読者の皆さまには、いつも私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございますひらめき電球


さあ、2009年最後の記事になります合格

今年もお話のアップで締めることができて幸せですドキドキ


さて、直樹と琴子のある年の年越しのお話ですが、今回はちょっと切ないお話になっています・・・

でも、きっと最後にはあたたかい気持ちになってもらえるんじゃないかとも思います。


どうか、お楽しみいただけますように・・・音譜


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



  ~カウントダウンから30秒・・・~



「入江先生!患者さんが急変です!・・・今西垣先生が処置に当っていますが、入江先生に
応援を頼んでくれとおっしゃって・・・すぐに病院に戻っていただけますか?」


オレは、耳にあてた携帯電話を握る手に力を込めた・・・


壁の時計を見ると、23時20分・・・年が明けるまであと40分だ。
オレの隣で様子をうかがっていた琴子が、今にも泣きそうな顔をして首を激しく横に振っている。


「入江先生?入江先生、聞こえてますか?」


オレがなかなか返事をしないでいると、焦れたような相手の声が聞こえてきた。
オレは、もう一度時計と琴子の顔を見てから、受話器に向かって答えた。
「わかりました。これからすぐに病院に向かいますと西垣先生に伝えてください」


そして、オレは携帯電話をデスクの上に置くと、あえて琴子を振り返らずにクローゼットを開けて

服を着替え始めた。
オレを追いかけてきた琴子が、何か言いたげに後ろに立っているのがクローゼットの鏡に映って

いる・・・
「そんなところで突っ立ってないでタクシーを呼んでくれ」


「ね、ねえ・・・あとたった30分くらいで年が明けるんだよ・・・それまで待ったらダメなの?・・・」
琴子がやっと絞り出した言葉は聞きとるのがやっとの小さな声で、それが絶対に無理なことだと

わかって言っている言葉だった。


「お前の夫の職業は?・・・」
オレは、背を向けたまま琴子に尋ねた。


「お医者さんです・・・」
琴子が頬を膨らませながら答える。


「じゃあ、お前の職業は?・・・」

今度は、鏡の中から琴子の目を見て尋ねた。


「看護師・・・そんなことわかってるよ・・・でも・・・」


そして、琴子は不貞腐れた顔で自分の携帯電話を取ると、馴染みのタクシー会社に電話をして

からぷいとオレに背を向けてベッドに腰掛けた。


<新しい年が明けた時、一番に会いたい人は入江君なの!>


それは、毎年この時期の琴子の口癖だ・・・
だからというわけではないが、オレと琴子は結婚してからずっと2人で新しい年を迎えてきた。
何度か危うい時はあったが、それでも不思議とオレたちはその瞬間に必ず2人でいることができた。
それが、とうとう今年は別々の場所で新年を迎えることになりそうだ・・・
琴子の肩を落とした背中は声にならない思いを、見ているオレに向かって力いっぱい主張してくる。
それでも、自分の我を通せば人の命を危うくなるかもしれないとわかっているからこそ、なんとか

堪えているのだろう・・・

オレは、ふと見えた琴子の握りこぶしが微かに震えているのを見て、自分の中に小さな罪悪感の

存在を感じずにはいられなかった・・・


オレは、窓の外にタクシーが停まるのを確認すると、後ろ姿の琴子に声をかけた。
「おい、一緒に年越しができないからって、見送りもナシか?」
オレは、わざと少し拗ねたように尋ねた。


「えっ?・・・」
琴子が驚いたように振り返る。
「そ、そんなことないよ・・・ごめんね、仕事なのに・・・玄関まで送る・・・」
琴子は、今にも泣きそうな声でつぶやくと、あわてて立ちあがってオレの後に付いてきた。


家の門の前で待っていたタクシーに乗り込むと、何度か送迎を頼んだことのある顔なじみの運転

手が親しげな声で迎えてくれた。
「やぁ、入江先生!・・・もうすぐ年が明けるっていうのに医者っていうのは盆も正月もないんだね」


「それを言うならあなただって同じでしょう?・・・お互い大変ですね・・・」
オレは、そう答えるとドアの前に立っている琴子を見上げた。
琴子は、溢れてくる言葉をせき止めてでもいるのか、口をへの字に結んでオレを見下ろしていた。
「おい、そんな顔するなよ・・・どうしてもいつもの通りにしたいなら、オレが帰ってくるまで目をつぶ

ってろ!」
オレが、からかうように言って笑うと琴子は「もう!」と頬を膨らませたあと、「ホントにそうしようかな」

と一瞬真面目な顔で答えた後、やっと笑顔を見せた。


「じゃあな、終わったらメールする」
オレは、最後に琴子にそう笑いかけてから、運転手に目配せをして出発を促した。
琴子は、「いってらっしゃい」と言って、タクシーが家の前の坂を下りきるまで見送っていた。


運転席のデジタル時計を見ると、あと10分程で年が明ける・・・
たった10分のことだ、待っててやればよかったかとほんの少しの後悔が頭をもたげる。
それでも、今この瞬間にも命の一進一退を続けている患者を思って、その思いを打ち消した。


