ナースの悩み (Ⅰ)
その方はとても痩せていた。
「食事はあんまり食べたくないんです」
配膳した食事を、ようやく数口だけスプーンで口に運び、
時間をかけた割には殆ど減らずに終わりにしてしまう。
食べることが本人にとって苦痛となっていた。
一方で、ナースコールはとても多かった。
「車椅子に乗せてください」
「ベッドに戻りたいです」
「向きを変えてください」
「おむつ交換はまだですか?」
「お茶を口に入れてください」
弱々しく、消え入りそうな声で、お願いしますと訴える。
あ、また〇〇さんだ。さっき行ってきたばかりだよ
今度は何だろう・・・??
あまりコールが続くと、さすがにイラッときてしまう。
その方が胃ろうを造る手術のために1週間ほど転院する
ことになった。
胃ろうを造れば、口から無理に食べなくても、胃ろうチューブ
を通して直接栄養を胃に送ることができるようになる。
「行ってらっしゃ~い」
その方には申し訳ないが、正直ほっとした。
1週間ほどの つかの間の休息だと思った。
その晩は、ナースコールの少ない静かな夜となった。
(つづく)
