読者の皆さまには、いつも私のお話しを楽しみにしてくださいましてありがとうござます![]()
1週間ぶりのご無沙汰です・・・
さて、After storyの第2作目は、連載となります。
一応、予定としては3話完結をめざしていますが、これまた得意のキーボードまかせの見切り発
車となっていますので、どうなるかはっきりとはわかりません(≧m≦)ぷっ!・・・
タイトルをご覧いただければ、このお話しのオチもある程度は想像できると思います・・・なればこそ、
そこへ辿りつくまでのプロセスをお楽しみいただければと思っています。
そして、もうひとつ・・・
前作に引き続いて、この作品も3人称のお話として書き始めました。
キューブのこれまでのお話しはほとんどが1人称で書かれているので、それに慣れていらっしゃる
皆さまには違和感があるかもしれませんが、今回のベースはコミックということで、今まで書いてき
たお話しの延長にはならないようにと思ってのキューブの工夫だとご理解ください。
まぁ、そう言ってる割には一条先生が登場するけどね~``r(^^;)ポリポリ
キューブ的にはまったく新しいモノを書いている感覚です・・・ただ、やはりそこにもキューブなりの
ポリシーとオリジナリティーも加味しないとね(*^^)v
・・・ってことで、結局はいつものやりたい放題ですが、お楽しみいただければ幸いです
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~”愛してる”のチカラ~ ≪1≫
-<1>-
「ああ、1週間ぶりだ・・・」
琴子は、病院の門の前で立ち止ると感慨深くつぶやいた。
インフルエンザの大流行で大忙しだった中、突然貧血で倒れたのが1週間前のこと。
その貧血が風邪や過労からのものではなく、実は妊娠だったとわかったのはその翌日のこと・・・
―うふふ・・・私のお腹には入江君の・・・
琴子は、ふとするとにやけてくる顔をぐっと引きしめながら、再び歩き出した。
すると、すぐに背後から耳慣れた声が自分を呼ぶ声と勢いよく走ってくる足音が聞こえてきた。
「やだ!琴子!・・・琴子じゃない!」
「あっ!幹ちゃん、おはよう~なんか久しぶりだね~!」
琴子は、いつもと変わらない笑顔を桔梗幹に向けて振り返った。
「にっこり笑って”久しぶりだね”~じゃないわよ!貧血で突然倒れてから1週間も連絡もよこさな
いでどうしたのよ?もう体はいいの?・・・看護師長に聞いても体調が悪いとしか聞いてないって言
うし、心配してたのよ!!」
幹は、この1週間のもやもやをぶつけるように琴子に向かってまくし立てた。
「ご、ごめん幹ちゃん心配かけて。体はね~大丈夫。でも、今日と明日で挨拶と引き継ぎをしたら
また10日間くらい休むことになりそう・・・」
琴子は、なんとも歯切れの悪い言い方で幹に言葉を返した。
「えっ?・・・どういうこと?」
幹が、わけがわからないと言った顔で琴子を見ると、琴子はおもむろにポケットに手を入れて携帯
電話を取り出すとその画面を幹に向けた。
「な、なによ・・・」
幹は、目の前に突き出された携帯の画面をのけ反るようにしながら覗きこんだ。
そこに写っていたのは、黒い背景の中に浮き上がった扇形をしたモノクロの不鮮明な画像・・・
「ちょ、ちょっとこれ・・・エコーの写真じゃない!!」
「うん!」
「ってことは、あ、あ、あ、赤ちゃん???」
「えへへ~あたり~!」
琴子は照れた笑顔で幹を見上げた。
幹は、絶句したまま携帯の画像と琴子の顔を何度か交互に見た後、次の瞬間には両手を広げて
琴子を抱きしめて叫んでいた。
「きゃあ~~!!琴子おめでとう~!・・・あんたもとうとうママなのね~これで一人前の女よ~!」
「あ、ありがと幹ちゃん・・・で、でもちょっと声が大きいよ・・・」
琴子は、出勤時間ということもあって次々と横を通り過ぎて行く病院のスタッフたちの視線にバツの
悪い笑みを返しながらつぶやいた。
-<2>-
「おい、入江・・・お前随分と水くさいじゃないか!」
夜勤明けで医局にいた直樹に、突然西垣医師から声がかかった。
「なんのことです?・・・」
直樹は、整理していたカルテから目を離すことなく聞き返した。
「琴子ちゃん妊娠したんだってな?・・・」
「えっ?・・・」
直樹は、思わず振り返った。
「おっ?何で知ってるのか?って顔だな?・・・今外科病棟のナースステーションじゃ琴子ちゃんが
来てて大騒ぎだぞ。」
「そーですか・・・まあ、そういうことです」
「おいおい、それだけか?一応俺はお前の上司なんだからちゃんと報告しろよ。それとも照れてん
のか?・・・お前でも照れるのか?」
西垣医師の半ばからかうような言い方に、直樹はちらりと視線を向けると「今忙しいんです」とだけ
答えた。
「まったく・・・可愛げのない奴だな・・・おめでとうを言ってやる気も失せる・・・まあいいか、あはは」
西垣医師は、いつものことだと言うように呆れながら仕事に戻って行った。
―琴子、来たのか・・・
直樹は、今朝仮眠室で見た琴子からのメールを思い出していた。
<入江君おはよう。大分調子がいいから今日は病院に行くね。師長に報告したら入江君のオフィ
スに行きます>
直樹は、残りのカルテを急いで仕上げると医局を出て自分のオフィスに向かった。
予想通りだったとはいえ、どこか実感の湧かない琴子の妊娠・・・
いや、琴子の妊娠自体は、琴子が貧血で倒れたこと、エコーで見た小さな命の画像、尿検査の
結果からも客観的に実感することができていた。