―このままだと、タクシーの中で年を越しそうだ・・・


去年、一昨年、その更に前とずっと2人で迎えてきた新年の様子が脳裡に蘇る・・・
オレは、琴子と一緒にいることが当たり前だった”その瞬”間がふとしたことで途切れた今に寂しさ

を感じながら、タクシーのシートに深く身を沈めた。
そして腕を組んで目を閉じていると、カーラジオから流れてくる年越し番組のDJの声が聞こえて

きた。


<さあ、間もなく新しい年が明けますね~リスナーの皆さんは今年にやり残したことはありません

か?新しい年になったら何をしたいか決まっていますか?・・・もう間もなくカウントダウンの開始で

すよ~>


今年にやり残したこと?・・・

それは、今年の最後に琴子と一緒にいること。


新しい年になったらしたいこと?・・・

それは、新年の最初に琴子の笑顔を見ること。


―これじゃ、琴子と同じじゃないか!


オレは、自分の胸に湧き上がった気持ちに少し照れながら顔を伏せて笑った。


オレを見送る時の琴子の少し膨れた顔と、最後に見せた笑顔が浮かんでくる。
来年の大晦日にも、今日と同じことが起こらないとは限らない・・・それでも、琴子にしてみればきっ

とある意味忘れられない新年となることだろう・・・


―オレにとってもそうだな・・・


<リスナーのみなさん!隣の愛する人をハグする準備はできてますか?遠く離れている恋人同士

ならちゃんと電話やメールをしてあげてくださいね・・・さぁ、あと10秒ですよ~>


ラジオのDJは、リスナーの気持ちを煽るように語気を強める。


<8・・・7・・・6>


オレは、思わずポケットから携帯電話を取り出した。
顔をあげたオレを見てルームミラー越しに何か言いかけた運転手を人差し指を唇にあてて制する

と、オレは携帯の画面に琴子の電話番号を表示させた。


<3・・・2・・・1!・・・A happy New Year~~~!!>


ひときわ大きくなったDJの声を聞きながら、オレは携帯の発信ボタンを押した。
するとワンコールを聞き終わらない内に琴子の声が耳に飛び込んで来た。
「入江君?・・・どうしたの?・・・」


「いつまで不貞腐れてんだ」
オレは、いきなりそう言った。


「えっ?・・・い、入江君見えるの?」
琴子が、あわてた声で聞き返す。


―バカ・・・


「お前が本当にオレが帰るまで目をつぶってたらまずいから電話してやったんだ」
オレは、相変わらず素直でない自分を自嘲気味に笑いながら言った。


「えっ?・・・あっ・・・うん!」
琴子の短い返事で、オレの電話の意味を理解したのがわかる。


「年が明けてもう誰かに会ったか?・・・」


「ううん・・・だってまだ30秒くらいしか経ってないよ」

琴子がクスクスと笑う声が聞こえる。


「そうか・・・」

オレは、なぜか少しほっとしながら琴子の言葉を待った。


「入江君、あけましておめでとう・・・」

琴子の声が不意にあらたまって言った。

いつもより少し低めの声がなぜか胸に染み込むような気がした。


「ああ、おめでとう・・・」

オレは、運転手の耳を気にして抑揚なく答えた。


「一緒にはいられなかったけど、今年一番最初に入江君の声が聞けてよかった!電話くれてあり

がとう・・・今年も大好きだよ」


「ああ・・・」


「仕事がんばって・・・患者さん持ち直すといいね」


「ああ、じゃあな」
オレは、電話を切ってポケットに入れると、運転手にあれこれ言われるのを避けてすぐに目を閉

じた。



年が明けると言っても、それはいつもと同じように日付が変わるだけのこと・・・

時はその歩みを止めることなく淡々と進んでいくもの・・・


―そう思っていたけど・・・


琴子の思いに合わせているつもりだったことが、実は自分にとっても大切なことだったということ

に気づかされた。

せめて声くらい聞かせてやろうと思った自分に少し驚きながら、それでもそんな自分を少し誇らし

くも思っていた。



<リスナーの皆さんにとって、この新年がワクワクするような素敵な1年となりますようお祈りして

います・・・あらためて、ハッピーニューイヤー!バイバイ~!>

DJが番組の締めの挨拶をして、エンディングの曲が流れ始めた・・・



今、新しい年に思う・・・


何も変わらなくていい。
ただ、今年もオレの横で琴子の笑顔が輝いていればそれでいい・・・


『入江君、大好き・・・』

その声が、いつもそばにあればいい・・・と。


                                              END


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さて、いかがだったでしょうか・・・はてなマーク


きっと、ずっと一緒にいる間には、こんなハプニングで一緒の年越しを過ごせないことだってある

だろうな~と思いながら書いたお話です。

そして、何も変わらないことを望みながらも、変化があるからこそ気づけることもあるという意味も

込めてこんなお話が出来上がりましたひらめき電球


この1年の最後にふさわしいお話になっていたでしょうか・・・!?


