読者の皆さまには、いつも私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございますひらめき電球


さて・・・年末に2話ほどアップしたまま止まっていたオムニバスの3話目ができあがりましたので

どうぞお読みください。

今回の主人公は「裕樹」です・・・すでにお読みいただいた「好美編」と「直樹編」と比べつつ、4人

が一緒の場面や好美ちゃんと2人きりの場面など、それぞれに思っていることの違いなどをお楽

しみいただけたら嬉しいです音譜


まぁ、ぶっちゃけ次に書こうと思っている「琴子編」と合わせてみても、この「裕樹編」が一番シリア

スな展開でしょうか・・・退屈させてちゃったらごめんなさいね。


どうか、お楽しみいただけますように・・・ニコニコ


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



   ~手をつないで・・・ -裕樹編-~


「おい、入江!携帯にメール来たぞ!」


ボクは、後ろからかかった声に驚いて自分の制服のポケットを探った。しかし、すぐに机の上に携

帯を置いたまま隣の席の奴と話していたことを思い出して振り返った。


「Konomiだってよ~お前、あのF組だった子と付き合ってるのか?」
ボクに声をかけた奴が、ボクの携帯を持ちあげてニヤニヤと笑っている。
ボクは、それを無表情で取り上げると、メールを開きながら「関係ないだろ」と答えた。


<裕樹君、おはよ。今日の夕方に大学の願書を貰いに行きます。好美>


好美からのメールに返信を打つ。


<着いたらメールして>


「へえ~あの子ここの大学受けるのか?はは~ん、だからお前もT大を受けないのか?」
いつの間に覗き込んでいたのか、また声がかかってボクは驚いて振り向いた。
「なんだよ人のメール見るなよ・・・関係ないだろって言ったろ?放っておいてくれよ・・・」
ボクは、あからさまに迷惑顔を向けて言った。


「悪かったな・・・でも彼女、入試の足切りで他の高校へ行ったんだろ?それでまたここの大学

受けるなんてすごいと思ってさ・・・まさか彼氏と一緒にいたいからなんて気持ちだけで受験す

るつもりなら、やめておいた方がいいようにも思うけどな・・・お前は学年トップだから楽勝かも

しれないけど、元々F組の彼女には大変なことだぜ・・・可愛そうな気もするな・・・」


―えっ?・・・可愛そう?・・・


それから、夕方までボクの頭の中では、朝友人に言われた言葉が繰り返しこだましていた。
ここの大学に一緒に通いたいと思いながらも、好美の成績のレベルを考えれば一抹の不安
を抱かないではなかった。
でも、もし好美がここの大学に合格したとして、それを可愛そうだなどと思ったことは一度もな
かった・・・


―ボクは、自分勝手な思いを好美に押し付けているのだろうか・・・


気づけばいつの間にか授業も終わる時間になっていた。
そして、願書を受け取った好美から約束通りにメールが来て、ボクはそれに橋の上で待ってい
るように返信をした。
この3年間、大学に行けばまた一緒にいられるようになると思っていた気持ちを、そう簡単に修
正など出来るわけもなく、ボクは、もやもやとした気持ちのままバッグを肩に掛けて教室を出た。
ところが、待ち合わせ場所の橋の上に到着すると、思いがけなく好美と一緒に琴子がいて、ボ
クに向かって手を振っていた。


「あっ、裕樹君!こっちこっち!」


琴子を見て、ボクに背を向けていた好美も笑顔でこちらを振り返った。


「なんで琴子がここにいるんだよ!」
ボクは、別に深い考えもなくいつもの調子で言った。


「あら、失礼ね~別に2人のデートを邪魔しようと思ってるわけじゃないわよ~私だって、ここで入
江君を待ってるの!そしたら好美ちゃんが随分と待たされてるみたいだからお相手してあげてた
んでしょう!」
琴子もいつもの調子で噛みついてくる。
そんなボク達を好美が目を丸くして見ていた。


「あっ、そうか!今日は田辺響子の講演会の日か・・・お兄ちゃんが久しぶりに学校の講堂に来る
って今朝言ってたっけ・・・ゲッ!ってことは琴子もその講演を聞いてたのかよ」
ボクは、今朝のお兄ちゃんとの会話を思い出して言った。
すると、琴子が「そうよ」と威張ったように答えた。


