読者のみなさまには、私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございますひらめき電球

・・・おぉ~このフレーズでのご挨拶は久しぶり~♪


ここ3つの記事が全て”お話し”の記事とは、これは異常事態ですね・・・あせる

イタキス恐るべしです・・・叫び

一度は海の底まで沈み切ったキューブのモチベーションをここまでアップさせてくれるのですからラブラブ


読者のみなさまにも、とても喜んでいただけているようで、さらに気持ちがアップします。

さすがに、以前のペースとまでは行きませんが、わずか1週間で次のお話が書けるとは、自分でも正直ビックリしているところです・・・にひひ



さて、今回のお話は、前記事のイタキス1の最終話から、一気に飛んでイタキス2の第12話の隙間のお話しとなっています。

イタキス通の方なら、おそらくタイトルをご覧になっただけですぐにお分かりになるとは思いますが、看護師国家試験に合格した琴子が、直樹に報告するため神戸に行くエピのその後を書いてみました。


これぞ正真正銘、キューブの想像&妄想による、隙間のお話しです・・・ひらめき電球

さて、少しは筆の鈍りもほぐれて来たでしょうか・・・


どうか、お楽しみいただけますように・・・音譜



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    イタキス2 《12話》 より

   ~終電のナイチンゲール~



その朝・・・オレは右腕の軽い痺れと、懐かしく優しい香りで目覚めた。

昨夜、オレを翻弄したナイチンゲールは、小さな寝息をたてながらオレの腕の中で眠っていた。


こんな風に琴子を腕に抱いたまま目を覚ますのは、いったい何か月ぶりだろうか・・・
オレは、まだ起きる気配のない琴子の寝顔をしばらく眺めてから、そっとその額に唇を押し当てた。


「うーん・・・入江君、大好き・・・」


琴子の寝言も、このセリフを直に聞くのも久しぶりだ。


―知ってるよ・・・


オレは、琴子の髪を撫でながら声にならない声でその告白に答えた。


ふと視線を上げると、ベッドサイドにたたまれて置かれている白いナース服が目に入った。
まだまだ寒い春先の夜道を、こんな薄いナース服一枚で歩いて来た琴子の姿を思い出して苦笑する・・・


―おまけにその格好で新幹線に乗って来たっていうんだからな・・・



まったく、いつまでたっても琴子の行動はオレの想像を遥かに超える。


琴子はただオレに会いたい一心で前へ進むのに、なぜか真っ直ぐに来ることが出来ないんだ・・・
だからこそ、やっと会えた時の喜びは何倍にも膨らんで、まるで何かの褒美のように琴子を幸せにするんだろうが、そのたびに振り回されるこっちはたまったもんじゃない・・・
正直に言って、昨夜の出来事では、さすがのオレも生きた心地がしなかった。


迎えに行った新神戸の駅で、乗っている筈だった新幹線から琴子が降りて来なかった時の驚き。
その新幹線が遅延していたことで、もしやと思い駅員を捕まえて理由を尋ねると、ひとつ前の新大阪駅で急病人が搬送された一件に琴子が絡んでいることがわかった時の脱力感。
どうやら新大阪に取り残されたらしいということまではわかったが、携帯も繋がらず手も足も出ない状態・・・


しかし、琴子なら何があっても神戸にたどり着こうとするだろうと思いながらも、ただ待っていることしかできない焦燥感と不安な気持ちはつのるばかりだった。
そして、いよいよ終電の時間が過ぎ、やっと道の先にそれらしい白い人影が見えた時に心底安堵した気持ちと、同時に込み上げてくる腹立たしさ・・・


オレは、心配させられた仕返しに後ろから驚かせてやろうと、酔っぱらいの振りをしてベンチに横になるとコートを被って琴子が前を通り過ぎるのを待っていた。


ところが・・・


―まさか、こいつが話しかけてくるとは思わなかったよな・・・


”酔っぱらいのおじさん”として、さんざん世迷言を聞かされた挙句、オレだとわかった後にも同じ話を”入江君”として聞かされた。
それでも、やっとこの腕に琴子を抱きしめた時には、オレもこの瞬間を待っていたのだと実感した。
込み上げてくる愛おしさに負けて、それまでのイライラも憤りもあっという間に萎んで許してしまっていた・・・


