「おばあちゃんを助けて」
もうすぐ100歳になるAさん。
2年前に入院したときは、トイレに介助付きで行けていましたが、
今は寝たきりです。
もともと「寒い、寒い」が口癖で、夏でもたくさん重ね着している。
パジャマの下には、綿のシャツやズボン下を2~3枚ずつ着用
しており、トイレに行っていた頃には、用を足した後、また衣類
を整えるのにひと苦労。
シャツを下に引っ張り、ズボン下を上に引き上げ、また次のシャツ
を下げ、ズボンを上げる。
「ちがうよ、このズボンの中にシャツちゃんと入れて
」
と順番が違ったり、シワがちゃんと伸びていないと とっても怒られる。
今はずっとベッド上で過ごされており、かなり認知レベルは低下して
いる。時々車椅子に乗せて離床すると
「おばあちゃんをどうするの!まったくいじめやがって
」
と悪態をつく。
夜も一晩中大きな声でひとり言がはじまる。
「目が見えない、耳も聞こえない」 としょっちゅう自分で言っているが、
部屋に入ると「そこの人!」とちゃんと人を見分けて用を言いつける。
「神も仏もいないのか」
「この哀れなおばあちゃんをどうにかしておくれ」
「もう早くあの世に連れてっておくれ」
意味不明な内容の所々に悲観的な言葉がつづく。
先日、病院内で火災報知機の作動点検があった。
「これから火災報知機の確認のため、大きな音が鳴りますが、
とくに心配ありません」
と放送された。
Aさんの耳に届いたかどうか
「ウ~ ウ~」 サイレン音が鳴る。
するとAさんが
「おばあちゃんを助けて」 とつぶやいた。
申し訳ないが吹き出してしまった。
いつも「あの世へ・・」と言っているが、火事ではやっぱりイヤか。
いや、火事とは解っていないだろうが、危険を感じたときの
人間の本能なのか
もうすぐ100歳になるおばあちゃん。
いつもの悪態も微笑ましく許せてしまう ![]()

