ゆっくりと、しっかりとした足取りで坂道をのぼる
この道はあの子と一緒に歩いた道
石畳みのひび割れからのぞく緑の葉っぱに眼差しを向けるあの日と同じように
不思議な組み合わせのクレープ屋さんに、軒先に並ぶトマトやきゅうり
友達と並んだ和菓子屋さんが今日も愛らしいお菓子を店先に並べてる
新築の家の木の匂いやシーシャの異国の香り
オリーブオイルとピザの匂いやお醤油の焦げた匂い
指先にとまった小さな羽虫はいそいそと歩き回る
こんなに心が休まるのはこの場所が愛しくて堪らないから
私達が何処からきて何処へ向かっていて何者なのか、
その問いの答えの途中である事をどうか咎めないで
たとえ答えが無かったとしても失望しないで
ここで出会えた人や音や景色がどんな時でも迎えてくれるから
日暮れの蝉の鳴き声みたいな今にも止まりそうなスピードで色を変える商店街を一人歩く夏の日