「彼女の講演会って人気あるんだぜ、どうせ居眠りしてたんだろ?・・・琴子の分の席、もったいな
かったな・・・」
ボクがすぐにからかうように言い返すと、琴子がとうとう本気で怒ったように文句を言った。
「ど、どうして居眠りしてたって決めつけるのよ!・・・ちゃ、ちゃんと聞いてたわよ!」


少し尻すぼみな言い方に、ボクと好美が笑っていると、琴子の後ろからやって来たお兄ちゃんが
呆れた顔をしながら言った。
「何言ってんだ・・・ほとんど寝てて聞いてない癖に・・・お前のいびきが田辺女史に聞こえないか
とヒヤヒヤしたぜ」


―やっぱりな・・・


ボクはお兄ちゃんの言葉に思わずほくそ笑んだ。


「入江君!」「お兄ちゃん!」「お兄さん、こんにちは」
3人が一斉に声を上げ、お兄ちゃんは好美に向かって笑顔で頷いていた。


ボクは、お兄ちゃんが現れて琴子と何やら話し始めたのをきっかけに、ふと好美が持っている大

判の封筒に視線を向けた。


―願書か・・・


朝からずっとボクの心を占めている思いがまた膨らみだす。
好美はボクと一緒にいたいという思いでこの大学を受けようとしている。
ボクはそれを当たり前のように受け入れてもいいのだろうか・・・
それが本当に好美にとっていいことなのだろうか・・・


ところがお兄ちゃんが好美に話しかける声が聞こえて、ボクは我に返った。
「好美ちゃん、願書を貰いに来たのか・・・」


「はい」
好美が笑顔で返事をする。
そして、琴子がボクの肩を叩きながら言った。
「また裕樹君が勉強見てあげれば、今度はきっと合格するわよね」


その時ボクは、琴子の言葉がとても無責任な言葉に思えて、思わず心にもないことを口にした。
「僕だっていろいろ忙しいんだよ・・・」


言うと同時に手を払われた琴子が驚いた表情でボクを見る。そして好美をチラリと見るとと胸に
抱えた封筒を抱きしめてうつむいてしまっていた。
4人の間に気まずい空気が流れ、胸の中にわけのわからない苛立ちと後悔が湧き上がって来
た時お兄ちゃんが、ボクと好美の顔を交互に見ながら言った。
「そうか、エスカレター式の大学とはいえ、お前だって忙しいだろうな・・・じゃあ、好美ちゃんには
オレが教えてあげようか・・・」


―えっ?・・・


少し思いがけないお兄ちゃんの言葉にボクが一瞬唖然としていると、同じように驚いた顔をした
好美が答えた。
「えっ?・・・そ、そんな悪いです・・・」


お兄ちゃんが、とても優しい微笑みを浮かべて好美を見ている・・・
ボクは、その瞬間それまでイライラと思っていたことも全て忘れてお兄ちゃんと好美の間に割っ

て入っていた。
「お、お兄ちゃん!何言ってるんだよ!・・・好美は僕が教えて、ちゃんと合格させて見せるさ」


自分の口が放った言葉に愕然とした。
ボクを見ている好美と琴子の驚いた顔とその視線を避けるように横を向いた。


「裕樹、その言葉忘れるなよ・・・」
お兄ちゃんがニヤニヤしながら言った。
ボクはその瞬間、お兄ちゃんに今のボクの心を見透かされているような気がして、不貞腐れな
がらも、なんとか「わかってるよ」と答えた。


それから、4人で食事でもしようと言い出した琴子に、お兄ちゃんが何か耳打ちをして歩き出
すと琴子も気が変わったらしく嬉しそうに後を追っていった。
淡々と歩いていくお兄ちゃんに琴子がまとわりついて手を繋ごうとして睨まれているのが見えた。
「あはは・・・嫌がられてるよ・・・」
ボクが笑いながら校舎の中に入っていく2人の姿を目で追っていると、隣で同じように2人を
見送っていた好美がポツリと言った。
「そんなことないよ・・・お兄さん、ちゃんと琴子さんの手を握ってたよ・・・」


「えっ?・・・」
ボクは、好美のその少し寂しげな言い方に思わず顔を見た。すると好美は慌てたように「ううん、
なんでもない」と答えてうつむいた。


「これからどこへいく?」
ボクは、さっきのお兄ちゃんとのやり取りを思い出して少し気まずい気持ちで聞いた。


「で、でも、デートじゃないんでしょ?」
好美が拗ねたように聞き返す。
琴子が去り際にボク達を冷やかすように言った言葉が蘇った。
<じゃ、好美ちゃん、裕樹君とのデート楽しんできてね・・・>
そしてボクが、その言葉に対して<別にデートじゃないぞ!>と答えたことを根に持っているら
しい・・・


