食べられなくなる
(わたしたちの)在宅ターミナルケアは、原則として点滴を行わない。
口から食べられる間は、少しずつでよいから患者さんの食べたいものを
選んで用意するようにご家族にお話する。
どんな患者さんでも亡くなる前には食欲が落ちてきて、まず形のあるものが
食べられなくなり、そのうち水も飲めなくなる。そのことを訪問の度にご家族
に説明し、十分理解できるようにサポートする。在宅で看取るということは、
この状態を家族が受け入れ、気持ちを落ち着けて見守るということだ。
とてもシビアな局面だけれど、初め戸惑っていた娘さんも訪問を重ねる毎
に 「自信と覚悟」 の表情に変わってきた。
食事が摂れなくなって1週間目、訪問すると娘さんが笑いながら話した。
「今朝おじいちゃんが、バナナを刻んで牛乳かけて持ってきて、って言ったの。
そんなの食べられないと思ったけど、バナナ買ってきて小さく刻んで、さとうと
牛乳をかけてベッドの横に置いたのよ。そしたらやっぱり食べられなくて、ひ
と口までいかないちょっと舐めたくらいでダメだった」
と少し残念そうに、少し笑った。
私 「すごい!少し口から入れられたんですね。食べたいと思う気持ちがある
ことがスゴイです。それにそのリクエストに娘さんがちゃんと応えて、言った
通りのものを用意したんですね。それでいいんです。それで満足なんです。
お腹いっぱいの満足じゃなくて、そうしてくれたことに(おじいちゃんは)満足
してるんですよ」 在宅ならではの良さを実感する。
そのうち水分も摂れなくなる。こうしたこの先予測される症状や状態を
先回りしてご家族に伝えるのが看護師の役割だと思っている。
とても重いけれど、患者さんとご家族の笑顔に私も支えられている。
