民法  2011(H23)-30-4 | 行政書士試験 記述式 完全対策ブログ たけのこ太郎

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みなさんこんにちは!

重要な選択肢を選んで解説していきます。
読んで考えるだけで択一・記述ともに実力がつきます。
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Q 正誤問題

Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済する事ができなかったので、土地についての抵当権が実行され,その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物についての土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。

2011(H23)-30-4




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A 妥当である

本問の場合、法定地上権は成立しせん。

よって、本問は正解です。

2011(H23)-30-4の正解肢ですから重要な肢です。

事案を把握した後、要件にあてはめます。


1 事案の把握

① Aが自身の土地及び建物に抵当権を設定(土地建物はA所有)

② 建物が滅失(建物についての抵当権も消滅)

③ 新たに建物を建築(建物についての抵当権は無い)

④ 土地についての抵当権が実行され、土地のみ買受人Bが取得(建物はA所有、土地はB所有)


2 あてはめ

要件1 「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合」

要件2 「土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至った」

本問には抵当権が複数あるため、各抵当権ごとに要件をあてはめていきます。


(1) 建物についての抵当権について

事実①をみるに、建物抵当権が設定された当時、土地建物共にA所有です。

しかし、事実②で建物が滅失したため、抵当権も消滅してしまっています。

よって、建物抵当権を基準に考えると、要件を満たしません。


(2) 土地についての抵当権について

事実①④をみるに、要件1及び2を満たします。

よって、要件を満たすため法定地上権は成立するとも思えますが、本事例においては法定地上権は成立しません

理由は以下に述べます。


(3) 結論の妥当性について

結論が妥当かどうか、検討してみます。

抵当権者と落札者の立場になって考えます。

ア 抵当権者の立場

抵当権者(X銀行とします)は土地建物両方に抵当権を設定したので、担保価値をセットで見ます。

つまり、土地建物が各々別人により競落された場合、建物は法定地上権が成立するため高値である一方、土地は法定地上権が成立する分安値です。

X銀行は、高値の建物と安値の土地を足したものが土地建物の担保価値であると予測するのです。

また、X銀行は、仮に建物が(火災などで)滅失したとしても(高値で落札されるであろう)更地が残るため担保価値は充分であるとも考えます(予想に反して建物を新築されてしまいましたが・・・)。

以上より、X銀行は、土地建物セット(又は更地)の担保価格を限度として、Aへの融資額を決定します。

イ 落札者の立場

落札者Bは、登記記録を見て新築建物について法定地上権が成立すると予測します。

よって、土地は安値で落札されます。

ウ その後

後は、法定地上権が成立する新築建物が高値で競落されればよいのですが、本問では旧建物(と旧建物に設定された抵当権)が滅失している上に新築建物が無担保であるため、競売は成立しません。

以上より、X銀行は
土地建物トータルの価額又は更地の価額を見込んで融資をしたにもかかわらず、建物については競売されず、土地については法定地上権の負担のある価額でしか落札されなかった事になります。

X銀行は大損です。

そもそも、法定地上権が規定された趣旨の一つが「当事者意思の尊重」です。

しかるに、この結論では当事者意思(本問の場合はX銀行の意思)が尊重されません。

そこで、最高裁本問事例においては、特段の事情のない限り法定地上権は成立しないとします。

条文上の要件は満たしているのですが、エイヤっと結論を覆してしまいます。

法定地上権が成立しない場合、土地は高値で落札されます。

よって、X銀行の意思に合致した結果となります。

なお、問題文後段の「
再築の時点での土地の抵当権が再築建物についての土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けた」は上の最高裁の「特段の事情」の一例ですが日本語として凄くわかりにくいです(「土地の抵当権」が「共同抵当権の設定を受けた」事になってしまいおかしい・・・)。

原典である判例の言い回しを引っ張ってきますと「新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けた」となります。

つまり、「建物(とその抵当権)が消えた分、フォローするための新たな抵当権を新建物に設定した場合」ということです。

この場合は、抵当権者が損する事は無いので、法定地上権が成立するとしても問題ありません(当事者意思を尊重できます)。




まとめ
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土地建物を所有している者が土地建物双方に抵当権を設定した後、建物が滅失し、さらに建物が新築された場合

確かに、388条要件を満たすため法定地上権成立とも

しかし、抵当権者は土地建物トータル又は更地の土地の価値を予測して融資

法定地上権が成立すると抵当権者の意思に反する(当事者意思の尊重

法定地上権不成立(判例)

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ではまた!