「じゃあいいよ!」
ボクは、やっぱり今日はどこか全てが思い通りにいかないような気がして、ひとりで歩き始めた。
すると、数歩歩いたところで好美の声がボクを呼び止めた。
「ねえ、裕樹君!待って!」


振り返ると、好美はボクを追いかけてくるわけでもなく最初いた橋の中央に立ったままボクを見

ていた。
少し思いつめたような表情に、心なしかボクも緊張してくる。
好美は、何か言おうとするように何度も大きく息を吸い込んでは小さなため息を繰り返している・・・


「なんだよ・・・」
ボクは、少し焦れたように聞いた。
すると、好美は今度こそ本当に決心したように、胸に両手をあてながら言った。
「私・・・私も裕樹君と手を繋いで歩きたい・・・」


―えっ?・・・


声が少し震えているような気がした。
なぜかボクの心臓もドキドキと高鳴った。
そして、ひとつの言葉がボクの心に浮かび上がった・・・


―そうさ・・・ずっと一緒にいたい。


ボクは、好美の前まで戻ると、ぶっきらぼうに手を差し出した。


「えっ?いいの・・・」
好美は、ボクに拒否されると思っていたのか戸惑ったように聞いた。


「そうしたいって今お前が言ったんだろ?・・・どうすんだよ、繋ぐのかよ?繋がないのかよ・・・」
ボクは、引っ込みの付かない手の先を見つめたまま焦れたように言った。
すると、好美が慌ててボクの手を掴んで、やっと笑顔になった。


琴子がひたすらお兄ちゃんを追いかけて今幸せであるように・・・
ずっと一緒にいたいと、お兄ちゃんが琴子にプロポーズしたように・・・


―それだけの理由で何が悪いんだ。


ボクは、好美の手を握ったまま少し先を歩きながらそんなことを考えていた。
好美だって琴子だって決してボクやお兄ちゃんの言葉に流されているわけではない・・・
好美自身が願い、琴子自身が願い、そしてボクやお兄ちゃんも同じことを願ったからこそ今が
ある。
だからこそ、ボクは好美の願いを叶えるために、そして好美はボクの願いを叶えるために頑張れ
ばそれでいいんだ・・・


「おい、絶対に合格しろよ・・・そうすれば、毎日こうして一緒にいられるようになる・・・ボクもそう
したいって思ってるから・・・」
最後には自分にしか聞こえないくらいの小さい声になってしまった告白。
それも好美に背中を向けたままなんて最低の演出だと思いながらも、ボクにしてみれば精一杯
の思いを繋いだ手に込めてボクは好美の手をギュっと握りしめた。


「うん、待っててね・・・」
好美が今にも消えそうな声で答えたのは、随分とたってからだった・・・


その時ボクは、ふとお兄ちゃんが嫌そうにしながらも琴子と手を繋ぐ理由がわかった気がした。
前を向いて先を歩いていても、手を繋いでいれば必ず後ろに琴子がいることがわかるから・・・
振り返らずに話しかけても、必ず返事が返ってくるから・・・
決して見失うことがないから・・・ボクにはそう思えた。


今繋いだこの手の先に好美がいる。
ボクが必ず引っ張って行く・・・
そして、決してこの手を離さない・・・

                                             END


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さて、いかがでしたか・・・はてなマーク

キューブ的には、一番ラストの裕樹が直樹が琴子と手を繋ぐ理由を思いつくくだりがとっても気に

入ってます。

まぁ、かなり自分本位な考え方ではありますが、これぞ入江兄弟と思っていただけたらしてやっ

たりと言ったところでしょうか・・・


なんだかんだと言いながら、直樹&琴子カップルをお手本にして自分の恋にまい進中の裕樹。

まだまだティーンエイジャーとしては迷うことも多いけど、直樹&琴子の通って来た道を良くも悪

くも見習いながらきっと素敵な男性になるんじゃないかなって思ってますドキドキ



次回はいよいよ最終回の「琴子編」です。

お話の神様が早く降りて来てくれるよう祈っててくださいね・・・( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ



次回もどうぞお楽しみに・・・音譜



                                               By キューブ





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