しているということです。
学校も門を閉ざして、監視カメラを付けて、守ってる。
地域への信頼がない、どころか、警戒してる。
本来はそうじゃなくて、地域の人たちが子供を守ってあげる、監視カメラじゃなくて人の目で守るという感じだったそうです。
 
よく日本人は積極性がないと言われますが、自己肯定感が低いそうです。
「自分はダメな人間だと思う」で「とてもそう思う」「まぁそう思う」を合わせると、日本人は半数以上がYES。
そんな国、他にはないそうです。
「孤独だと思う」も日本は飛びぬけて高い。
家庭の中に囲い込まれて、周囲に警戒して、監視されて…という状態で育ち、思春期で自分がどう生きていくかという問題に立ち向かった時に、どうしていいかわからずに、ただひたすら期待に応えようとする、という流れだと説明していました。
でも、「社会に役立つことをしたい」とか「誰かのために何かをしたい」というのも80%を超えているんです。
ただ「自分のことが好きだ」「必要とされている」「役に立つ人間だと思う」になると、極端に低くなる。
なので、ヤル気はあるんですけどダメなんです~って状態。
役立ち感を育むことが大切、と言っていました。
役に立つことをして、達成感を味わって、それが自己肯定に繋がっていくそうです。
 
あとは、母親の問題。
いわゆる「母性神話」が根強く残る日本では、母親が「子育てがうまくいかない」と救いを求めることに抵抗があるそうです。
それが高まって「育てにくいこの子が悪い」となる。
母親が「一生懸命やってるけどうまくいかない」と不全感を持った時に、「こうしなさい、ああしなさい」と言われると「こんなにやってるのにまだダメか」という気持ちになって「この子のせいで…」となる。
逆に「がんばってるね」「今のままでいいよ」と言われると「この子のおかげで…」となるそうです。
なんか、他のカウンセリングにも通じるような気がしますが。
つまり、子供を受容するためには、まず親自身が受け入れられる経験が必要、ということです。
なんかこれ…めっちゃわかるわぁ…。
私、自分の両親の隣に住んでいて、いろいろ面倒をみてくれるのはいいのですが、やっぱり文句もすごいというか…。
自分の親だもんで、遠慮がないんですよね。
娘を産んでから、毎日なにかしら責められてる気分です。
仕事はできる人は褒められるけど、家事や育児は、できて当たり前…だもんなぁ。
 
まとめると、家庭に閉じ込めずになるべく地域で子育てをしましょう、ということと、母親を受容しましょう、ということでしょうか。