金曜日(2日)

仕事場でウジャウジャとして「あ…ダメだ。早く帰ろう~」といつもより早く職場を後にしました。

駅までほんの3分程、通勤に毎日通っていますが、この日に限って目に留まった広告…… 

“めがね”

一度は通り過ぎたのですが「まだ間に合うかな?」と引き返しました。



実は私は邦画にお金を使ったことがありません。つまり“映画館”で邦画を見たことが無いのです。

何故?

そんな深い理由がある訳では無く、ただ“なんとなく”なのですが…

多分、現実逃避にならないからかな???と思う。即、自らの生活や人生に跳ね返って重いから…かなぁ

この“めがね”は公開になった時から“見たいな”と思てはいたのですが…



荻上直子監督

小林麻美 もたいまさこ 市川実日子 出演

『めがね』



どこかの南の島。

携帯の繋がらない場所に行きたかったタエコが選んだのは民宿の様な「宿ハマダ」

そこの主人ユージやいつもハマダ来ては一緒に食事をしている高校教師のハルナ、そして毎年、春になるとこの島に訪れる、みんなが大好きな“サクラさん”

この超自然体の彼らとタエコの係わりが碧色の海やそよぐ風、暖かな陽射し、美味しそうな料理などを背景に描かれています。



キーワードは「たそがれる」



登場人物の背景は全く描かれていません。

何故タエコがここに来たのか?

ユージはどうしてここに住んで宿の主をしているのか?

ハルナは何故、若いのにこんな辺鄙なところで高校の化学の先生をしているのか?

はたまたサクラさんて何者なの?



タエコは毎日海辺で赤い毛糸を編んでいます。マフラーでもセーターでも無く、ただ編んでいるだけの赤い毛糸。

この編物は彼女が今まで過ごしてきた生活、人生そのものなのでしょう。規則正しく正確だけど面白みが無い…

ラストにこの毛糸をマフラーの様に首に、長く、長く巻いてサクラさんが訪れます。

このサクラさんもまた日常を引きずってこの島に毎春訪れ、自らを洗濯しているのかな?と思わせる。

見る側が自由に、若しくは自分の今ある現状を彼らに乗せて映画の中の南の島を旅することが出来る映画です。

見る側もタエコの後ろに座り、海を眺め、風を感じて“たそがれる”



こんな時間が永遠に続く訳は無く、いつかきっと終わる時、帰る時がくるのですか、その時、それまではただこのまま気持ちの良い“時”を過ごす。

この空気感or間は前作の「かもめ食堂」の感覚に似ています。

いつかは終わるだろう、このままではいられない寂しさの中の充実感と楽しさ。



人生は旅に例えられますが、もし旅ならばこの南の島は長い人生の休憩場、お休み処でしょうか……

ちなみに“めがね”という題名は「いまいる世界にピントが合わなくなったら、この島に来て…」という意味のようです。



タエコやユージ、サクラさんが過ごす、この南の島の時間は涙が出るくらいにうらやましい時間でした。

あ~~旅に出たい!

私にもメガネが必要な時期かもしれません。



でも、映画館を出た私は、入る前と比べてなんだかユッタリとさわやかな気分…旅行から帰て、住み慣れた街に戻った時の気分のようでした。