2010年最初のお話もどうぞお楽しみに・・・音譜



・・・と、ここでいつもならおしまいというところなのですが、このままこの1年を振り返ってみたいと

思いますので、よかったら、もう少し(いや、結構長くなるかもあせるお付き合いくださいね・・・にひひ



2009年という年は、キューブにとってはいろいろな意味で、とても波のある年でした。

どうしても家族の生活パターンに左右されてしまう立場上仕方のないことですが、子供たちがまと

めて卒業、進学したために4月以降の自分の生活が激変しました。

何よりも、夕食後から就寝までの時間に自由な時間が持てなくなったことが、レビュー記事などの

集中して書きたい記事が書けなくなった原因かなって思います。

(まぁ、家族のせいにするのもなんですけどね・・・( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ)


それでも楽しいことはたくさんありましたね~音譜

受験戦争、卒業、入学と大変だった1,2,3月を過ぎると、4月にはやっと落ち着いて来て、アン

ケートをさせていただきましたね・・・

たくさんの皆さんが答えてくださって本当に嬉しかったです。

あのアンケート結果は今でも、ブログトップのメッセージボードからリンクしていますので、良かっ

たらご覧になってみてください。

そして、5月は「kissと吻と夏と薔薇」の2周年ということで盛りあがりましたね~アップ

お話しもたくさん書いて、どのお話にもたくさんのコメントを頂いて本当に楽しかった・・・

2周年当日の記事には、初めての方もたくさんいらしてくださって、本当に素敵な思い出となりま

した。


6月は、いい意味でも悪い意味でもとても印象深い月となりました・・・

あれこれ考えた末に初めてアメンバーを募ったわけですが、予想をはるかに超えた申請に嬉しい

悲鳴を上げつつもその対応に四苦八苦しました・・・あせる

そして、その延長線上でコメレスをまとめさせていただくことをお願いしたのもこの頃でしたね・・・


7月は、何と言っても「イタキス診察会」でしょうドキドキ

久しぶりの生ジョセフと初めての生アリエル&タンくんに心踊りました~音譜

さらに、この時本当にたくさんのジョセフ迷さんたちとお目にかかって、お恥ずかしながら素顔を

さらしていろいろなお話をすることができましたね・・・


8月は、今年一番の大作「天才の涙・・・」を書き続けたひと月でしたね・・・

結末は決まっていて、そこまでのプロセスを楽しんでいただくということで、あれこれ趣向を考える

のが楽しかったです。


9月は、結婚初の一人お泊りで神戸へ行った月ですね~もうあれから4カ月も経ったなんて思え

ないほど、とても楽しい2日間でした。

もちろん、目的は「ハチクロ五重奏」のイベントに参加することでしたが、正直にいって今思い出す

のは、神戸の異人館街の観光でしょうか・・・ぜひ、また行きたいって思ってます。


そして10月から12月にかけては、本当にあっという間に過ぎてしまった気がしています。

先にお話した生活パターンの変化によるひずみが苦しくなってきて、やりたいことが出来ない悔し

さやイライラに「プチ家出」なんてこともしましたよね・・・( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ


それでも、ここを開いてひとたびキーボードに手を乗せれば嫌なことも全部忘れてお話書きに没

頭したり、皆さんのあたたかいコメントに心癒されることが出来ました。


今年は、大好きなジョセフの音楽活動にどうしても乗り切れなかったことで、ジョセフの記事が少

なくなってしまいましたよね・・・

来年は、少しは演技のお仕事もしてくれるといいなと思っていますが、どうでしょうか・・・あせる



最近では、一時期、日に1200カウンくらいはあったカウンターがいつも700くらいと減ってきました。

ただ、決してそれを嘆いているわけではなく、ジョセフの新しいドラマなどもない中で、この通りキュ

ーブは歌手ジョセフをまったく追いかけていませんから仕方のないことだと思っています。

それに、2吻が台湾で放送されてから丸2年が過ぎて、そろそろ迷さんたちの中でも過去の作品

になりつつあるのかもしれないとも感じています。


それでもキューブはイタキスが大好きですし、今でも何よりもNo.1の存在です!!


そして来年も、無理はせずマイペースを守りながら、皆さんに喜んでいただけるようなお話を書いて

行けたらいいなって思っています。



ちなみに、今年1年に書いた記事の総数・・・344記事 

そして、今年1年に書いたお話の総数・・・55話

昨年に比べたら大分少ないですが、自分ではかなり健闘したと思ってます( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ



今年も本当にたくさんのコメント、メッセージ、メール等ありがとうございました。

なかなかすぐにお返事を返せないことを申し訳なく思っていますが、必ずどれも目を通しています

ので、どうかお許しくださいね・・・

そして、どうぞ新しい年も応援よろしくお願いいたします・・・m(_ _"m)ペコリ



大晦日のお忙しい中、こんな長い記事書いちゃってごめんちゃい( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ

それでも、最後まで読んでくださった読者の皆さまには心から感謝いたします。




新たなる年の皆さんのご多幸とご健康を心からお祈りしています・・・

どうぞ良いお年をお迎えくださいねドキドキ


そして、すぐまた新年にお目にかかりましょう~v(=∩_∩=) ブイブイ!!



                                                By キューブ




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