読者の皆さまには、いつも私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございます![]()
さて、秋休みを挟んで少し間があいてしまいましたが、「short hair」の第4話ができあがりましたので
どうぞお読みください・・・っていうか、実はこの回では終われませんでした![]()
もう一話お付き合いいただくことになりましたので、Finalを期待されていた方には申し訳ありません。
どうか、お楽しみいただけますように・・・![]()
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~short hair~ ≪4≫
その日、俺たちは明日に迫った新曲発表のイベントの打ち合せと曲の練習をを兼ねて、会社のスタ
ジオに集まっていた。
午後からは場所を会場に移しての最後のリハーサルがあるため、それぞれに自分のパートを入念
にチェックしていた。
マ室長が、携帯電話を片手にスタジオに入って来たのは、そんな時だった。
「おい、テギョンとシヌ。社長が呼んでる・・・なんだか慌ててたな。お前ら何かやらかしたか?」
マ室長が、携帯電話をポケットにしまいながら言った。
―来たか・・・
テギョンも俺と同じことを考えているらしく、俺を見て小さく頷いて見せた。
不審げな顔のジェルミとミナムを置いて会議室を出ると、俺たちは社長室へ向かった。
「明日が絶好のチャンスだからな・・・」
テギョンが廊下を歩きながらつぶやいた。
「ああ、そうだな」
俺はそうひと言答えた。
テギョンとピアノ室で対峙した日からすでに一週間が過ぎていた。
あの後、テギョンがミニョに何を言ったのか、今回のことをどうするつもりなのかテギョンは何も言
わない。
ミニョもあれきり合宿所に顔を出してはいなかった。
A・N・JELLも、新曲のレコーディングや編集作業に個々の活動が続いて、メンバーが全員そろっ
て公の場に出るのは明日のイベントが久しぶりのことになる。
キム記者がそこを狙ってくることは容易に予想がついていた。
社長室に入ると、落ち着かない様子のアン社長が俺達を迎えた。
「今キム記者から電話があった」
案の定、アン社長は思った通りの言葉を言った。
俺もテギョンも何も言わずにソファに腰掛けると、アン社長の次の言葉を待った。
「明日のイベントの後、お前達を取材させろと言って来た。それも新曲発表の記者会見とは別に
テギョンとミナムの妹のことでだ・・・キム記者は自信満々にお前たちは断れないはずだと言って
いた。詳しいことはシヌに聞けともな・・・どういうことなんだ?」
アン社長は、そこまで言うと俺とテギョンの顔を交互に見て反応を伺っているようだった。
そして、あからさまに大きなため息をつくとさらに言葉を続けた。
「まったく!そうなることはわかってたって表情だな・・・俺は、お前達がA・N・JELLとしての自覚
を忘れなければ、プライベートなことにはなるべく口出しはしないつもりでいたが、いったい何を
掴まれたんだ?・・・もうスキャンダルはごめんだぞ!」
いつになく怒りを露わにしたアン社長に、俺は仕方なく1週間前のキム記者とのやり取りを話して
聞かせた。
「なに?・・・シヌとミナムの妹とのツーショット写真を公表するだって?・・・A・N・JELLの中で三角
関係なんて!!オーマイゴット!!」」
アン社長は、頭を抱えて大げさに天井を仰ぐと、次にソファから身を乗り出すようにして俺に尋ねた。
「俺も本当はそのことはずっと気になっていたんだ。ミナムの妹はシヌの恋人じゃなかったのか?
・・・いい機会だからちゃんと説明してくれ」
アン社長の言葉に、俺は一瞬テギョンの顔を見た。
しかし、テギョンは腕を組んで横を向いたままだんまりを決め込んでいた。
アン社長は、ミナムとミニョが入れ替わっていたことをいまだに知らない。それであのツーショット
写真までのいきさつを説明するのは至難の技に思えた。
俺は、頭の中を整理するためにほんの一瞬目をつぶると、すぐに意を決して話し始めた。
「俺は、ずっと前からミニョがテギョンを好きだったことを知っていました。」
俺の隣でテギョンが顔をこちらに向けるのがわかった。
「ミナムのPV発表会の時もグラビア撮影の時も、彼女は本当はテギョンのためにそこにいたんで
す・・・ただ、その頃はまだテギョンはミニョの気持ちを知らなかったし、ユ・ヘイとのこともあって本
当のことが言えなかったんですよ。それに俺が咄嗟に自分の彼女だなんて言ってしまって話しを
ややこしくしてしまいました・・・反省してます」
俺が頭を下げると、アン社長は納得したのか大きく頷いた。
「それじゃあ、ライブでテギョンがあんな風に告白をしたのはなぜだ?・・・あの時はもうテギョンは
ユ・ヘイと別れていたじゃないか」
アン社長は、今度はテギョンの顔を見ながら尋ねた。
