読者の皆さまには、いつも私のお話を楽しみにしてくださいまして、ありがとうございます![]()
さて、お待たせしていました「あの頃の琴子へ」の続きができあがりましたので、どうぞお読
みください。
しかし・・・キューブ通信No.39で、思いっきり反省したはずのキューブですが、やっぱり(?)
喉元をすぎちゃったらすっかり熱さを忘れてしまったようで、このお話だけでは終われませ
んでした・・・![]()
・・・というわけで、キューブ的には久々の連載となりますので、どうぞよろしくです・・・![]()
最初に「序章」なんてサブタイトルをつけてしまったので、ちょっとかっこつけて「第1章」な
んてしてみました・・・(*'-'*)エヘヘ
さて、次がいきなり「終章」となるか、まだ続くかは、いつものごとくキーボードまかせとなり
ますので、ご了承くださいませ・・・![]()
今回は、今までとちょっと違った直樹を見ることになるかもしれません・・・でも、きっと最後
まで読んでいただいた時に、「やっぱり直樹ね!」と納得していただけるものにしたいと思っ
ています。
おっと、前置きが長くなってしまいました。
どうぞ、お楽しみいただけますように・・・![]()
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~あの頃の琴子へ -第1章-~
思えば、あの時生まれた小さな誤解が、全てをはっきりとさせるきっかけになった・・・
あの日、医局で担当患者のカルテを調べていたオレに医局長が言った言葉。
「入江先生、君には鮎川さんの担当を外れてもらうよ」
「えっ?」
オレは、一瞬何を言われているのかわからず、カルテを手にしたまま、後ろから声をかけて
きた医局長を振り返った。
「鮎川さんには、田所君をつけるから君は今日運ばれてきた患者を担当してもらいたい」
医局長は、何かメモのようなものを見ながら、淡々とオレに告げると「いいね」と肩を叩いて
医局を出て行った。
―オレを担当から外す?
オレは、すぐに医局を出て医局長を追いかけた。
そして、ナースステーションの前で医局長を捕まえると、前に回りこんで言った。
「鮎川さんは、これから手術なんです。オレが執刀することになっていました。
急に担当を替われだなんてどういうことですか?」
「鮎川さんの手術は田所君でも問題ないだろう?・・・それより、今日運ばれてきた患者の方
がずっと重症なんだ。つまり君じゃないとだめなんだよ。何か問題でもあるのか?」
医局長は、オレがわざわざ追いかけてきたことに何か違和感を感じたのか、オレの顔を覗き
込みながら、尋ねた。
「あります!」
その時オレは自分でも驚くほどに、きっぱりと言い切っていた。
それは、目の前の医局長が、息を飲むほどに・・・
―そうさ、約束したんだ・・・
「い、いったいどんな問題があるというんだね?」
医局長は、オレの剣幕に一瞬怯みながらも、すぐに気を取り直して聞いてきた。
「オレの執刀でなければ、彼女は手術を受けませんよ・・・もし、今日運ばれてきた患者も診
ろというんでしたら、そちらも引き受けます。でもオレは彼女の担当を外れるつもりはありま
せん。」
「し、しかし・・・」
医局長は戸惑いの表情を浮かべながら言いよどむ。
オレは、医局長をまっすぐに見据えたまま、次の言葉を待った。
「わ、わかったよ・・・そういうことなら、このまま引き続き鮎川さんの担当を続けたまえ。
しかし、君がそんなに感情的になるなんて珍しいな・・・」
医局長は、苦笑いを浮かべてオレを見ると、ため息をつきながら去って行った。
オレは、ほっとしながらも、たった今自分のとった行動を自分で信じられない気持になって
いた。
その夜、自室でパソコンに向かっているオレに、琴子が問いかけた。
「ねえ、入江君?・・・響子ちゃんの病気って、そんなに重いの?・・・」
「きょうこちゃん?・・・」
オレは、一瞬その名前に心当たりがないような気がして、思わず聞き返した。
「もう~入江君ったら自分が担当している患者さんの名前も知らないの?鮎川響子ちゃん
だよ」
「ああ、鮎川さんのことか・・・」
オレは、素っ気なく答えながらも、琴子とは違う病棟のナースステーションの前でおきた出
来事を、すでに琴子が知っているのだということに驚いていた。
琴子は髪を梳かしていたドレッサーから立ち上がると、オレの背後に立ってもう一度訪ねた。
「ねえ、医局長に逆らってでも自分が手術するって言ったのは、どうして?」
