三谷さん50歳にあたる今年は「三谷幸喜感謝祭」として、舞台に映画と様々なことが行われてきましたが、最後の作品(だよね?)となる、「90ミニッツ」を観に渋谷パルコ劇場に行ってきましたkira-kira cube♪-o0020002011481711003.gif
 
90ミニッツは久々、西村雅彦さんと近藤芳正さんの二人芝居。
笑の大学以来ですね~
 
私は初めて三谷作品を見たのは、この笑の大学でして、西村雅彦さんを見たさにチケットを購入して行きました。
当時は古畑任三郎が人気で、今泉くん役の西村さんが好きになりましてね…kira-kira cube♪-o0020002011563554131.gif
まだまだ三谷さんのことや演劇なんで全く知らないという無謀さの中、青山円形劇場に見に行ったのでした。
でも思えば、よくチケットが取れたよなぁ~
不思議kira-kira cube♪-o0020002011424077677.gif
 
あ、そうそうその前に一度だけ、三宅裕司さんのSET(スーパーエキセントリックシアター)の公演を観に行ったっけ…
正確にはこちらが初めての演劇体験ですな。
 
余談はさておき、笑の大学は最高に面白く、感動しましたね。
ただ、一番気になっていたのは西村さんの生のおでこのテカリ具合kira-kira cube♪-o0020002011237765689.gif今泉くんだぁ~と、ミーハーチックに思ってましたが(笑)
舞台が終わる頃には作品に引き込まれてましたものね。
笑いの中にも何か考えさせられるものが隠されている…
西村さんと近藤さんの掛け合い、たった二人しか登場しない舞台に引き込まれました。
 
今回の90ミニッツも同じで、お二人の息のあった間の取り方やセリフ回し。
なんだか嬉しかったです。
 
さてこの90ミニッツ。
タイトル通りに90分で舞台が終わります。
この90分という時間がキーでもあり、二人の男が葛藤しあっていく深い内容でした。
 
 
男1(西村)はとある病院の整形外科の副部長。
その病院に交通事故に合い、瀕死の重傷を追った少年が搬送されてくる。
男2(近藤)はその少年の父親。
少年は大量に出血をしており、緊急に手術をしなければ助からない状態。しかし手術には親の同意書が必要と男2に父親として同意のサインを求めるが、なんと拒否。
 
手術をすれば間違いなく助かる少年。
何とかして説得し、サインをもらい一刻も早く手術をと男2に男1が迫る。
 
男2はガンとしてサインをしない。
なぜだと男1が問うと…
 
「輸血をしないで手術をして欲しい」
 
男2がそう話した。
 
宗教と言うか、住んでいる集落の教えで一切の肉(魚)を食べず、ベジタリアンとして生活をしている男2の一家。
輸血をすれば、肉を食べている人の血を体に入れることになる。
そうなると、教えの中では死んで肉体が無くなったあとで「生まれ変わること」ができなくなる…
輸血さえしなければ、教えにある「生まれ変わり」ができる。
という、理由である。
 
輸血をしないで手術をしてくれともせがむ男2。
しかしそれは不可能だと何とか説得を続ける男1。
 
堂々巡りである…
 
男2は自宅にいる妻に電話をし、どうすべきか問うが、輸血をしないで手術をする病院を探すとまで言い出した。
男1はそれはあり得ない!と叫ぶ。
 
男二人がこうしている間にも少年の命が削られていく。
タイムリミットは90分間。
救急搬送されてきて、手術を開始するまでのリミットは90ミニッツ…
それを過ぎると命が助からない。
 
今すぐにでも輸血をし、手術をすれば少年は助かる。
男1は医者としてどうしても助けたい。助かる命を助けたい…
 
男2はもちろん我が子である少年を助けたい。助けたいが輸血はして欲しくない…
でも輸血をしなければ助からない。教えが重くのしかかる。
 
二人の不毛にも思えるやりとりが続くなか、男1が少年本人にどうしたいか訪ねてみようじゃないかと言い出した。
少年はほぼ危篤であり、意識朦朧としている。
そんな少年がもし手術をして欲しいと言ったならば、親の同意書なしで手術を決行すると男1が決めた。
 
