読者の皆さまには、いつも私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございますひらめき電球


随分とお話はご無沙汰していてスミマセンでした。


さぁ、今年もキューブサンタの登場ですサンタクロース

今年は一日早い登場となりましたが、(とは言え、日付的にはすでにイブですが・・・)その分たっぷりとクリスマ

ス気分に浸っていただければな~と思います。


そして、琴子のBirthdayの「琴子パパ」、直樹のBirthdayの「チビ」、結婚記念日の「一条紗江子」と続い

てきました、第三者目線による特別な日のお話は、このクリスマスストーリーが集大成となります。


さて、今回の主役として登場するのは誰でしょうか・・・!?

どうか、お楽しみいただけますように・・・音譜


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


   クリスマスプレゼント・ストーリー

   ~この聖なる夜に・・・~



「メリークリスマース!!」


グラスが軽くぶつかり合う音が響いて、その後にお決まりのクラッカーが弾けた。


「お義母さ~ん!これすごく美味しいですぅ~!」
「あら、そう?・・・これはね~新作なの~琴子ちゃんとお腹の赤ちゃんのためにと思って作ったのよ~

嬉しいわ!」
「おばさん!ホントに美味しいですね~私も作ってみたいな」
「まあ、好美ちゃんたら、裕樹のお嫁さんになったらすぐに教えてあげるわよ~早くいらっしゃい!」
「ええ~そんなぁ~」


―まったく、母さんの奴、何言ってんだ・・・


僕は、好美が頬を赤らめてこちらをチラリと見た視線に呆れ顔を向けてすぐに目を逸らした。


逸らした視線の先には、先端に大きな星の飾りを光らせながら大きなクリスマスツリーが赤や緑の電

球を点滅させていた。
今日は、クリスマスイブ。
今年は父さんの会社のクリスマスパーティーの日程と重なることもなく、家でパーティーをすることに

なった。
母さんと琴子が朝からはりきって準備をしていたのは言うまでもなく、昼過ぎからはいつの間にか母さ

んや琴子に呼ばれていた好美も加わって、キッチンからは絶えることなく楽しげな声が聞こえていた。


そして、夕方には早くに会社を引き上げて来た父さんも加わり、当然大学が冬休みの僕も無理やり参

加させられて入江家の賑やかなクリスマスパーティーが始まった。


僕は、乾杯の後すぐにリビングのソファに移動すると、ダイニングテーブルに並べられた料理を囲ん

で賑やかに騒いでいる女たちを眺めながらため息をひとつ付いた。


「おいおい裕樹、そんな露骨にため息をつくもんじゃない。見てごらん、あの3人の楽しそうな様子を・・・

女が幸せだとその家庭は円満なんだぞ。」
父さんが、僕を見て笑いながら言った。


「そんなことわかってるよ・・・だから僕だってこうしてここに座ってるじゃないか・・・」
僕は、苦笑いを浮かべながら、少し抗議するように答えた。
すると、父さんはさらに笑いながら「それもそうだ」と相づちを打つと、急に声を低くして僕に耳打ちした。
「ところで直樹から何か連絡は来たのか?・・・」


「さあ、僕のところには来てないよ」
僕は、反射的に琴子の顔を見つめながら答えた。


そう・・・僕達とは生活のリズムが違うアイちゃんおじさんは抜きにして、こんな日に当然いるべきお兄

ちゃんが今はここにいない。


―あっ、まただ・・・


琴子が、母さんと好美を気にしながらこちらを向いた。
いつも以上にはしゃいでいる琴子が、時折リビングに視線を向けては寂しそうな表情を浮かべている

ことに僕は気付いていた。
今も、まるで僕を見たのかと思う角度でこちらを向いたのに、その視線はほんの少し僕からずれて、

ソファの誰もいないところを見つめていた。


本当なら、今頃僕とお兄ちゃんはこのソファに並んで座って、交互にため息をついていたに違いない。
でも、結局お兄ちゃんは、今日の午後、担当患者の様態が悪いという呼び出しの電話で病院に行っ

てしまった。
慌ただしく支度をして出ていこうとするお兄ちゃんを、琴子は半べそをかきながらも何も文句を言わず

に見送っていた。それは、何を言っても仕方がないと十分にわかっているからなのか、何か言っても

相手にしてもらえないとあきらめていたからなのか・・・
お兄ちゃんも、普段なら無駄とわかっていても何かと抵抗する琴子が、今日に限ってあまりに大人し

くしていることが気になったのか、「様子を診てくるだけだからすぐ帰る」とひと言残して出ていった姿を

僕はちょっと驚きながら見ていた。


―まったく、あんなこと言っていかなきゃいいんだ。


ここからみんなの様子を見ているとよくわかる。
母さんも父さんも、好美ですらさりげなく時間を気にしていた。
もちろん僕も何度となく傍らに置いた携帯電話の時計表示を確認していた。
おかしな話だが、この家はいつからか琴子を中心に回るようになった。
家の中に笑い声が絶えず聞こえていること、家族でたくさんのことを語り合うこと、特別な日をみんな