―まったく、お前はズルいよ。オレだってオペ続きでクタクタだったんだぜ。


ここ3日程の仕事のハードさは、神戸に来て1年が過ぎた中でも群を抜いていた。
午前と午後にほとんど息つく暇もなくオペに駆り出され、その隙間を縫うようにICUの患者のケアと外来もこなした。
もちろん、帰宅することもできず仮眠室とICUと医局を往復する毎日。
そんな中で、やっと全てに目途がついて、今夜こそ帰れると白衣を脱いだタイミングに、まるで待ち構えていたようにかかってきたオフクロからの電話・・・
琴子が、こちらへ向かっていると聞いた時は、一瞬頭が真っ白になって天を仰いでいた。


「おっと、いけね!・・・オフクロで思い出した」


オレは、うっかり物思いに耽っていて、昨夜オフクロからの電話で、大事な用事を言い渡されていたことを思い出した。
ベッドサイドに置いた目覚まし時計を見ると、すでに8:00になろうとしていた・・・
オレは、眠る琴子の頭の下からそっと腕を引き抜くと、もう一度琴子の額にキスをして起き上がった。


「うーん・・・わっ!入江君!!」


ベッドに背中を向けて着替えていると、琴子が目覚めて声をあげた。


「おはよう。やっと起きたか」
オレは、振り返りながら声をかけた。


「お、おはよ・・・なんだか起きて目の前に入江君がいるのが不思議・・・私、昨日ちゃんとここへ来られたんだよね~ああ、良かった!」
「ああ、大騒動だったけどな」
オレが呆れ顔を向けても、琴子は両手を上げて体を伸ばしながら上機嫌だ。


「えへへ。いろいろご迷惑おかけしましたぁ・・・」
「ふん。いつものことだろ」


東京にいた時なら、毎日のように交わされていたこんな会話すら、今のオレにとっては心地いい・・・


「あっ、コーヒー入れるね」
すでに着替え終わったオレを見て、琴子がベッドから起き上がる・・・
オレのスウェットを着た琴子が、長すぎる裾を引きずるようにしてキッチンへ向かう後ろ姿に思わず笑いが込み上げた。
しかし、オレはハンガーにかかったジャケットを羽織りながら琴子を止めた。
「おい、その前に少し出かけて来るから、コーヒーはその後にしてくれ」


「えっ?・・・こんな早くに?」
「早くって、もう8時過ぎてるぞ」
「ホントだ!・・・で、どこ行くの?」
琴子は、時計を見て驚いた顔をしている。


「お前が昨日新幹線の中に置き去りにした荷物を取りに行くんだよ」
オレは、思いっきりため息をつきながら答えた。


「えっ?・・・あっ!・・・そうだ!私の荷物!携帯も!!・・・どうしよう!!」
「だから、その荷物は今駅前のホテルにあるんだよ!!・・・」
「えっ?なんで?・・・」
突然昨夜の出来事が蘇ったのか頭を抱えて慌てだした琴子は、オレの言葉に不思議そうな顔を向けた。


「昨夜お前が寝た後にオフクロから電話があったんだ・・・昨日お前が乗ってた新幹線で、隣の席にいた人覚えてるか?」
オレは、昨夜のオフクロの剣幕を思い出して、肩をすくめながら聞いた。


「うん。スーツ着た女の人だった・・・あっ、その人も新神戸で降りるみたいだったなぁ。私が切符を見てたら一緒ですねって声かけられたから・・・」
琴子は、昨日のことを思い出すように瞳を上にあげながら答えた。


「そうか。その人が新大阪でお前が戻ってこなかったから、新神戸でお前の荷物を持って降りてくれたらしいんだ。それでお前の携帯の履歴からオフクロに電話があって、出張で泊まってるホテルのフロントに荷物を預けてくれてるらしい・・・」


「わあ、すごい親切な人だね!!・・・もっといろいろお話しすればよかった!」
事の顛末を知って、琴子が拍手しながら感嘆の声をあげる・・・


「感心してる場合じゃねえぞ!・・・いろんな人に迷惑掛けやがって!」
「うう、ごめんなさい・・・」
オレの一喝に、琴子の勢いが一気に萎む・・・
さらにオレは、玄関で靴を履きながらだめ押しでもう一言加えた。
「とにかく、そんな格好じゃどこにも行けないだろ?・・・オレが戻ってくるまで、お前はここで大人しく待ってろ!」


