メトロのあたたかい光景 | アラフィフからのパリ生活 

アラフィフからのパリ生活 

何かのご縁で現在はパリ在住。フランス での日々のこと、感じたことを綴っていきたいと思います。

 

 

パリのメトロは、開通したのが1900年とかなり古いものだから、良く言えばレトロ。

 

 

駅やホームも開通当時のままで、東京などの近代的な街にある地下鉄に比べたら、車両のサイズもこじんまりしてます。

駅も当然古いし、スペースも限られていることから、エレベーターやエスカレーターが設置されているところは少ないのです。

(そして、さらに驚くのは、エスカレーターなどが頻繁に故障中...という事態になっていることもしばしばです...苦笑!)

 

だから乗り入れ線の多い駅などでは、乗り換えのたびに、階段の上り下りを何回か繰り返して、ようやく目指す乗り換えのメトロのホームに到着...ということも多々あるわけです。

 

 

例えば、ベビーカーやショッピングカートを一人で持っている人に対して、たまたまそこにいた人が自主的に「お手伝いしましょうか?」と声をかけて、一緒に階段の昇降を助けてあげたりすることがよくあります。

また荷物を持っている人自らが、近くにいる人に手伝って下さいとお願いして、一緒に運んでもらうことも...。

 

頼む方も頼まれる方も、特に罪悪感や迷惑だなぁと感じる様子もなく、自然にこうしたやりとりをして手伝ってもらうのです。

そういう風景に出会うと、私はなんだかとても素敵なものを見せてもらったような気がして、心がほんわか温かくなるのです。

 

 

 

 

昨日、メトロに乗った時も、そんな光景に出会いました。

 

ホームに続く階段を下りる時、ちょっと先をいく人たちの姿が目に止まったのです。

重そうなショッピングカートを、二人の人がそれぞれ持ち手と車輪の方を持って階段を降りているところでした。

階段を降り切ると、持ち手の方を持っていた中年の女性が、車輪の方を持っていた男性に何やらお礼を言い、特に男性の方はお礼を期待していた様子もなく、ごく当たり前のことをしただけだから…というような感じで、足取りも軽くそのままホームに向かって歩いて行きました。

 

私はその光景を見て、心の底から「あー、ステキ」としみじみ感動。

 

そして、こんなことを思い出しました。

 

 

ムスメがまだ赤ちゃんの頃、東京で子育てをしていた私にとって、乗り物に乗って赤ちゃん連れで外出することはかなり気合がいることでした。

 

幸い東京の大体の駅には、エレベーターやエスカレーターが設置されていたから、恐らくパリほど不便ではなかったと思うけれど...。

でも、誰かがすぐに「手伝いましょうか?」とパリのように声をかけてくれるわけではなく、自ら誰かにお願いするなんてもってのほか...という雰囲気だった東京で、もし目の前に長い階段が現れたら、赤ちゃんが乗ったままのベビーカーを一人で持って、階段を上り下りするしかなかったわけです。

 

 

逆に、設備の整っていないパリのメトロでは、見知らぬ人たちが、ごく普通に助けてくれるという事実。

 

大都会とはいえ、知らない人に声をかけたりすることが、日本に比べてそれほどハードルが低くない文化的な違いというものもあるのでしょうが...。

 

それでも、困っている人の手助けをしたり、自分が困っていたら「手伝ってくれませんか?」と言うことに抵抗を感じない、心の余裕みたいなものが感じられるのです。

 

 

 

もちろん、駅やメトロの車両があまり清潔じゃなかったり、駅構内が便利に作られていないなど、パリのメトロの欠点はたくさんあるけれど、それらを補うほど「見ず知らずの人たち」の存在が、そうした不便をたくさん補ってくれて、周りの人まで笑顔にしてくれている気がします。