で過ごしたいと思うこと。
小学生の頃から、琴子が家にいる生活をしてきた僕には、そんなことは鬱陶しほどに当たり前のこと

だと思っていた。
でも、少し大人になった今、本当は琴子が来た時からその「幸せ」という温かいものがこの家の中に溢

れるようになったのだと気付いた。


いつの間にか、僕の前のリビングテーブルにケーキの乗った皿が置かれていた。
顔を上げると好美が心配そうな顔で僕を見降ろしていた。
「なんだよ・・・」
僕は、好美に言った。


「このケーキ食べたらお開きだって。お兄さん、帰ってこられなかったね・・・琴子さん、気にしてない振

りしてるけどやっぱり時々寂しそうな顔してた」
好美が、ダイニングで母さんと話している琴子を見ながら言った。


「仕方ないさ、お兄ちゃんはそういう仕事をしてるんだ・・・琴子だってわかってるだろ」
僕は、わざと素っ気なく答えた。


「うん、それはそうだけど、琴子さん、お腹に赤ちゃんがいることがわかってからイベント事の時には必

ずお兄さんと過ごすことにこだわってたから、ちょっと可哀そうだなって思って・・・」
「えっ?・・・なんだそれ・・・」
僕は、初めて聞く話しに思わず好美の顔を見た。


「あれ?知らなかった?・・・来年には赤ちゃんが生まれて家族が増えるでしょ?だからお誕生日もク

リスマスもお兄さんと2人で過ごせるのって今年が最後じゃない?・・・だから必ず特別な日は一緒に

いたいって琴子さんが言ってたの・・・なんだか琴子さんらしいなって思わない?」


―なるほど、そういうことか・・・


僕は、お兄ちゃんの出かける間際のセリフの意味が初めて分かった気がした。
お兄ちゃんは、琴子のそんな気持ちをわかっていたんだ。


―まったく、みんな琴子に甘すぎるよ!


そう・・・本当はそう思ってる僕ですら・・・
「まったく!!」
僕はわけもなく悪態を付きながら携帯電話を手にするとお兄ちゃんにメールを打った。
<琴子が今にも泣きそうな顔でお兄ちゃんを待ってるよ。こっちはいい迷惑だから連絡くらいしてやって>
琴子に目をやると腹を抱えて笑いながら母さんと何か話していた。
それでも僕はためらうことなく送信ボタンを押していた。




「わあ!ホントですか?・・・やった~!」
不意に琴子の大きな声が聞こえて、僕と好美は顔を上げた。
すると、母さんが立ち上がって少し声を張り上げて言った。
「これからみんなで駅前のクリスマスイルミネーションを見に行くわよ!」


「ええー僕はいいよ。みんなで行ってくれば?・・・」
僕は、興奮気味の母さんや琴子に向かって答えた。


「あら、何言ってるの?・・・裕樹は好美ちゃんを送って行かなきゃならないでしょう?そのついでに少

しだけ寄り道して、クリスマス気分に浸りましょうよ・・・好美ちゃんだって裕樹と手を繋いでイルミネー

ションの中を歩きたいわよね~?」
母さんのニヤニヤした問いかけに、好美もはにかんだ笑みを返している・・・
母さんがこんな風に言い出したら、もう誰も拒絶することはできない。
何の抵抗もなく素直にうなずいている父さんにほんの少しだけ人生の悲哀を感じながら、僕も仕方な

く立ち上がった。




「きゃあ~綺麗~~!!」
「ステキ、ステキ~~!!」
琴子と好美が、思いっきり感嘆符の付いたセリフを言いながら、イルミネーションの中を歩いて行く。
その後ろを、母さんと父さんが並んで歩き、さらにその後ろを少し不貞腐れながら僕が歩いていた。


何年か前から始まった駅前のイルミネーションは、クリスマスソングが流れる中を、どこまで続くのか

と思わせるほど先まで続いている。
少し先を歩いている琴子と好美の笑顔に、幻想的な青や白の光が反射して、柄にもなくロマンチック

な気持ちが湧いてこないでもない・・・


そんな時、ポケットの中で携帯電話が振動した。
画面を見て相手を確認すると、それはお兄ちゃんからの着信だった。
「もしもし?・・・お兄ちゃん?」
やっと連絡があったことにほっとしながら電話に出ると、受話口から聞こえて来たお兄ちゃんの言葉