大きすぎるオレのスウェットの袖も裾も何重にも捲り上げた自分の格好を見おろして、琴子が情けない表情になる・・・オレは、そんな琴子にそら見たことかと視線を投げてから外に出た。




通勤時間は過ぎたとはいえ、観光客などで賑わう駅前を通ってオフクロに言われたホテルに向かう。
急に春めいてきた暖かで爽やかな風を気持ちいいと感じながら、自然と顔が緩むのは、それだけが理由でないことは良くわかっていた。


神戸での1年間は、緊張と忙しさだけであっという間に過ぎた。
研修医として学ぶことは多く、医学だけに没頭できる環境は確かに充実していたのだろうと思う・・・
夢を見つけて、それを掴むために努力している自分は、あの将来に何の期待も希望も持っていなかった頃のオレとは比べ物にならないほどに生きていることを実感できていた。


しかし、ここには琴子がいなかった・・・


琴子がどれほど嘆き悲しむかを十分に分かっていて、それでもこれが最善の方法だと信じて、1年間の別居を決めた。
今でも、その選択は間違っていなかったと思う。


それでも、目覚めた時、玄関を出る時、コーヒーを飲む時、夜ベッドに入る時・・・

いつも言い知れぬ物足りなさを感じていた。
自分から突き放しておいて、それでもさまざまな場面で浮かぶ愛おしい面影に、オレが本当はどれ程焦がれていたか・・・
それは、今琴子がいるだけでこんなにも満ち足りた気持ちでいることが、はっきりと証明していた。




オレは、目的のホテルで琴子の荷物を受け取ると、荷物を預かってくれたという女性について尋ねた。
しかし、もうすでに出張先に向かってしまったということで、オレは礼を伝言してすぐにマンションに戻った。




玄関の扉を開けると、コーヒーのとてもいい香りがした。


「おかえり~丁度今入れ始めたとこだよ・・・ちょっと待ってて」
琴子は、ちらりとこちらを見ると、すぐに手元に視線を戻しながら言った。


オレは、琴子の荷物を部屋の隅に置くと、ソファに腰かけて琴子がポットを傾ける姿を見つめていた。
あとひと月もしない内に、本当にこんな生活が始まるのだろうか・・・
大家族での賑やかな生活か一人暮らしの経験はあっても、琴子と2人きりの暮らしは未知の領域だ。
本人に言ったらがっかりするだろうが、家事について琴子には多くを望んではいない・・・
それは、あきらめているからというわけでなく、オレにとっての琴子の存在意義はそんな次元の問題ではないということだ。


―それでも、お前はがむしゃらにがんばろうとするんだろうな・・・


「ん?・・・何笑ってるの?・・・」
琴子がカップにコーヒーを注ぎながら、首を傾げている。


「いや別に・・・それよりお前、今夜の新幹線で帰るんだろ?」
オレは、笑いをかみ殺すと、差し出されたカップを受け取りながら聞いた。


「ああ、そうなんだよね~学校に合格の報告にも行かなきゃならないし、配属先の申請もあるし・・・せっかくたどり着けたんだから、もっと入江君と一緒にいたいのになぁ・・・」
琴子は隣に腰かけると、甘えるようにオレの肩に頭に乗せながら言った。


「もう少しの辛抱だろ・・・やることちゃんとやらないとここへ来れないぞ」
「うん。そうだね、やっと入江君のお手伝いがしたいっていう夢がかなうんだもんね!・・・っていうか、入江君今日は病院は?」
うっとりと話していた琴子は、急に頭を起こすとオレの顔を覗き込んだ。


―ふっ・・・何を今さら・・・


「休みにしてもらったよ・・・ちょっと様子が気になる患者もいたんだけどな・・・」
「それって、私のせいだよね?・・・」
琴子が、苦笑いを浮かべながら聞いた。


「はあ?・・・他にどんな理由があるっていうんだ?」
オレは、呆れ顔で聞き返した。


「そ、そうだよね・・・ごめん・・・」
琴子はシュンとしてしばらく考え込んでいたが、不意に何かを決心したように立ち上がると荷物をベッドの上に乗せて着替えを出し始めた。


