片思い・・・それは、一方通行の恋。
振り向いてくれない人を、ただひたすら恋い慕うこと。
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「片思いって-好きな人がいないときよりも、苦しくて寂しいものよ」
松本が涙ながらに吐き出した言葉に、オレはなぜかギュッと胸を閉めつけられて、
それまで背けていた顔を彼女に向けた。
松本の顔が近づいてくる・・・
―やめてくれ・・・お前とそんなことしたくない。
冴えた頭が、シグナルを発する。
オレは、ほんの数センチ顔を左に向けて、松本の唇から逃れた。
―そんなつもりで松本を見たわけじゃない。
オレには、片思いの苦しみなんてわからない。
増してや、女の気持ちなんてものもわからない。
だから、彼女を哀れに思ったり、情にほだされたりなんてこともありはしない・・・
だた、ふいに琴子の顔が浮かんだんだ。
あいつもオレに片思いをしているから・・・
<片思いって-好きな人がいないときよりも、苦しくて寂しいものよ>
―あいつもオレへの片思いに、涙を流すほどの苦しみを感じているのだろうか・・・
オレは、今目の前でオレに告白をしている松本よりも、琴子の胸の内が気になって
いた。
いつの間にか琴子がそばにいることがあたり前になっていたから・・・
あいつが現れる前の生活に戻りたいと思っていた気持ちも、すでになくなっていたか
ら、それでいいと思っていたんだ。
「キスをしたこともないのに、愛がわかるの?」
キスを拒んだオレを責めるように松本が言った。
「キスしたよ・・・」
オレは挑発に乗るように、答えた。
裕樹の病室でのキスが脳裏をかすめていた・・・
「誰と?・・・琴子さん?・・・」
松本の問いに、答える必要はなかった。
何も言わないことがYESを意味することもよくわかっていてオレは沈黙していた。
もう、こんな場面は早く終わりにしたかった。
キスをしたことがあるとかないとか、誰か好きな人がいるとかいないとか、そんなこ
とはどうでもいいことのように思えた。
「いつか同じ苦しみを味わえばいい・・・」
普段は知的で冷静な彼女にそこまで言わせてしまったことに、少し胸が痛んだ。
「ごめん・・・いつか必ず、オレよりいい男がみつかる・・・」
何の慰めにもならない言葉だとわかっていた。
それでも、そんな言葉しか浮かばなかった。
オレは何にこだわっているんだろう?
オフクロの思い通りにされたくないからとか、医学に没頭したいからなんてことは、
苦し紛れの言い訳でしかない。
どうして好きなのはあいつだとはっきり言えないんだろう?
本当は、もうとうに自分の気持ちには気づいているのに・・・
END
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