読者の皆さまには、いつも私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございますひらめき電球


さて、今回は久々に直樹主観のお話になります。

ただ、このお話、最初は「彼恋」の番外編として書き始めたのですが、あえて番外編とはせずに

アップしたいと思います。

時間軸としては、本編最終回のその少し後、「彼恋」のFinalから数日後といったところでしょうか。


そして、今回特に人気の高い2人のオリキャラが直樹に相対します・・・にひひ


どうか、お楽しみいただけますように・・・音譜


注★ この作品は、過去の作品「桜色の幸福 前後編」の内容を引用している部分があります。もしまだお読みでな

    い方は、ご面倒でなければこちらをお読みいただいてからこのお話をお読みいただくことをお勧めいたします。

    「桜色の幸福」 前編後編


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



    ~魔女たちの微笑み~



―最悪だ・・・


オレは、今自分が置かれている状況を嘆いて天井を仰いだ。


「やあ、入江先生、まさに両手に花ですね~羨ましいですな・・・」
同じ第3外科の先輩医師が、さも羨ましげな視線を投げながら通り過ぎていく。


―いつでも交代しますよ・・・


オレは、思わず口から出そうになった言葉をなんとかギリギリで飲み込んで、両脇に座る「花」を

盗み見た。


右に一条紗江子。
左に田辺響子。
この2人が、両脇からガッチリとオレの腕を掴んでいて逃げ出したくても立ち上がることすらでき

ない。
人を出汁にして交わされる会話に、思わず耳を塞ぎたくても両手が自由にならないからそれもで

きない。


―どうしてこうなったんだ?・・・


それは、今から1時間ほど前に遡る・・・
定時で上がろうと、白衣を脱いでオフィスから出て来たオレを西垣医師が待ちかまえていた。
「おう、入江・・・」
さりげない振りでオレに近づいて来た西垣医師は、急に困ったような顔を作ってオレに言った。
「学長や院長や病院の偉いさんたちが集まる飲み会に行かなくちゃならないんだ・・・合コンなら喜

んで行くけどな~何が楽しくて酒飲みながら難しい話ししなきゃなんないんだ?・・・」


「それはご苦労さまですね・・・せいぜい楽しんできてください。じゃあ、オレはもう帰るんで・・・」
オレは、素知らぬ顔で西垣医師の横をすり抜けようとした。
ところが、西垣医師は突然オレの顔の前で両手をすり合わせながら懇願した。
「頼む!・・・人助けだと思って一緒に行ってくれ!」


「はあ?・・・オレは別に西垣先生を助けたいとは思いませんけど?」
オレは、わざとつれなく言って、その場を立ち去ろうとした。
しかし、さらに西垣医師がすがりつくようにオレの腕を掴みながら言った。
「入江~そんなこというなよ!あの学長達の堅い話しにどうやって合わせろっていうんだ?・・・でも

お前なら大丈夫だろう?少しの間でいいんだ。俺はお前の元指導医だぞ!それがこうして頭下げ

てるんだ。頼む。助けてくれ!」


オレは、西垣医師の必死な姿に思わず笑いが込み上げて来た。
確かに学長達と酒を飲むのは息がつまるだろう。
だからと言って誘われてもいないオレが参加する義理もないが、先輩である西垣医師がこれだけ

必死に頭を下げているのを見ていると、思わず情けをかけてやりたくもなる。
ふと家で待つ琴子のすねた顔が浮かんだが、オレは仕方なく西垣医師の願いを聞き入れて、1時

間だけという約束で一緒に行くことを承諾した。


―それが間違いだった・・・


オレは、店に入るや否や突然どこからか現れた一条紗江子と田辺響子に両腕を掴まれて、この席

に連れてこられた。

西垣医師も、学長夫人が相手ではオレを取り返すことも出来ず、学長たちが陣取る席の末席でグ

ラスを傾けている姿が見えた。


「あなた。悪いけど入江先生はこちらに借りるわね」
田辺響子が、奥の席で飲んでいる夫である学長に声をかけると、学長はニコニコしながら軽く手を

上げて頷いた。


「借りるって・・・いったいどういうことですか!?オレはモノじゃない!!」
抵抗するオレの言っていることなど、完全に無視してオレの手にグラスを持たせると、まずは一条紗

江子が答えた。


「今日は、響子先輩が学長について来るって言うから、私も同席していたんですよ・・・そしたら入江

先生が西垣先生と入ってくるんですもの~これは、2人で入江先生を拉致してじっくり話しをしようっ

て・・・ねっ?先輩!」
一条紗江子は、満面の笑みで田辺響子に話しを振った。
「そうよ!まさか入江先生が来るなんて、もうびっくりよ!・・・主人から入江先生はお酒の席にはほ

