読者のみなさま、あらためて、新年快樂~![]()
今回は、ちょっと趣向を変えてドラマからの引用はまったくなしの直樹&琴子のお話です。
二人の世界感を壊さずに、二人を思い浮かべながら読んでいただけるといいのですが・・・
(設定が日本的な部分がありますが、その辺はご愛嬌ということで・・・)
これは、キューブから読者のみなさまへのお年玉です![]()
どうぞ、お受取くださいませ![]()
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~今年も最初に会いたい人~
「入江先生、お疲れ様でした・・・患者さん、持ち直してよかったですね・・・」
「ああ、君もお疲れ様・・・」
オレは、医局のドアを開けながら、会釈して去っていくナースへ軽く手を上げた。
ネクタイを緩め、医局の隅に置いてあるソファに腰を下ろすと、大きく息を吐き出す。
一週間前からICUに入っていた患者を付ききりで治療に当たっていて、丸二日ほど家に
帰っていない。
しかし、今日やっと一般病棟へ移れるところまで回復し、なんとか今夜は家に帰れそうだ。
腕時計を見ると、夜の11時を過ぎた時刻・・・
―琴子に連絡もしてないな・・・あいつまた発狂寸前なんじゃないか・・・
オレは、ソファから立ち上がると、家に電話をかけようとデスクの上の電話に手を伸ばした。
そんな時、ふと誰かが消し忘れたラジオから聞こえてくるDJの声が耳に飛び込んできた。
『今年も残すところあと30分となりましたね。リスナーのみなさんは、どんな人と新年を迎え
るのでしょうか・・・新年最初に会いたい人は誰ですか?・・・それでは聴いていただきましょう
曲は”A Happy New Year”・・・』
―そうか、今日は大晦日だ。
オレは、あらためて受話器を持ち直すと、急いで家の電話番号をプッシュした。
<新しい年が明ける瞬間にね、最初に会う人は絶対に入江君じゃないとダメなの!>
年末になると、何度も繰り返し聞かされる琴子の言葉・・・
だから、結婚してから今まで、オレがその年の最初に会うのは必ず琴子だった。
それが、今回はとうとうそうはいかなくなりそうだ・・・
琴子にとっては、きっとものすごく大切なことなんだろうに一言の文句も言ってこなかった
のはオレが帰れない理由がちゃんとわかっていたからか・・・
そう思うと、ますます気になってくる。
オレは、なかなか出ない電話にイライラとしながら、ふと自分のデスクの引き出しから携帯
電話を取り出した。
仕事中に自分の携帯電話を持ち歩くことはほとんどないから、琴子が携帯に連絡してくるこ
とはまずない、しかし持ち上げた携帯電話にはメールの着信を知らせるランプがついていた。
<やっぱりどうしても来年の一番最初に入江君に会いたいから、今からお弁当もって行くね~
怒らないでね(^^♪>
慌てて開いた琴子からのメールはすでに2時間も前に来ていたものだった。
家から病院まで、バスかタクシーを使えば1時間もかからない・・・
オレの心に不安がよぎった瞬間、受話器の向こうから裕樹の声が聞こえた。
「もしもし・・・」
裕樹はもう眠っていたのか、かなり寝ぼけた声をしている。
「おい、裕樹!琴子はどうした?」
オレは、たたみ掛けるように聞いた。
「えっ?琴子ならお兄ちゃんに弁当届けるって2時間くらい前にタクシーで病院にむかったよ。
まだ着いてないの?」
「着いてないから聞いてんだろ!・・・じゃあ、琴子は確かに家を出たんだな?」
「うん、お袋がタクシーを呼んでやってたから間違いないよ」
「そうか、わかった!」
オレは、叩きつけるように電話を切ると携帯電話を片手に医局を飛び出した。
職員用のエレベーターを使って1階へ下りると、職員用の出入り口から外へ出る。
あたりを見回しても人の気配はない。
腕時計を見ると、11時50分になっている。
―琴子、何してんだ・・・
オレは、不安で息苦しくさえある胸に手をあてながら携帯電話を開くと、琴子に電話をかけた。
呼び出し音が聞こえてくる・・・しかし、その時職員用駐車場の入り口に車のヘッドライトが見
えた。
オレは、電話に耳をあてたままそのヘッドライトのむこうへと目を凝らした。
オレの目の前にタクシーが止まり、転がるようにして琴子が下りてきた。
オレは、携帯電話をポケットにしまうと、腕を組んで琴子が気がつくのを待っていた。
「入江君!!待っててくれたの?」
オレが立っていることに気付いた琴子が、今にも泣きそうな声をあげて駆け寄ってきた。
「随分と時間がかかったじゃないか」
オレは、琴子を見下ろして、内心はほっとしながら、でも顔では呆れたようにしながら聞いた。
「う、うん!初詣に行く人たちの渋滞にまきこまれちゃって、もう間に合わないんじゃないかと
思っちゃった」
琴子は、息を荒げなから嬉しそうにオレを見上げている。
「まったく無茶するなよ・・・たまたま患者がICUから出たところだったら良かったもののそうじゃ
なかったら・・・」
オレが小言を言っているのをまったく聞いていない様子で琴子がオレの胸に抱きついてきた。
「だって・・・」
琴子はオレの胸に顔を押し付けて何か言いかけた・・・しかしその瞬間にオレのポケットの中で
携帯のアラームが鳴り始めた。
オレはポケットの中に手を入れて、アラームを止めると琴子を抱きしめて耳元に囁いた。
「午前0時だよ、琴子・・・新年あけましておめでとう。」
「あけましておめでとう、入江君!・・・今年も最初に入江君に会えたあ、よかった!」
さっき、ラジオでかかっていた曲のフレーズが頭に浮かんだ。
~今年も最初に会う人が、あなたであるように・・・はやく、はやく・・~
ふっと顔が緩むのを無理に引きしめながら、オレは琴子の持っているバッグを見ながら聞いた。
「弁当の中身なんだよ?」
「お節料理だよ・・・お腹すいたでしょ?」
「寒いだろ?・・・中で食べるよ、入ろう。」
「うん・・・」
オレは、琴子の肩を抱いて病院の中に入った。
来年も再来年も、琴子がその年の最初に会いたい人が、ずっとオレであるように・・・
そうでなくなることの方がありえない話なのにオレのココロをふとそんな思いがよぎった。
こんなにも深く愛されている幸せを感じながら・・・
END
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~あとがき~
直樹が聞いたラジオから流れてきた曲・・・わかりますか?
今回の物語は、キューブが大好きなユーミンの「A Happy New Year」という曲からヒントを
得て書いた物語です。
この季節になると、どこかで必ず聞くこの曲の~今年も最初に会う人が、あなたであるよ
うに・・・はやく、はやく・・・~というフレーズが琴子の雰囲気とダブりました。
いかがだったでしょうか・・・
次回もどうぞお楽しみに♪
By キューブ
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