冬になるにつれて街路樹はだんだんと低くなり寒さに縮こまるようにその枝先をすぼめ、落ち葉は3秒前に吹き抜けた南風に掬われて天高く舞い上がる。
その一枚をずっと目で追い飛び上がっては届かぬことを悔しがる三毛猫が小さく鳴いた。
街路樹を抜けた向こうに日は沈み、
これからおよそ10時間後には私の背後から目に留まらぬ早さで今日から見る明日がやってくる。
ビルが落とした長い影はまるで君が居る町までの大きな橋のように見え、私は急ぎ足でその影を駆け上った。
日が沈めば橋もまた消えてしまうから。
私は南風を起こしながら飛ぶように駆けた。
舞い上がった木の葉はだんだんと高度を落とし、三毛猫が掴めなかったあの一枚を私は容易に手にすることが出来た。
あしたばの木の葉。
君に会えて良かった。そんな声が聞こえた。
それが私の声か、あの町に住む君の声かはわからないが、心にゆっくりとインクが滲んでいくようにじわじわと身体中にひろがっていく。
ありがとう、また会いましょう。
私はあしたばの木の葉を地面に返し、残り5分に迫った日没に間に合うように、また駆け出した。