過去のことを少し書いてみる。

忘れたいけど記憶は鮮明だ。


ペコちゃん。

そう名付けられ、空名刺を渡された。

片面はお店のロゴが入ってて

もう片面に手書きで名前を書くタイプの名刺。


名前の他、番号をつけるらしく好きな番号を聞かれたが

もうその番号は埋まっていたらしく私の番号は「35」番になった。

客には着かないと言ってる間にも名前やら何やら決まって

サービスの手順まで教えられてもう私は頭が真っ白だった。


そうこうしてると「こっち来て」と店長に連れられ

さっき女の子たちを見た薄暗いホールへと入っていった。

シートの番号と位置確認、マイクコールの確認をされ

それでも出来ないと言う私の手を店長が握り「大丈夫!」

なんて笑っていた。


とうとう私が呼ばれてしまった。

今にも泣きそうな私に「お話しておいで!大丈夫大丈夫!」

だなんて言いながらボーイさんがおしぼりを持って

お客さんの待つシートへと私の手をひいた。


シートの前でしゃがみ、名刺を渡し自己紹介。

とりあえず教えられた通りに振る舞った。

「新人なんだって?可愛いねー!よろしく」とお客さん。

30代前半くらいで話を聞くと風俗慣れしている人だった。


他愛もない会話をしていたがそのあとのことは緊張で

ほとんど覚えていない。

マイクコールがわからなくてボーイさんに呼ばれて

シートから戻ってきたことくらい。

そう、あっという間に私は風俗嬢になってしまった。


そのあと放心状態で同じくもう一人お客さんに着いて

その日はおしまい。


戻ってきた私に店長は「楽勝だったでしょ?お疲れ!」と一言。

次はいつ来れるかと聞かれ数日後にまた来ることに。

貰えるはずのお給料は次に来たらあげると言われたからだ。

毎回出勤したら前回分のお給料をもらえるシステムで

いわゆるバックレをさせないで出勤をとるためのものだ。


帰りは最寄りの駅まで一緒にお店に来たボーイくんが送ってくれた。

「仕事どうだった?もし何かあったら俺に何でも言って!」

と言ってくれた。

彼が私の担当になったからだ。

何故かはわからないけど彼は他のボーイさんたちとは

何かが違う気がしていた。


自分でも不思議で家に帰ってもその日起きたことが夢だったみたいに実感はなく、また何も思うことはなかった。

ただもういない彼を想って泣くことだけは変わらなかった。


する気もなかった体入1日目が終わった。