は意外なものだった。
「おい!お前嘘ついたな?」
「な、なんだよ、いきなり。僕がどんな嘘をついたって言うのさ?」


「何が今にも泣きそうなんだよ!ここから見ると、琴子はゲラゲラ笑ってるじゃないか!」


―えっ?・・・


僕は、思わずあたりを見回した。
すると、僕よりさらに後ろを電話を耳に当てながらこちらに歩いて来るお兄ちゃんの姿が見えた。


「なんでここがわかったの?・・・」
僕は立ち止ると、遠くのお兄ちゃんを見ながら送話口に向かって尋ねた。


「やっと患者が落ち着いて帰ろうと思ってバスに乗ってたら、お前たちが歩いているのが見えて駅前

で降りたんだよ」
「なんだ、そうなんだ!」
「まったく、お前だけじゃない。オフクロもオヤジも変なメールを送ってくるから気になって琴子に電話

すれば出ないし、家に電話しても誰も出ない。お前ら琴子に甘すぎるぞ!」


僕はお兄ちゃんの悪態を聞きながら、内心笑っていた。


―その言葉、そっくりお返しするよ。お兄ちゃん!


そして僕は、電話を切ると、もう大分先まで行ってしまった琴子に声をかけた。
「おい、琴子!お前、携帯電話は?」


琴子が僕の声に振り返ると、慌ててポケットに手を突っ込んでいるのが見えた。
そして、全てのポケットを探ったあと、苦笑いを浮かべながら答えた。
「ああ・・・テーブルの上に忘れて来ちゃった!」


「バカ!・・・お兄ちゃんが電話したのに出ないって怒ってるぞ!」
僕は、琴子に近づいて行った。
そして、僕の言葉に蒼ざめている琴子に、あごで僕の後ろを見るように促した。
戸惑い気味に僕を通り越して行った琴子の視線が、後ろから歩いて来るお兄ちゃんを見つけた。
「えっ?・・・入江君?・・・」
琴子の瞳がみるみる大きくなり、呆然としたつぶやきが漏れた。


「おお、直樹!」
「まあ、お兄ちゃん!」
同時に、お兄ちゃんの存在に気付いた父さんや母さんも感嘆の声をあげた。


そして、いつの間にか好美が僕の隣に立っていて、小さな声で「よかった」とつぶやいた。


一瞬の沈黙の後、琴子が勢いよく走り出そうとしたのは言うまでもない。
それをちゃんと予測していたお兄ちゃんは、見事な程すばやく僕たちのところまでやってくると「走る

なっていつもいってるだろ」と琴子をたしなめた。



「冷えて来たから、あんまり遅くならないでね・・・」
母さんの言葉に見送られて、お兄ちゃんと琴子は、イルミネーションを見に集まった人ごみの中に2

人で消えていった。
琴子は、お兄ちゃんの腕にぶら下がるようにしがみつくと、家にいた時とはあきらかに違う満面の笑み

を浮かべて「はーい」と答えていた。


「さて、ママとパパはこれで帰るけど、裕樹もあんまり遅くならないように好美ちゃんを送り届けてね・・・」
母さんは、次に僕達に向かってそう言うと、父さんと腕を組んで家に帰って行った。



僕達は2人きりになると、ごく自然に手を繋いでイルミネーションの中を歩いて行った。
やっぱりクリスマスのこの雰囲気は、ちょっと恋する気持ちに拍車をかけるらしい・・・
それでも、気のきいたことが言えない僕と口数の少ない好美は淡々と歩いていた。


「琴子さん、嬉しそうだったね。お兄さんが私達を見つけてくれて本当によかったね・・・」
好美が、不意にうっとりとした口調で言った。


「えっ?お兄ちゃんが僕達を見つけただって?・・・あはは」
僕は、きょとんとしている好美に笑って見せた。


お兄ちゃんは、たまたま僕達を見つけたわけじゃないと僕は思っていた。
きっと、お兄ちゃんは初めから琴子を呼び出すつもりで、ここにいたに違いないと・・・


「どうして、そう思ったの?」
好美が興味津々と言った表情で僕を見た。


「だって、僕達が歩いて来た舗道はお兄ちゃんが乗って来たバスの進行方向とは反対側なんだよ・・・

中央分離帯がある二車線の広い道で、おまけにイルミネーションの始まる街路樹より手前じゃないか

・・・明るいバスの中から外を歩く人の顔なんて判別できるわけないよ」


<やっと患者が落ち着いて帰ろうと思ってバスに乗ってたらお前たちが歩いているのが見えて駅前

で降りたんだよ>


僕は、お兄ちゃんにしてはやけに言い訳がましい言い方を思い出して、思わずほくそ笑んだ。


「へえ、そうなんだ?さすが裕樹君!・・・お兄さんもきっと琴子さんが心配で仕方なかったのね・・・」
好美がさして驚いた風でもないことに、僕は少しがっかりした。
そんな僕にお構いなく好美は、憧れの2人に思いを馳せるように、イルミネーションの煌めく街路樹を