消えゆく意識の中で少年に訪ねてみた答えが男二人がまつ部屋に届いた。
 
生きたい…
 
実際には、死にたくないと言ったそうなのだが、死にたくないのならばと男1が手術開始を宣告…
 
したはずが、一転ストップに。
 
男2が異論を唱えた。
 
生きたいではなく、死にたくないと言ったのならば、話が違う。
手術をして欲しくなんかない、輸血なんかされたら、生まれ変われないじゃないか!
死にたくないとはそういう意味だと…
 
続けて男2は男1がなぜ同意書にサインを求めるのか、それはただ単に医療ミスなどで病院の立場が悪くなるのを避けたいが為だけ何じゃないかと釘を差す。
 
男1も医者である前に人間。出世はしたい。
ちょうど部長職に昇格になる話が出ており、裁判沙汰になることは避けたいのが本音。
同意書なしで手術はしようと思えばできる。医者として倫理観をもち、突き進むなら。
どんな教えがあろうとも少年を助けるべきだと。
 
ただそうすれば必ず訴えを起こすと男2に言われているなかでは強行に手術はできない…
 
助けたいが助けられない自らの事情。
男1も男2も結局そこにたどり着く。
 
そんなとき、手術待ちをしている少年がかなり危険な状態に…
もうタイムリミットの90分が近づいているのだ。
 
医者としての倫理観と自らの出世のハザマで苦しむ男1。
親として助かる少年を自らが信じる教えで失うかもしれない。
二人の葛藤がピークに達した瞬間…
 
男1が手術をせよ!と部下の医者たちに指示を出した。
同意書が無くても責任は自分が取ると言って…
 
男1は医者としての助かる命をみすみす死なせたりはしないという思いから少年を手術させた。
男2がこだわっていた教えにある、生まれ変わりについてや、集落の人への言い訳もすべて自分(男1)のせいにすれば楽になるでしょうから…と。
 
男2は…
がっくりと肩を落としながらつぶやく。
 
先生は医者としての倫理観をきちんと取られた。
もし先生があと3秒、手術の指示を出すのが遅ければ、僕は同意書にサインをしていた…
僕の子供に対する思いより、先生の医者としての信念が3秒早かったんですね。
きっとこれから一生、この3秒の重さを抱えて、背負って生きていくんでしょう。
そう言って悲しそうに部屋をあとにした。
 
 
これで幕でした。。。
 
舞台上、中央には天井から一筋の水が流されて(落とされて)おり、最後に気づきましたが、この一筋の水が少年の命を現していました。
少年が危篤になり、手術を強行する連絡をする前にスッと水が止まり、落ちてこなくなったんです。
まさに時が止まったかのように。
90分たったのだろうか、少年はどうなるのだろうか…とドキッとしましたが、手術を開始したことで再び一筋の水が流れてきました。
 
とても粋なというか、二人しかいない舞台上で、場転換もなく、単調になりがちな雰囲気をこの水の演出には脱帽でした。
 
セリフの間の静寂な時には、滴り落ちる水の音が心地よかったりもしましたし、命を表現する意味で、本当に重要なものでした。
 
 
もちろん西村さん、近藤さんのコンビでのお芝居は最高に良かったです。
気持ちがいいくらい息が合ってる!
そして三谷さんだからこその脚本。
シリアスな内容にもかかわらず笑いをちょこっと入れてくる。
全体的にではなくて、スパイス的にね。
 
実際に起こった事柄を基に書かれてますので、舞台開始前にはおことわり事項もスクリーンに映し出されてました。
 
輸血の問題で起こった事項…
私も事項が起こったことは知ってはおりますが、なぜそうなのかと言うことまではよくわからないのが正直なことでございます。
なので、男1の行動がとか、男2の考えがとか、深すぎて簡単には感想として述べられませんが、ただ純粋に舞台というフィクションの中としてはとても面白かったですし、さすがだな~と感じました。
 
重い内容の作品を90分と言う枠で作り上げたことも見事だったと思います。
 
どうぞ興味ある方は当日券も若干あるようですし、2月には追加公演が決定してますので、良かったらご覧になってみてください。
東京以外でも北九州、大阪、金沢、福岡、仙台、新潟、名古屋、広島と回るので。
ただ前売りチケットは完売してるかも…
 
 
あ~、本当に西村&近藤での三谷作品、良かったな~kira-kira cube♪-o0020002011424077677.gifkira-kira cube♪-o0020002011424077677.gifkira-kira cube♪-o0020002011424077677.gif
また見たいよ~