『聖夜のムムム』
〝入口〟と〝出口〟の両方から己の中心部へと向かった…
[フムフム、不無不無。君がそこを〝入口〟と認識して、もう片方を〝出口〟と認識しているならば…君はまだまだ意識の領域から抜け出せてはいないということだ]
[シックスセンス…なまぬるい、君は俗世間というものに染まっているだけだ]
[たとえ、八種の識を踏まえたとて、単にそれは主観であり、客観ではない]
〈心頭滅却〉
[雑念を排しても、やさしさだけはけせぬようだな]
[おぬしのそのやさしさはまやかしで、客観的な慈愛ではない]
錯覚の渦中、心のよりしろを見失った…
刹那と那由他が交差した迷いの時空を進んでいたのであろう
〈唯ひたすら、子羊役に徹するしか術はないのか〉
そうすることで瑕が癒える、いや消えるとさえ思い込んでいた
[〝南無三、雑念が入った〟と、君の叫びが手のひらまで届いているぞよ]
〈無心になって無神論者に徹するしかないのか、一神教でも多神教でもまずいのか!ムムム、〇無無、〇〇無、〇〇〇…〉
感無量が無量大数を超越し…
そして不可説不可説転への未知の領域に足を踏み入れた
そう、それは解脱の瞬間だった…
八識説の概念図の一例 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)⦅唯識⦆より