「お前のような女、離婚だ。」

「どうせ浮気しているんだろう。」

静かに淡々と夫が言葉を繰り出してくる。

 

心の底から、グワーッと全身に湧き上がってきた喜びの感情に自分でびっくり!

的外れなことを言っている夫の言葉は全然気にならない。

 

言いたいことを一方的に告げて部屋を出ていく夫に、今しかない!と決意する。

夫の誤解を解くよりも先に離婚に同意すれば、奴隷のような生活から解放される!

慌てて追いかけて「私も離婚に同意します。」と告げた。

 

夫婦喧嘩すらしたことがない、いやすることが出来なかった私たちの離婚はこれで事実上成立。

離婚届にサインしもらって、もう一枚予備までもらって(笑)、夫はまた転勤で本社のある東京へと引っ越していった。

子供たちは進学があるため夫と一緒に行く。

 

円満離婚なので、次の新しいお母さんはどんな人がいいかしら?なんて子供たちと話していたら、俺の再婚相手を勝手に決めるなと苦笑いする夫。

今から思えば変な家族だが、今でも仲は良い。

 

一人になって家族の残飯を食べて飢えをしのいだ日々を思い出す。

もう二度とあんな目に自分をあわせない。

 

さぁ、本格的に仕事に邁進するぞーっと思っていたところに次の出来事が降りかかってくる。

絶対に受けてはいけないとあれほど言っておいたのに、部長の私が知らない間に社長が採用した新人営業マンが勝手に大手ECサイトに挨拶にいって契約をしてきてしまった!

例の納期までひと月しかない案件だ。

しかも、お買い物金額に応じてポイントを付与するポイント制導入をわずか100万円で契約してきてしまった!

 

頭を抱えているところへ実家から連絡がきた。

母が倒れた。寝たきりになり介護が必要だ。

「助けてー!もう共倒れしそうなの。すぐ帰って来て。」

妹と父からのSOS要請に大急ぎで退職手続きをして、あいさつ回りを済ませる。

 

起業して、一人になってさぁこれからっていう時に立て続けに起こった出来事に、これは守護天使たちの仕業ね、と思う。

さて、介護生活の始まりか。

今度はどうやって生活費を稼ぐかな、どうやって生きていこうか?