とんど顔を出さないって聞いてたから、もうこんなチャンス滅多いにないって思って即行動よね?紗

江子!」


オレを真ん中にして、2人の会話が飛び交う・・・
オレは、なんとか口元までは来る腕を上げてグラスの中のビールを一気に飲み干した。
そして、左右の女傑2人を交互に見ながら半ばやけになりながら言った。
「それで?・・・こんなことしてまでオレと何を話したいって言うんですか?・・・オレはこんな席であな

たたちと話すことなんてないですけどね!」


「へえ・・・入江先生でもそんな風に怒ることがあるのね・・・」
田辺響子が、興味深げにオレの顔を覗きこむ。


「あら。響子先輩!入江先生は、結構怒るみたいですよ・・・琴子さんがよくカウンセリングルームで

ぼやいてますから・・・”昨日も入江君に怒られちゃった・・・”ってね」
一条紗江子は、田辺響子に向かって言った後、オレの顔を見てニヤリと笑った。


オレは左右から注がれる視線にいたたまれない気持ちで、声に力を入れて言った。
「とにかく!・・・この腕を離してください。何を考えていらっしゃるのかわかりませんが、逃げたりしま

せんから・・・」


すると、田辺響子と一条紗江子は目を合わせて頷き合うと、オレの腕に絡めていた腕をそれぞれそ

っと離した。
そして、解放された腕を軽く回しながら体の力を抜いたオレに向かって、田辺響子がポツリとつぶや

くように言った。
「私たちが話したいことなんて決まってるじゃない・・・」


―琴子のことか・・・


オレは、急に真剣なまなざしを向けて来た田辺響子の次の言葉を待った。
「それで?・・・琴子さんは元気?・・・」


―やっぱり・・・


「ええ、元気ですよ」
オレは、淡々と答えた。


「赤ちゃんが出来たって聞いたわ。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「彼女は・・・琴子さんは、それをちゃんと喜んでいるのよね?・・・」


―えっ?・・・


琴子が妊娠していることは周知の事実だから、祝いの言葉をかけられることに抵抗はない。
しかしオレは、田辺響子が言った後の言葉に引っかかりを感じて、思わず聞き返していた。
「いったい何をどこまで知っていてそんな風に聞くんですか?・・・」
すると、田辺響子は苦笑いを浮かべながら答えた。
「真実も噂も想像も含めて、私が知り得ることは全て・・・」


オレは、彼女の余韻を残すような言葉を聞いて同じように苦笑いを浮かべながら深いため息をつ

いた。


なぜか、この田辺響子といい、反対側で黙り込んでしまった一条紗江子といい、この2人は何かに

つけてオレ達のことに関わろうとしてくる。
そんな2人が、今回の琴子の疾走から妊娠までの出来事について、何の反応も示さないことの方

がおかしいのだということにオレは今さらながらに気づいていた。


ふと、田辺教授の学長就任のパーティーの時に、田辺響子に言われたことを思い出した。


―この人は、琴子を守りたいと言ったんだ。


オレの言葉を待っている2人の女性が、琴子の心のことを心底心配していることはその表情を見

ればよくわかる。
だからといって、プライベートなことを話す義理もない。
心を見透かされているようで居心地が悪いのはいつものことだ。
それでも、自分でも持て余すことのある複雑な心理をみごとに言い当てられて救われたことがあ

ったのも事実だった。


―この2人にだけは、嘘も誤魔化しも通用しないよな・・・


オレは、このお節介な心理カウンセラー達に、心の内を吐露してみるのもいいかもしれないと思った。
オレは、覚悟を決めて一度大きく深呼吸をしてから言った。
「いったいオレに何をしゃべらせたいんですか?・・・琴子はオレが見る限り幸せですよ。心配には

及びません。」


すると、安心したようにほっと息を吐き出した田辺響子は、オレを通り越して一条紗江子に目配せ

をすると急に目を輝かせてオレの顔を覗きこんだ。
「それで?・・・どうやって琴子さんを見つけたの?・・・」
「えっ?・・・」
「違いますよ響子先輩!・・・それを聞くならどんな気持ちで琴子さんを探したの?でしょ?」
「はあ?・・・」
「あら、紗江子!私は入江先生がどう行動したかで、その心理を探りたいのよ!」
「・・・・・」


そして、最後には2人同時に「どうだったの?入江先生!」といいながらオレの肩に手をかけた。
オレは、その途端我慢が限界を超え勢いよく立ちあがると、唖然と見上げる2人に向かって吠えて

