明け方だか夜更けだか判断のつかない時計が3:25あたりをさす頃に神奈川区の一角にある家から自転車を漕ぎだす。
しっかりとシャワーを浴びてきたせいか、それとも僅かながらとった仮眠のせいか、だんだんと今が朝である事を認識していく。
港に着き、一番左はしのベンチで朝日を待つ。
ゆっくりと明るみだす空と、その向こうは見えない厚い雲を染めて行く朝焼けの朱色はこの世のものと思えないほど美しい。来るか来ぬかわからぬ待ち人を永遠にも似た時間待ち続けていた私にとって、朝日を待つというのは永い将来を誓い合った恋人が目覚めるのをまつのと同じような感覚だと思う。
僅かばかりの不安とそれを上回る絶対的な信頼感。
あなたに恋をせずにいられるだろうか。
朝の街は揃っていて、好きだ。
道はまっすぐだし、ビルもなんだかしゃんとしている。
陸橋をいくつも越えるとだんだんと現在地が分からなくなって行く。
でも朝だから、まだ余分な感情も渦巻く欲望も理性もなにも無いから、街はまっすぐでしゃんとしているからなんにも不安になんかならない。
街はただ街である。そこにいろいろと文句をいったりおべっかをつかったりまたは賞賛の言葉を与えたりするから、夜になる頃にはすっかりとすがたを変えて人々をどんどんと飲み込んで行ってしまう。
好きだと思った。そこに嘘も偽りも無かった。
それでいいんだと思う。
その消化不良を起こしそうな感情もゆっくり心に落とし込んで愛になるんだと言える様に。
人として恋をすることはこんなにも不安定で、だから太陽や海や山や月に恋をするようにあなたに恋をする。
日の出はあっという間で、その刹那に膨大な量の感情と愛惜とが溢れ出てしまった私はもう恐れる事なんかないのだと確信してまた神奈川区へとペダルを漕ぎだす。