―おいおい、お前ってやつは、ホントに単純すぎるだろ・・・


「おい琴子。何やってんだ?」
「うん。やっぱり私すぐに帰るよ・・・こうして荷物も戻って来たし、入江君にも報告できたし、だから入江君は患者さんのところに戻った方がいいよ。せっかく看護師になれても、こうやって入江君の邪魔してたら意味がないもん」


―ばか。何言ってんだよ・・・何のために・・・


オレは、琴子の背後に立つと、その動きを止めるように手を前に回して抱きしめた。
ずっと、こんな風にしたかった。
琴子は、オレの真意を量りかねているのか、戸惑いを浮かべた顔でオレを見上げた。

琴子が何か言おうとして顎を上げる・・・しかし、オレはそれを阻むように、その唇に深くくちづけた。


それから、オレは目を閉じたままの琴子の耳元に囁いた。
「そうか、帰るのか・・・残念だな・・・帰る前に何かうまいもんでも食って、国家試験の合格祝いでもと思ってたんだけどな・・・」


「えっ?・・・」
琴子は、腕を振りほどいてこちら向くと、大きな目をさらに広げてオレの顔をまじまじと見上げた。

背伸びをして「ホント?」と聞いた顔は、すでに笑顔に変わっていた。


「ああ、別に無理言って休んだわけじゃないし、もう2週間も休みなしだったんだ。文句も言われないさ・・・」


琴子の顔がこの上なく幸せそうな表情を作る・・・
そして、飛びつくようにしてオレに抱き付くと、やっと待ちわびた言葉を口にした。
「入江君、大好きだからね!」


もちろんオレも答える・・・
「ああ、知ってるよ・・・」




それからオレと琴子は、街に出た。


「ねえ、入江君。お願いがあるんだけど・・・昨日みたいに手を繋いで入江君のポケットに入れて欲しいな・・・」
琴子の望みは、いつもささやかで、どこか照れくさい・・・
それでも、今日ばかりはオレも何も言わず、つないだ手をポケットに入れて歩いた。
すっかりデート気分の琴子は、昨夜の騒動など忘れたかのように、東京行きの新幹線に乗るその時まで終始はしゃいでいた。



「入江君!待っててね・・・」

「ああ、待ってる・・・今度は迷わずに来いよ」

「もう!!・・・」




久しぶりの2人きりの時間は、十分にオレの心を癒し、琴子を幸せで満たしていた・・・
もちろん、お互いあと少しで、こんな時間も日常のひとコマになるものだと信じて疑っていなかった。
オレは2年目の研修医として、琴子は新人ナースとしてこの地で共に働き、初めての2人きりの生活が始まるのだと・・・



しかし、琴子が再び神戸にやってくることはない・・・
そして、オレが東京へ帰る日もそう遠いことではないことを、その時のオレ達はまだ知らなかった。



                                            END


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さて、いかがでしたでしょうか・・・はてなマーク


キューブ的には、いくつかの謎に包まれていたこのエピ・・・

たとえば、新幹線に置き去りにされた琴子の荷物はどうなったのか・・・とか。

直樹も、いくら徹夜続きだったとはいえ、本当にベンチで寝ちゃっててもし琴子が来たことに気づかなかったらどうするつもりだったの・・・とか。

奈美ちゃんエピ以来、琴子は一度も神戸に行かなかったのか・・・とか。


台湾版では兵役という、日本とは根本的に状況が違っていたのでそこまで考えはしなかったのですが、今回日キス2でこのエピを観て、原作で読んだ時に思った疑問が蘇ってきてこのお話が出来上がりました。


まぁ、結構都合よく創作しちゃいましたけどね~にひひ

お楽しみいただけたでしょうか・・・はてなマーク



さて、関東ローカルでのイタキス2の放送も、第13話まで進み、直樹が神戸から帰って来たようですね。

残すところあと3話・・・日キスはいったいどんなフィニッシュを決めるのでしょうか。

(・・・って、実はキューブはもうレンタルで視聴済みなんですが・・・( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ)


とにかく、このモチベーションが維持できている間に、もう少しがんばりたいなって思ってます。

まだ、いろいろ考えているんですが、果たしてどこまで実現できるか・・・

まさに神のみぞ知る・・・ですねひらめき電球


どうか、応援よろしくお願いします・・・ニコニコ

そして、次回もどうぞお楽しみに・・・音譜



                                           By キューブ