いた。
「あんたたちは、いったい何なんだ?・・・本気なのか?からかってるのか?!」


すると、わなわなと2人を見降ろしたオレに向かって、穏やかな微笑みを浮かべながら一条紗江子

が言った。
「いつでも、私たちは本気ですよ・・・そんなことわかってるでしょ?入江先生。」


「そう・・・もし、琴子さんの心のこと、あなたの心のことで助けが必要なら、私達を思い出して欲しい

の・・・決してあなただけで解決しようとしないで。」
田辺響子も同じようにオレを見上げながら言った。


「どうしてですか?・・・オレは別にあなた達に頼らなくても十分に琴子を・・・」「だって!」
オレが反論しようとすると、その言葉を遮るように一条紗江子が言葉を挟んでそのままオレをじっと

見上げた。


「”だって”・・・なんですか?」
オレは、半ば呆れたように聞き返した。
すると、一条紗江子は隣にいる田辺響子を一瞬見つめると、すぐにまたオレを見上げて言った。
「だって、入江先生にとって琴子さんが唯一の弱点だから・・・」


「えっ?・・・」
オレは、2人の穏やかな微笑みを交互に見ながら絶句するしかなかった。




家に帰りついたのは、もう日付が変わって大分経った時刻だった。
オレは、明かりが煌々と付いたままの部屋に入ると、まっすぐにベッドで眠る琴子の傍らに腰掛けた。
額にかかった髪をよけてやりながら、その頬を指で撫でる。


―なあ琴子?・・・不思議だな。


一条紗江子や田辺響子と関わるたびに何度も思う・・・
琴子は、ただ一途にオレを愛しているだけなのに、その姿がなぜかあの人達の心を打つらしい。
今日も、結局はオレはあの女傑2人の掌の上で踊らされて来ただけなのだと思うと苦笑いが浮かんだ。
それでも悔しいと思わないのは、オレはきっと彼女達を心から信頼してしまったからなのだろう・・・


「お前・・・随分とやっかいな人達に好かれたもんだな。こっちはいい迷惑だぞ・・・」
オレは、眠る琴子に向かって囁いた。
すると、突然顔をしかめた琴子が次の瞬間大きく目を見開いて「入江君!」と叫けんだ。


「どうした?・・・夢でも見たか?」
オレが尋ねると、うつろな目でオレを見た琴子は、次の瞬間勢いよく起き上ってオレに抱きついた。


「入江君!大丈夫だったのね。よかった!」
どうやら寝ぼけているらしい琴子は、わからないことを言いながらオレをきつく抱きしめた。


「おいおい、ちゃんと目を覚ませよ。」
オレは、背中を撫でてやりながら言った。
すると、琴子はやっと正気に戻ったのか、大きく息を吐き出しながらつぶやいた。
「ああ、恐かった」


「どんな夢だった?」
「うん・・・すごい恐い魔女が2人出てきて、入江君を連れて行っちゃうの・・・私必死で追いかけよう

としたんだけど、魔法をかけられて体が動かなくて・・・」


―えっ?・・・


琴子が、夢の中の出来事を話すのを聞きながら、オレは思わず吹き出していた。
琴子は、突然笑い出したオレを不思議そうに見ている。
オレは、そんな琴子を抱き寄せながらそっと囁いた。


「それ・・・正夢だよ・・・」


                                            END


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さて、いかがでしたか・・・はてなマーク


キューブの書くイタキスの世界での最強の2人の登場でしたね・・・(≧m≦)ぷっ!


一条先生はすでに準レギュラーなので、今回は特に田辺響子さんの登場を喜んでいただけたら

嬉しいです。

この田辺響子さんは、「桜色のワンピース」と「桜色の幸福 前後編」の2作品にしか登場しないキ

ャラですが、なぜか彼女を好きだと言ってくださる読者の方がとても多いんですよね・・・


正直、「桜色の・・・」の2作品は、もう2年前に書いた作品ですが、あの頃書いたモノとしては随分

と創作色が強くて、キューブ的にはイマイチに思えた作品だったんです。

でも、ふと最近このお話を読み返した時、なんだか自分で書いたものなのにちょっとジーンとしちゃ

ったりしてあせる

そこで、その時にもう一度響子さんの登場するお話を書きたいと思って、ふと一昨日だったかな~

このお話の構想が降りてきました。

イケメンのFinalを飛ばしちゃって楽しみにしてくださっている読者さまにはごめんなさいね・・・


たまには直樹がタジタジになる展開も面白いでしょ・・・はてなマークにひひ



次回もどうぞお楽しみに・・・音譜


★相変わらずコメレス溜めこんでてスミマセン・・・(;^_^A アセアセ・・・


                                                 By キューブ




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