9月10日。9日目。海安県(かいあんけん)から淮安(わいあん)、そして徐州(じょしゅう)までの行程。
10:09、海安県を発つ。列車には生後一ヶ月の赤ちゃんを連れた一家が乗っていた。ベビーベッド代わりのテーブルが印象的だ。
車窓から見えるのは緑が映える水田や畑。江蘇省は浙江省と並ぶ農業地帯。
「浙江熟すれば天下足る」
宋の時代から有名な言葉があるそうだ。
場面は変わって再び車内へ。なにやらビニールの袋を取り出すおじさんが。中にはひしの実が入っていた。このひしの実はこの地域で取れる水草の実である。固い皮に覆われているが美味なよう。
せっきーにも分けてくれた。しかし歯がたたなくて食べられず困るせっきー。見かねた別のおじさんが皮を噛み割る手本を見せてくれ、ようやく中の実の部分にありつける。栗に似たほんのり甘い実は幸せな気分にさせてくれたようだ。(相変わらず寝グセでボサボサ頭のせっきー。)
このひしの実よりもっと有名なのが「淮揚料理(わいようりょうり)」と言われるものだ。
淮安と揚州の二つの街の名から取った、素材を生かした味付けで知られる中国料理。
おじさんたちに淮揚料理について尋ねたみると、ひとりが「揚州のほうがおいしいよ!」と言えば、「いや、淮安もなかなかなものだよ。」ともうひとりが言う。要するに“うまい”らしい。
それを聞いたせっきーは
「今のうちに辛くないものを食べて… これから辛くなるから。」と日本語で言った後、中国語で
[辛いものを食べるとお尻のほうがしんどくなりませんか?]
と周りに尋ねると、車内は大爆笑に。
中国語がかなり話せるようになったのに感心したのと、辛いもの、そしてお尻ね…と妙に納得してしまった私である。
列車はそうこうしているうちに目的地、淮安に。人口はおよそ500万人。せっきーが好きな人物の一人に掲げる【周恩来(しゅうおんらい)】の故郷の街。ホームに下りるとその広さや新しさに圧倒される。2ヶ月前にできたばかりだそうだ。
駅を出て街中へ足を運び、早速昼食をとる。もちろん淮揚料理。ウェイトレスさんにオススメな料理を持ってきてもらうことにしたせっきー。まず初めに出てきたのは『田ウナギの炒め物』。ドジョウのような小さいウナギが炒めてある。揚州でも同じ料理を食べさせてもらっていたが、またさらにおいしかった様子。
次々に運ばれてくる料理。熱々の湯気が出る皿の中には『蒲の新芽の炒め物』
「食べなくてもおいしいものは見ただけでわかる!」と言いながらひとくち。
「やっぱり…(うまい!)」と【うまい】の部分が声にならないくらい感動している様子。
腿をパタパタとたたき、身体で喜んでいる。
お次は『ひしの実の氷砂糖漬け』。甘くてシャキシャキした食感がたまらない。レンゲが止まらないせっきー。なおも料理は続く。
今度は淮揚料理の中でも最も有名とされる『平橋豆腐』。
豆腐を鶏と干しエビのスープで煮込んだ一品。かなりおいしそう。その平橋豆腐を口にするせっきー。
もうおいしすぎて目が白黒。しびれたジェスチャーで表現する。そして、
「すいませんでした! スゲーうまいっ!!」
と叫んだ。
かなり淮揚料理が口にあった様子。よかったよかった。
食後は休憩場所を求めて公園へ。八角形らしきあずまや風の建物にはおじさんたちがたくさん集まっている。
日陰に入れてもらうために輪の中へ。
声をかけるとみな席を譲るために立ちはじめ、せっきー、ちょっと恐縮気味。
ようやくみな仲良く日陰の席に着き、[日本から着ました。]と中国語で会話を始める。
「ここができて5年間、毎日来ているよ。」と言うおじさんいたり、ちょっとした社交場、憩いの場になっているみたい。また「同じくらい日焼けしているね。」と感心してせっきーの腕と自分の腕を合わせるおじさんがいたり、みなにこやかだ。
「来年のオリンピックにおいで。」とお誘い?うけたり、人気者なせっきー。
ちなみに中国では【オリンピック=奥運会】と書くそうだ。
いろいろと報道で取り上げられている中国だが、「友好!」「私たちの願いだ。」と言いながら握手をしてくれたサングラスのおじさん。
せっきーもうれしそうに中国語で[友好!]と答え、うなずく。
とても印象深いワンシーンを残しつつ、淮安を16:41の列車で後にし、徐州へ向かった。
車内は帰宅時刻で満員。トランプに興じる人々がいたりと様々。
そして19:25、本日の終着点、徐州に到着。明日は曲阜に向かう。