しかし、これが自分のこととなるとどこか不確かで、父親になるという実感も自覚もまったく湧い
ては来ない。
ましてや、なまじ医者であるばかりに、目に見える症状や数値にばかりが気になって、結局はいま
だに琴子に優しい言葉のひとつもかけてやれていなかった。
―医者である前に父親なんだ。
いくら言い聞かせても、それは他人事のように今はまだ直樹の心の中を通り抜けるばかりだった。
-<3>-
「では、失礼します・・・」
直樹は、部屋の中に一礼すると”院長室”と書かれた札の付いたドアを閉めた。
「師長さんにも院長先生にも報告できたし、これで今日は帰ろうかな。お義母さんも心配してるし・・・」
直樹と一緒に院長室から出て来た琴子が言った。
「ああ、引き継ぎは明日でも大丈夫だろ?・・・荷物はオレが持って帰ってやるからオフィスに置い
ておいてくれ」
「うん、ありがと・・・入江君、なんだか優しいね」
琴子がはにかみながら言うと、直樹はふんと鼻で笑って廊下を歩き始めた。
2人がラウンジの前を通りかかると、丁度昼時なのか仲間のナース達が食事をしているのが見えた。
琴子は、仲間たちが気付いて手を振っているのに、手を振り返して答えながら直樹に聞いた。
「入江君、お昼ご飯は?」
「オレは、まだ仕事が途中だから終わらせてからにする・・・お前は行けよ。またあとでな」
「うん。じゃあ、後でオフィスに行くね」
琴子が加わったテーブルは、ランチタイムで賑わうウンジの中でもひときわ盛り上がっていた。
「あらためておめでとう、琴子。ホントあんたがママだなんてピンとこないけど、赤ちゃん楽しみだわ」
「ありがと、幹ちゃん」
「おめでとう琴子さん。なんだか自分のことのように嬉しいわ。仕事はしばらくお休み?それとももう
辞めちゃうの?」
「一条先生もありがとうござます。・・・妊娠初期で無理しちゃったので、ちょっと様子を見ながら、でも
ちゃんと復帰したいと思ってます。とりあえずは10日後にもう一度検診に来てからかな・・・」
「そう・・・大事にしてね・・・」
馴染みの仲間たちとの楽しい会話。
通りかかるスタッフたちからも次々と祝福を受けて琴子は幸せだった。
「ずっと家にいたから、今日はなんだかたくさんしゃべって喉が乾いちゃった!・・・ちょっとお水取っ
てくるね・・・」
琴子は、コップを手に立ちあがった。
ラウンジの端にセルフサービスで水とお茶が汲めるコーナーがある。
琴子は、持っていたコップをレバーに押し付けて水を半分入れるとまずその場で一息に飲み干した。
そして、さらにもう一杯汲もうとした時、唐突にその声は聞こえて来た・・・
「へえ~妊娠したんだ?・・・よかったじゃない。」
―ん?・・・誰か私みたいに赤ちゃんできた人なのかな・・・
ふと聞こえて来た会話に興味を覚えた琴子は、あたりを見回して声の主を探した。
すると、冷水機の置かれているコーナーの横に太い柱があって、その向こうのテーブルにナース
キャップを付けた頭が見えた。
―あの人たちかな?・・・どこのナースだろ・・・
琴子は、もし知っているナースなら、今の幸せな気持ちを共有できるような気がして、声のしたテー
ブルを遮っている柱に近づいて行った。
ところが、次に耳に飛び込んできた言葉が琴子の足を止めた。
「そう?・・・でもさ、相手はIQ200の大天才よ・・・私なら恐くてそんな人の子供産めないわ」
「どうして?・・・」
―入江君のこと?・・・
「考えてもみなさいよ。産まれた子が同じように天才ならいいわよ。でも凡人だったら?・・・それっ
て確実に自分の遺伝子のせいじゃない?」
「なるほどね・・・」
「だから、そんな責任重大な妊娠は恐くてできないって言ったのよ・・・」
「あはは・・・妙に納得!」
―責任重大?・・・
琴子は柱にもたれながら見知らぬナース達の言葉を頭の中で反芻していた。
そして、なぜか彼女達と同じように妙に納得してしまっている自分を感じていた。
「ちょっと、琴子ぼーっとしてどうしたの?・・・ワタシ達、もうお昼休み終わりよ」
不意に桔梗幹の声が聞こえて来て琴子は我に返った。
目の前に空の食器の乗ったトレーを持った桔梗幹が心配そうに琴子を見ていた。
「ああ、そっか・・・」
琴子は、持っていた空のコップを握りしめながら答えた。
「琴子?大丈夫?・・・なんだか顔色悪いわよ・・・」
「えっ?・・・そ、そう?・・・久しぶりに外に出て疲れちゃったかな・・・私も入江君のオフィスに寄っ
て帰らなきゃ。幹ちゃん、またね・・・」
琴子は、桔梗幹の不審げな顔に向かって、取り繕うように答えながら少しひきつった笑顔を返す
が精一杯だった。
そして琴子は、直樹のオフィスへ向かって歩きながら、微かな痛みとともに漠然とした不安が胸
の中に広がっていくを感じていた・・・
つづく
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて・・・いかがでしたか・・・
まずは、先のお話への伏線を散りばめたプロローグといったところですね・・・
楽しく明るく始まった割には、最後のカウンターパンチに、次への期待を膨らませていただけたら
と思います・・・
やっぱり小さくてもそこに「悲劇」が存在しなければ、ハッピーエンドは成立しませんからね・・・
久々の連載・・・「つづく」の瞬間にキューブの思う壺にはまってくれてたら嬉しいんだけど( ̄▽ ̄) ニヤ・・・
・・・ってことで、次回もどうぞお楽しみに![]()
By キューブ
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