しかし、テギョンが相変わらず横を向いたまま答えようとしないのを見て、すぐにテギョンの返答を
あきらめた社長は次に俺の顔を見た。
「それは、テギョンが気持ちをはっきりさせないからあきらめて身を引こうとした彼女を、往生際の
悪いテギョンが土壇場で引き戻しただけのことですよ・・・かなり派手なやり方だったけどな・・・」
俺は、にやりとしながら最後の言葉をテギョンに向けて言った。
するとテギョンは何か言いたげに俺を睨んだ。
しかし、「間違ってるか?」と俺が小声で聞くと、口元を尖らせながらまた横を向いてしまった。
アン社長に話したことは、真実の全てではなくても嘘ではない。
あの頃のミニョとミナムが同一人物であったことも、ミニョが女の姿をしてそこにいた本当の理由も
今となっては言う必要のないことだった。
―もちろん、俺がミニョを好きだったことも・・・
「そうか・・・そういうことなら、もしあの写真が出ても問題ないじゃないか・・・」
アン社長が、少し安堵したようにつぶやいた。
しかし、そこへ突然テギョンが「そんなことはない」と言葉を挟んだ。
「なんだテギョン。やっと口をきいたか・・・じゃあお前はどうするつもりなんだ?」
アン社長が呆れたように尋ねると、やっと社長の顔を見たテギョンが話しを始めた。
「俺は何も話すつもりはない。あの写真も絶対に表には出させない。」
テギョンはきっぱりと言い切った。
俺は、その強い言葉にテギョンのミニョへの想いを感じながらもすぐに聞き返した。
「じゃあ、どうやってキム記者を封じるつもりだ?」
「俺に考えがある・・・」
テギョンは、真剣な表情で答えると、最後にニヤリと笑いながら「今回も派手にやらせてもらうよ」と
付けくわえて立ちあがった。
「お、おい。テギョン!話しは終わってないぞ!」
アン社長が慌てて呼びとめる。
「何言ってんだ社長!もうリハの時間だ。これで明日のイベが上手く行かなかったらどうするんだ?」
テギョンはそう言い捨てると、俺に目配せをして社長室を出て行ってしまった。
「おい、シヌ。本当に大丈夫なのか?・・・」
アン社長が不安げな表情で俺に聞く。
「さあ・・・テギョンがあそこまで言い切ったんだ。心配ないだろ」
俺は、社長を慰めるようにその肩を叩くと、テギョンの後を追って社長室を後にした。
「テギョン!待てよ・・・派手にやらせてもらうって、どういうことだ?・・・」
俺は、スタジオに戻る前にテギョンを捕まえると詰め寄った。
すると、テギョンは苦笑いを浮かべながら答えた。
「ミニョが言うんだ。こそこそするのはイヤだと・・・迷子になってもいいから街を歩きたいともな。」
「えっ?・・・」
<だって、テギョンさんと街を歩いたらすぐに迷子になりますよ・・・>
そう言って笑ったミニョの顔が浮かんだ。
「俺は、隠してやることがミニョのためだと思ってた。でも、ミニョがたとえ写真を撮られようとも堂々
と街を歩きたいっていうなら、そうさせてやれるのは俺だけだ」
テギョンは、口元に微かな笑みを浮かべながら言った。
「それで?どうするつもりだ?・・・」
「明日のイベントで、記者会見の前にミニョをファンに紹介する・・・もうミニョに髪を切らせたりしない」
「テ、テギョン?・・・」
「まずはその前にリハだな。演奏を完璧にしなけりゃ、ファンも納得しないだろ?」
テギョンは、目の前のスタジオのドアを開けるとジェルミとミナムに声をかけながら中へ入って行った。
俺は、ドアが自然に閉まって行くのを眺めながらその場に呆然と立っていた。
―まさかファンに先に告白するつもりだったとは・・・
ガラス越しにテギョンがジェルミやミナムに激を飛ばしている姿が見える・・・
確かに、先にファンを納得させてしまえば、たとえ間違っていたとしてもそれが真実になる。
しかし、失敗すればたくさんのファンを失うことになる。
―そのリスクを冒してまでも守りたいってことか・・・
それでも、明日のイベントで全てが上手くいけば、キム記者が何を言ってこようと恐れることはない・・・
テギョンの自信と大胆さに、なぜか笑いがこみあげて来た。
悔しい気持ちや切ない気持もあるような気がした。
それでも明日になれば、すべての決着がつく・・・
俺は、スタジオに背中を向けるとひとしきり笑ってから中に入って行った。
つづく
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さて、いかがでしたか・・・![]()
今回のお話しは、ラストは決めてはあるのですがテギョンがしようとしていることについて、どうしよう
かすごく悩みました・・・![]()
まぁ、悩んだせいで少しお話しに手を加えたりして長くなってしまったんですけどね``r(^^;)ポリポリ
まだ完結はしていませんが、ここまでのシヌの想いやテギョンの行動に読者の皆さんが違和感を
覚えないでくれることを祈りつつ、Finalの執筆をがんばります![]()
次回も、どうぞお楽しみに・・・![]()
By キューブ