見上げながら、さらにつぶやくように言った。
「ねえ、裕樹君の家族って本当に素敵ね・・・おじさんもおばさんも本当に琴子さんを可愛がっていて

お兄さんも冷たい振りをしていてもすごく琴子さんを愛してるしね」


「何をするにも大騒ぎで鬱陶しいだけさ・・・」
僕は、半分は照れ隠しに半分は本音で答えた。
すると好美は、「そんなこと本当は思ってないクセに・・・」と言ってクスリと笑った。


―そうかもしれない・・・


僕は、好美の言葉にあらためてそう思った。
一番多感な頃から、わけもわからないまま全てを見て来た僕は、少しばかりひねくれた気持ちを
差し引けば、たぶん何よりも家族が大切だ。


それでも素直にその思いを口にはできないから・・・
「わかったようなこと言うなよ。あの中に毎日いてみろ。本当に毎日騒がしくて鬱陶しくて・・・お前も覚

悟しておいた方がいいぞ」


―えっ?


「えっ?・・・」


それは、お兄ちゃんや琴子や母さんや父さんを思いながら、自然と口をついて出た言葉だった。


―「お前も覚悟しておいた方が・・・」だって?


僕は慌てて横を歩く好美の顔を見た。
好美は、まるで固まったように呆然とした顔で僕を見ていた。
普段、少し鈍感な好美も今の僕の言葉の意味はすぐに理解できたらしい・・・


そうさ・・・お兄ちゃんや琴子や母さんや父さんを思う内に、自然とその中に好美の姿も見えた気がした。


好美は、たっぷり5分は黙ったままだっただろうか・・・まるでそれまで息までも止めていたかのように

不意に大きく息を吐き出した。


「何も聞くなよ!」
僕は、好美が今の言葉の意味を問う前に釘を刺すように言った。


「えっ?・・・でも・・・」
好美が、不満げな声を出した。


「僕が言ったまま、お前が想像したままだよ・・・でも、それはまだ言えない。まだ言わない。」
「どうして?・・・」


僕は、好美の言葉に答えずに歩き出した。
心臓が、ドキドキしていた。
答えない代わりに、後ろの好美に向かって手を差し出した。
好美の小さなため息が聞こえた気がした。
でも、すぐに好美の手が僕の手をしっかりと握って、僕達はただゆっくりとクリスマスのイルミネーショ

ンの中を歩いて行った。


―好美?・・・ずっと一緒にいような。


僕は、好美の手を握る手に少し力を入れると、この聖なる夜にそっと祈った。

僕達の未来もこの道のように輝きながら真っ直ぐに続いて行きますように・・・と。



                                              END


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さて、いかがでしたか・・・はてなマーク

裕樹が主役のお話は、喜んでくださる方もたくさんいらっしゃると思っているんですが・・・


そして、今回のお話は裕樹が主役ではありましたが、まさに家族愛の部分も盛り込んで書いたつもり

です。

琴子の直樹への深い愛情を、これまた深い愛情で見守るパパやママの思いも感じていただけたら嬉

しいです。


裕樹も大学生になって、好美ちゃんとの恋も随分と進展しているようですね・・・ラブラブ

直樹と琴子のように、学生結婚とまでは行かないようですが、しっかりと2人で歩む未来を見つめて

いるようです・・・


琴子と琴子の中の新たな命、そしてきっと近い将来もう一人の家族になるであろう好美ちゃんが、直樹

と裕樹兄弟のちょっとひねくれた愛情に包まれてずっと幸せでいて欲しいという願いを込めて、このお

話を今年のみなさんへのクリスマスプレゼントプレゼントとして贈りたいと思います。



どうぞお受け取り下さいませ。

Merry Christmas・・・柊


読者の皆さまに、素敵なクリスマスが訪れますように・・・リース


★すでに1週間以上コメレス溜めこんでてスミマセン・・・ボチボチお返事して行きますので、まっててくださいね~あせる 

 


                                                By キューブ




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