「別に逆らったわけじゃないよ・・・」
オレは、ことさら素っ気なく答えた。
「じゃあ、わざわざ医局長を追いかけて行ってまで、担当を外れないって宣言したのはどう
して?」
琴子は、オレの反応に業を煮やしたのか、少し上ずった声でさらに食い下がる。
それまで琴子の話を適当に受け流していたオレは、琴子の言い方に棘を感じて、モニター
から目を離すと後ろに立っている琴子を振り返った。
すると、オレの目に飛び込んできたのは、必死に涙を堪えている琴子の姿・・・
「お、おい・・・」
オレは、驚いて琴子の顔を見上げた。
そして、事の次第を一瞬で飲み込むと、琴子に言った。
「お前・・・また変な誤解してるんじゃないだろうな?・・・」
「誤解なの?」
とうとう琴子は涙をこぼして聞き返す。
「何言ってんだ!当たり前だろ・・・」
オレは、琴子から目をそらすと、吐き捨てるように答えて再びパソコンに向かった。
その場の空気を一刀で切り捨てるようなオレの言葉に、琴子は、それ以上追及することを
あきらめてベッドに潜り込んだようだった。
そして、布団の中から琴子のくぐもった声が微かに聞こえた・・・
「だって、なんだか入江君らしくないんだもん・・・」
―そうかもしれない・・・
その時、オレらしくもなく動揺する心は、胸の中に渦巻くものの答えを探して浮遊しはじめ
ていた。
なぜなら、琴子が知りたがったことは、そのまま今のオレ自身が知りたいと感じていたこと。
医局長に担当を外れるように言われたときの、あまりに冷静さに欠けた自分の行動がずっと
不思議でならなかった。
そして、琴子以外の人間に向かって感情的になることなどないはずなのに、なぜあの時オ
レは咄嗟に医局長を追ったのか・・・
鮎川響子・・・その時のオレは、まだ彼女がオレの前に現れた本当の意味を知らない。
心臓に疾患を持つ、ただの担当患者だったはずの18歳の少女・・・
この先、彼女がオレの中の未知の感情を呼び覚ますことになる。
それは、まるでタイムスリップをしたかのように、オレを『あの頃』へと誘い・・・オレと琴子の
今が、まるで奇跡のようにここに存在しているのだということを教えてくれた。
オレは、琴子の寝息を背中で聞きながら、窓に映った自分に問いかけた。
―おい、直樹・・・お前いったいどうしたんだ?
オレは、窓の中から何も答えられずにじっとこちらを見据えている視線に耐えかねて、ギュ
ッと目を閉じた。
そして、その瞼の裏には自然と鮎川響子との出会いの場面が浮かんでいた・・・
彼女との出会いは、病棟の隅にあるちいさな待合室。
その待合室のソファに腰かけて、彼女は必死に何かを書いていた。
時に眉間にしわを寄せ、また時にとても幸せそうに微笑みながら・・・
そこへ、偶然通りかかったオレに、彼女がわからない漢字を訪ねてきた。
「あ、あの・・・ちょっと聞いてもいいですか?」
「なにか?」
「あ、あの・・・”しんあいなる”の”しん”って漢字はどう書くんでしたっけ?」
「えっ?・・・」
オレは、どう見ても義務教育は終えているように見える少女が、そんな漢字もわからないの
かと半ば呆れながら、彼女が何か書いているレポート用紙の端に「親」と漢字で書いてやった。
そして、その少女が「あっ、そうか」と照れながらその文字を書き込むところを無意識に見てい
たオレは、その言葉の後ろに書かれていた名前に、思わず驚いて目を見張った。
その日、検査のために入院したというその少女が書いていた手紙。
その冒頭には、こう書かれていた。
<親愛なる入江君へ・・・>
つづく
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
さて、いかがでしたか・・・![]()
みごと、思う壺に落ちてくださった方は、どうぞ正直にお申し出ください・・・(≧m≦)ぷっ!
前回と同じく、クレームは一切受け付けませんので、あしからず・・・( ̄▽ ̄) ニヤ
そして、きっと読者の方もあれこれこの先の物語を想像妄想してくださることでしょうが、そ
れは、お約束として最後までそれぞれ読者様の胸の中にしまっておいてくださいね![]()
鮎川響子・・・18歳だって~![]()
これって、ちょっとヤバクね~~![]()
次回もどうぞお楽しみに・・・![]()
By キューブ
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